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五十嵐貴久「リバース」

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医師の父、美しい母、高貴なまでの美貌を振りまく双子・梨花と結花。非の打ち所のない雨宮家で家政婦として働く幸子は、彼らを取り巻く人間に降りかかる呪われた運命に疑念を抱く。そして、ある「真相」にたどり着いた幸子は、留守番電話に悲痛なメッセージを残すが……。最恐のストーカー・リカ誕生までの、血塗られたグロテスクな物語。
(幻冬舎文庫 巻末内容紹介より)

「志村ーっ!うしろうしろーーーっ!」

「8時だヨ!全員集合」で会場の子供たちが絶叫する声が聞こえる、そんなツッコミをしたくなる、それが「リバース」

あれっすかね。長野の山奥の孤児院ってのは、そんな純朴な子供たちが集まってるんですかね。幸子ほどに「うしろーっ!」にも気がつかないほど、ピュアなの?ピュアッピュア?

だって神父様、全部のお部屋が板張りなのです。フローリングというそうです。日下部村長の家は畳です。日本の家はみんなそうだと思ってましたけど、ここはまるで外国のようで、これこそがお屋敷と呼ぶのにふさわしいのではないでしょうか。

高校を卒業して、それまで暮していたミッション系列の孤児院を出ることになった幸子さん。
東京で住み込み家政婦の仕事を世話して頂きました。

はじめての東京!だけでもドキドキだというのに、家政婦としてこれから暮していくことになったお屋敷は、高級住宅地・広尾の中でも特段の豪勢さを誇る大豪邸。通称“バラ屋敷”

総合病院の院長である、スマートで洒脱な旦那様。品が良く美しい奥様。そして、フランス人形のように可愛らしい、名門私立小学校に通う双子のお嬢様方。

お嬢様たちのお名前は「結花(ユカ)」「梨花(リカ)」

…志村ーっ!うしろうしろーーーっ!

五十嵐貴久が「リカ」って名前を出したら、尻をからげて裸足で逃げ出せ!

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出会い系サイトにはご用心の「リカ」その10年後を描いた「リターン」

「リバース」は、上記2冊で登場する怪物リカちゃんが子供の頃のお話です。

ほほーうリカちゃんは、本当は梨花って名前だったんだね…って納得している方。それは、ちょっと待ってくれな。拙速な断定はケガの元よ。

「リバース」はその殆どが、家政婦の幸子から見た家族の肖像で占められております。簡単に言えば「家政婦は見た!」ですね。

とはいえ、市原悦子よりもかなりピュアッピュアな、純朴な田舎娘ですので、カーテンの隙間から雇い主の様子を伺ったりは致しませぬ。

家庭内のアレヤコレヤに関しても「東京はきっとこうなのでしょうね」「奥様のお考えになることは尤も」「お金のある方は鷹揚なお考えをなさる」と、疑いもせず納得しています。

いや、幸子?さすがにそれはピュアッピュアにすぎるぜ?

普通の母親は娘がピアノのミスタッチしても水張った浴槽で娘を溺れさせたりしないからな?

とはいえ。

さすがに幸子さんも、家政婦生活が長ずるに従って、段々と違和感を抱いてきます。

名門の令嬢上がりだった筈の奥様が、実は愛人の出だったりとかね。快活な旦那様が、実は浮気性で仕事せずのお飾り院長だったとかね。

ご令嬢のユカとリカは…ううーむ、華やかでちょっと傲慢な性格のリカはともかくとして、ユカの方は暗く引っ込み思案な性格で、しかもユカちゃんは途中で病気になって「痩せ細り」「でも背はすごく高くなって」「肌がガサガサになり」「薬の影響で体臭がキツくなって」…

あれー?

ユカ?ユカだよね?

「リカ」を読んだ方には先刻ご承知の…これは何かしら?デジャ・ブ?

「だってさ、幸ちゃん」小僧さんが声をひそめて言いました。「酷い殺し方なんだよ。おれも見たけど、まともな人間の仕業じゃない。手足をバラバラに切り落として、目をくり貫いて、口を耳まで裂いて」
止めて、と幸子は耳を塞ぎました。そんなの酷すぎます。残酷です。信じられません。
でも、小僧さんは幸子のそんな様子を面白がって、もっと詳しく話したのです。目玉やハナ、口や耳を切り取って、全部きれいに並べていたそうです。どうかしてます。

この所業もデジャ・ブ。誰とは言いませんけどこの犯人って、顔のパーツを並べて福笑いするのが好きですよね。「どうかしてます」って幸子の感想には100%同意しますけどね。ほんと、どうかしてるぜ。

近所では犬猫の不審死が相続いたり、旦那様が交通事故で亡くなったり、奥様が新興宗教に走ったりして。

通いのピアノ教師と家庭教師も死んじゃったりして。

ご一家とピュアッピュア幸子がどうなるのかというのは読んでのお楽しみとして。

私としては、作者の五十嵐貴久さんにお願いしたいところですね。

耳元でささやく声がした。
「あたし、リカよ」

ここまで来たならば、「リカ」で噂の看護婦時代の話も読んでみたいものですわ。

リカがオナゴの本能丸出しで恋愛至上主義に走った、あそこらへんの経緯が知りたいなあ~。

「リバース」で生まれた怪物ミニラが、ゴジラに成長するまでの成長譚。みっちりねっちり、読者に生理的嫌悪感を与える描写が読みたいの。

よろしくお願いしますね五十嵐さん。鼻栓用意して、待ってます。

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