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青山美智子「お探し物は図書室まで」

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お探し物は、本ですか?仕事ですか?人生ですか?悩める人々が立ち寄った小さな図書室。不愛想だけど聞き上手な司書さんが思いもよらない選書と可愛い付録で人生を後押しします。『木曜日にはココアを』の著者が贈る、明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。
(「BOOK」データベースより)

子供の頃から図書館と図書室は大好きでした。

特に中学生の頃には、放課後は学校の図書室がたまり場。「図書室ではお静かに」の警告を無視してギャーギャー騒いでいたのを思い出します。

さてどこかの自治体では、街の市民センターとかに図書館が併設されているところもあるようで。いや図書室。図書館よりも小ぶりな一室なので、蔵書数はさほど多くはなさそうですが。

この小説「お探し物は図書室まで」は、区運営のコミュニティハウス内にある図書室を舞台にした、自己再生ハートフル連作短編集です。

先生はパソコンガイドの本をこちらに掲げながら、にっこりと続けた。
「それから、このコミュニティハウスの中にも、図書室がありますし」

図書室。

学生時代に戻ったような、優しい響きだった。としょしつ。
「そこで本を借りられるんですか」
「ええ、区民なら誰でも。六冊まで。期間は二週間だったかな」

コミュニティハウス内の図書室で本を借りようとするのは、この本の中では5人。

スーパーの婦人服売り場で働く、都会の一人暮らしで干物女化しつつある朋香さん21歳。

家具メーカーで働くアンティーク好きの諒さん35歳。

ファッション雑誌編集をしていたのに出産後にはマミートラックに乗せられた夏美さん40歳。

引きこもりニートの浩弥さん30歳。

定年ホヤホヤの元営マン正雄さん65歳。

みんな人生に何かのモヤモヤを抱えていることだけは共通点。

彼&彼女がそれぞれの用事でコミュニティハウスに出向き、図書室の存在を知り、レファレンスブースに座っている「白熊のような」司書の女性と出逢う。

「何をお探し?」

思いがけず、優しい声だった。びっくりした。ちっとも笑ってないのに。いつくしみに満ちていた。僕は吸い寄せられるようにふらふらと体を向けた。

あ、レファレンスってのは図書館の人が欲しい本を探してくれるサービスのことです。

「将棋を上達したい」とか「パンダの生態について調べたい」とか「夏休みの自由研究の題材を探してる」とか、利用者の要望に合わせて適切な本を紹介してくれるらしいのですね。まだ夏休みの自由研究が終わってない小学生諸君、今すぐお近くの図書館にGo!よ。

司書の女性 小町さゆりさんが紹介してくれるのは、上記5名の要望に沿った資料を何点かと、なぜか全然関係なさそうな本が1冊。
ついでにオマケもプラス。小町さんが仕事中にブスブス針を刺して作っているニードルフェルトの小物が1点。そのオマケのチョイスもなにやら不思議。でも意味がある。朋香さんがもらったニードルフェルト製の小さなフライパンみたいに。

そして5人は小町さんから紹介された本とオマケをきっかけにして、何が起きるか。
本とオマケで彼らと彼女らの人生はどう変わったか。

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この本はすいません、自分で買った本ではなくて、知人マダムOさんからお借りした本でございます。

実は最近の私、プライベートでいろいろありまして、非常に忙しい日々を送っていたのです。単純に時間が足りないのに加えメンタル的にも結構な荷重がかかり、鬼メンタル(鬼のように強いメンタル)を自称する私と言えども小説を読む時間も気力も体力もありませんでした。

そんな中で「これ!すごく良いから!」とOさんにこの本を貸して頂き、正直言ってかなり気乗りがしなかったのは事実。

しかし。しかしながら。

本を読み、5人が自らを再生させていくと同時に、私の心も「再生」されてきたのです。

乾いた土が水を与えられて草がグングン、グングン生き返っていくように、私の心が水を与えられてグングングングン葉を伸ばしていった。

比喩じゃないよ。大袈裟でもないよ。本当に、本当にグングン心の葉っぱが伸びる音が聞こえたの。本当よ。

熱いものがこみあげてくる。本もこうやって、生まれなおすことがあるのだ。どんな人がこれを手にし、何を受け取るのだろう。
ああ、私は本を作りたい。
明日が少し楽しみになるような、自分の知らない気持ちと向き合えるような、そんな本を世に出したい。それは形が変わっても、ミラにいるときと同じ想いだった。

本って素晴らしい。小説ってすばらしい。

乾いた心を潤す力が、本当に文字には宿ってる。

この小説を貸してくれたOさんありがとう。そしてこの小説を書いてくれた青山美智子さん、私の葉っぱを生き返らせてくれて本当にありがとう。

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