我孫子武丸「さよならのためだけに」

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ハネムーンから戻るなり、水元と月は“さよなら”を決めた。二人はまったくそりが合わなかったから。けれど…少子晩婚化に悩む先進諸国はグローバル国策会社、結婚仲介業のPM社を創りだしていた。その独創的相性判定で男女は結ばれ、結婚を維持しなければならない。しかもこの二人、判定は特Aで夫ときたらPM社員。強大な敵が繰りだす妨害に対し、ついに“別れるための共闘”が始まった。
(「BOOK」データベースより)

この小説を始めて読んだ(多分2010年)に思ったこと。

  1. タイトルが良い。旧タイトル「赤い糸を断て」よりずっと良い。
  2. 始まりが良い。「絶対に離婚するぞ!オーッ!」と、夫婦が共闘するところが良い。いわゆる『二人の初めての共同作業です』ってやつ?面白いですねえ。えっ?夫婦二人が離婚に同意してるんだったら何も問題ないんじゃなかろうかって?いやいやそれは、もうちょっと話を聞いてよ。
  3. 月(ルナ)はイマイチ。何だこのヒステリックなオンナは…我孫子武丸はこーいうタイプ好み?
  4. ラストはイマイチ。大風呂敷広げて最後にあわててバタバタ畳んだような…ルナの上司はどこに行っちゃったんだ。思わせぶりに登場しやがって…。で、最後はこれ?これが恋の力?愛の奇跡?

そして10年後の2020年に、この小説を再読して思ったこと。

—-うわっ、我孫子武丸、預言者?

なお上記は「うわっ、私の年収、低すぎ?」の公告画像と共にお楽しみください。

「—とにかくわたし、あなたとやっていける気がしなくなってきたの。だからその……なかったことにできないかな。この結婚」
結婚をなかったことにする—-。
ぼくは一瞬その可能性を考えて、すぐに首を振った。
「駄目だ!そんなこと……そんなこと、できるわけがない」

舞台は今よりもちょっと未来の日本。何年かは不明。でももしかしたら2020年とそんなに隔たりはないかもね。

この時代では、男女のペアリングは遺伝子技術を応用したマッチングシステム提供会社PM社が主体となって行われます。遺伝子で男女をマッチングする…そういえば近年、リアルな日本でもDNA婚活なんてサービスが話題になってたりしませんか?

もちろんPM社のマッチングサービスによらずとも結婚しても構わないんですよ。でも殆どの人はPM社の判定を元にして結婚相手を決定しますし、それを利用しない人は“自由恋愛主義者”として変人あるいは非国民扱いされたりもします。

これを夢物語と言っちゃいけない。かつての日本だって恋愛結婚は野合と言われて、良家の子女がすべきではないこととされてきました。

平塚らいてうの運命の出会い、松井須磨子の後追い自殺、佐藤春夫の「魔女事件」、藤原義江をミラノに追った藤原あき、岡田嘉子が決行した雪の国境越え...

利用する方だって、どうせ結婚するなら相性が良い相手の方が良いですしね。ちょっと良いなーと思う相手がいても、判定がD(イマイチ)ならリスクを避けてあきらめて、A判定(バッチリ)だったら安心してモーションかけられる。Aとまではいかなくても、B(そこそこ)ならばまあ、自分の努力次第で何とかなるだろうしね。

PM社のおかげで晩婚化も少子化も解消し、離婚率も下がって日本の未来は明るいってもんです。これ、リアルな日本でも必要な対策じゃありませんかね?

さて主人公2人のうち、男の方はPM社にお勤めしています。業績のよろしい大手企業に勤める勝ち組ですね、水元さん。

社員の特権って訳じゃなく、水元さんに非常によろしいお相手がみつかりました。お相手は月(ルナ)さん。昨今はやりのキラキラネームですね。水元さんも「すげー名前だな」という感想は抱いておりますが、リアルでもこの世界でも、子供につける名前のキラキラ度合いは増しているようです。

で、水元さんとルナの相性はなんと特A判定(バッチグー)!これ以上ないベストなマッチングです。
これまでPM社で特A判定が出て結婚したカップルの離婚率はなんと0%。

なのに。

どうして。

甘いハネムーンから帰国したばかりだというのに、2人の仲は険悪ムード。どうにもこうにも相性が悪く、とてもこのまま添い遂げられるとは思えない。

……この結婚、間違いだったんじゃね?

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2020年の今あらためて読んでみると、「さよなら…」とリアル日本とが結構似通ってきていて、我孫子さん先見の明がおありだなと思います。預言者とまでは言いすぎですけど。10年ひと昔と言えど、まだ10年しかたってないしね。

例えば、この世界で買い物をするときの支払いはウォレットでキャッシュレス決済とかね。安倍首相もさぞお喜びになることであろう。

街中の防犯カメラでほとんどの人の居場所がわかるとかね。防犯カメラのプライバシー問題はリアル日本でもいろいろ言われていますしね。

とはいえ今だったら、人の居場所を特定するのはスマホのGPSか。スマホ!スマホが出てこないところだけが惜しいのよ!2007年のiPhone登場から3年では、さすがの預言者我孫子も予見できなかったらしい。

近未来の話って、デバイス出てくるとあかんですよね。「さよなら…」で録音に使用するのはICレコーダーだったりします。だよね!確かに10年前はICレコーダー主流だったよね!私も持ってた!でも残念、いまはスマホで録音できちゃうんだ!ジョブズを恨め!

現代の日本と比較してアラを探すのはお下品なのでほどほどにしておきますが、そこらへんを差っ引いても面白いですよ。離婚するためにどうやって二人が共闘するか。

せっかくの特A判定カップルが離婚してしまっては名折れとばかりに、メンインブラックみたいな黒スーツの男たちには追いかけられるし、催眠療法で洗脳させられそうになるし。

何で、何でこんなことになってるんだろう。どうしてわたしはこんなスパイダーマンみたいな真似をしてなきゃいけないの?ただ離婚しようとしただけなのに。

ミステリ作家我孫子さんの面目躍如として、遺伝子マッチングサービスを提供するPM社の本当の狙いは何だとか、まあいろいろありますが。
初読と同じく再読においても、正直ラストがイマイチだって感は否めません。

しかしながら、この小説は謎解きとか結末とか、そういう話は放っておきましょう(良いの?)

新婚さんおふたりの、初めての共同作業を温かく見守ろうじゃありませんか。
皆さま、シャッターチャンスを逃しませんように!

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レビュアー: さくら
さくら
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