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高田郁「花散らしの雨-みをつくし料理帖」

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元飯田町に新しく暖簾を掲げた「つる家」では、ふきという少女を下足番として雇い入れた。早くにふた親を亡くしたふきを、自らの境遇と重ね合わせ信頼を寄せていく澪。だが、丁度同じ頃、神田須田町の登龍楼で、澪の創作したはずの料理と全く同じものが「つる家」よりも先に供されているという。はじめは偶然とやり過ごすも、さらに考案した料理も先を越されてしまう。度重なる偶然に不安を感じた澪はある日、ふきの不審な行動を目撃してしまい―――。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第二弾!
(ハルキ文庫 巻末内容紹介より)

さくら家人へのお知らせ

今日の夕飯には「忍び瓜」を作ろうと思います。

《忍び瓜の作り方》

※胡瓜は、板摺りし、めん棒などで叩いて繊維を壊してから、へたを落し、4等分~5等分に切ります。

※鷹の爪は種を取って、細めの小口切り。

※出汁を引き、胡瓜以外の調味料を全部あわせておきます(A)
 

1.下ごしらえしておいた胡瓜を、さっと湯掻いて笊に取ります。

2.熱々の1をAの調味料に漬けます(出来れば1時間以上)。

レシピはこの本の「銀菊-忍び瓜」より得ました。澪が「つる家」の厨房で、間違えて湯掻いてしまった胡瓜がパキパキ・シャキシャキに生まれ変わった一品。
 

メシマズの誉れ高いさくらちゃんが前触れもなく新しい料理を出すと家人がビビるので、さくら考案レシピではないことを予め告知するインターネッツ極私的活用法。
 

さて。
 

ブブカ超え高田郁の「みをつくし料理帖」シリーズ第二弾。
現在のところ高田選手は、観客の期待に応えてジャンプを成功し続けております。
しかし、どちらかというとこの評価は、地球全人類74億の総意ではなく、さくら一個人の肌身に合っているだけではないかという気もしてきました。
まあ良い。極私的感想で、私個人の心に触れさえすれば。

「りうさん、恋は厄介なものなんですか?」
と問いかけた。ふぉっふぉ、と歯の無い口で笑いながら、りうは澪を振り返る。
「厄介ですとも。楽しい恋は女をうつけ者にし、重い恋は女に辛抱を教える。淡い恋は感性を育て、拙い恋は自分も周囲も傷つける。恋ほど厄介なものはありゃしませんよ」
両の眉を下げて、澪は少し考えた。
「なら、楽しくて拙い恋には手を出さないようにします」
一瞬、りうはぽかんと娘を見て、それから腹を抱えて笑い出した。

前作「八朔の雪」では、雨あられと降る不幸に「あしたのジョー」の丹下段平気分を味わわされていたものの、本作ではちょいと落ち着き、つる家にも穏やかな風が吹いています。
 

起こるトラブルも、大したことないよ。新しく雇い入れた少女が実はライバル店のスパイだったり、つる家を手助けする長屋のおかみさんが麻疹で生死の境をさまよったり、澪のおさななじみの野江ちゃんが切られて死にかけたり。
……たいしたこと、ないよねえ?
 

姿は見せないものの重要な役割を担っている幼馴染の野江ちゃんについても、ここで語りたいのは山々。
“旭日昇天の大強運”野江ちゃんが、いったいどうして吉原の苦界に身を沈めて「伝説のあさひ太夫」になったのかは、非常に興味深いところです。
 

しかし、今回お伝えしたいことは、恋・恋・恋ですよ。
乙女18、花盛り。料理人として日々研鑽する澪ちゃんに、そっと忍び寄る厄介な“恋”の気配。

娘18番茶も出花。澪にだって、恋の季節がやってまいります。
 

だけどですね。
私、これまで澪のお相手を間違えておりまして。
 

「八朔の雪」「花散らしの雨」の中で澪のお相手になりそうな殿方と言えば、町医者の源斉先生だとばかり思っておりました。
まだ若いながらも有能なお医者様で、かつ、毛色のよろしいお坊ちゃん。お肌もツヤツヤしてそうで、そりゃもう若い娘がコロリと行きそうな、ねえ?
 

どうやら源斉先生の方だって、澪に対しては悪い気もしていなさそうですし、家柄の差はあれど何とかなりそうな気もいたします。
 

ですが。

小松原の、笑うとぎゅっと皺の寄る目尻。
美味しそうに食べる口もと。
箸を持つ筋張った手。
許されるのなら、ずっとずっと見ていたい。
この切ないような、疼くような思いが恋なのかどうか、澪にはわからなかった。

移転前の神田御台所町「つる家」時分に通っていた中年男の小松原様。武士なのか、浪人なのかもわからない。
てーか、ただのオッサン。
 

…なぜっ!?なぜなの澪ちゃん!?
 

そりゃあ、若い娘の中には一定比率でオッサン好きが存在するのは知っていますよ。かくいう私もそのひとり。
でもね?貴女、横にもっとピチピチした魚が跳ねてるよ?
なにも酒飲んでツマミ食ってるだけのうさんくさい中年男にほだされなくても、よろしいんじゃなくて!?

美緒さんの恋とは違って、私の恋は決して相手に悟られてはならない。澪は、拳に握った右の手を、そっと胸にあてる。
暗い空を、銀色の花火が細く糸を引いて、寂しそうに散っていく。その様子が風に舞う銀の菊花のように澪の目には映った。

隅田川の花火を見るフリをして好いた男の顔を見ながら、澪の恋がこれからどうなるのかはわかりませんが。

楽しい恋は女をうつけ者にし、重い恋は女に辛抱を教える。淡い恋は感性を育て、拙い恋は自分も周囲も傷つける。

恋は異なもの。
まっこと、恋ほど厄介なものはありゃしませんなあ、りうバァさんや。

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