記事内に広告が含まれています

堂場瞬一「チームⅢ」

スポンサーリンク
スポンサーリンク

東京オリンピック前、スランプに陥ったマラソンのメダル候補。箱根駅伝で伝説を作った男は、大ピンチを救えるか―!?オリンピック関連のスポーツ小説、4社リレー刊行!
(「BOOK」データベースより)

いま世界中を席巻しているコロナ禍で、2021年の箱根駅伝が開催されるのかどうかドキドキの私。

—-ってね、いやさすがに箱根駅伝だけじゃありませんよ気になっているのは。これから世の中どうなるのか、いろいろと気にはしておりますよさすがの私も。

ですがねえ。堂場瞬一の箱根駅伝シリーズ(勝手命名)読むと「どうなるじゃのう~、なぁばあさんや。来年の箱根路には若人達が走れるんかいのう」と、昔話のおじいさん的つぶやきを漏らしたくなる訳です。

走ることが人生そのものだから走るだけ。

さて今回の「チームⅢ」は、「チーム」「ヒート」「チームⅡ」から続く、箱根駅伝学連選抜(学生連合)チームのシリーズ、おそらくは本作が完結編となります。

ま、本当に完結編かどうかは分かりませんけどね。堂場作品のことだから。あの人シリーズ引っ張るから。

そいで完結編にふさわしく、主要チームメンバー全員集合!です。最初は大学生であった彼らも、シリーズ続くにつれてそれぞれオトナになっております。

10区、キャプテンの浦くんは、現在は母校城南大学の陸上部監督。あれっすね。この人は昔から王道を行くタイプですね。スポーツマンシップの権化のような顔をして、結構腹黒いところも相変わらずです。

やっぱり浦が仕かけたのか。使えるものは何でも使う—-いかにもあいつがやりそうなことだ。

9区、山城さとるちゃんは「チームⅡ」のレースの後で故郷広島県の瀬戸内海に浮かぶ大崎上島で実家のレモン農家お手伝い。うっそ、大転換
陸上は引退した悟ちゃんですが、浦さんからある相談をされます。歯牙にもひっかけず即答でお断りした悟ちゃんですが…。

「もう本気のレースに出ない」と実質的に引退を決めた時には、目の前に道はなくなっていた。–(中略)–走らない自分が想像もできないのだった。果たしてこんなことに意味があるのか、自分でもわからない。
こういう人生—-三十歳で全てをやり尽くしてしまった人生。

5区、門脇オリビエポプランは「チームⅡ」に引き続き、長野に帰って高校の教員を続けてます。門脇くんはねー。シリーズ全作とも登場ページ数はさほど多くないのに、いつもおいしいところだけかっさらって行くわよー。

「何言ってるんだ」門脇がからかうように言った。「今にも倒れそうじゃないか。スーパーランナーもオッサンになったもんだな」
「うるさい」
「まあ……よく走ったよ」
昔からまったく気の合わない門脇に褒められ、山城は驚いた。門脇は照れたように、鼻の下を擦っている。

3区、子ウサギ朝倉くん→スポーツ用品メーカーの営業マン。普通の会社で普通のサラリーマン生活を送る、この面子では一番の常識人…と、浦さんは認識してます。このメンバー唯一の既婚者で子持ちですし。

「赤ん坊の夜泣きがひどくてですね—-ずっと睡眠不足なんですよ」
「それはご愁傷様としか言いようがないな。でも、子どもは泣くものだから」
「さてさて、何を食おうか」門脇が両手を揉み合わせた。

みんなっ…朝倉くんにちょっとは同情してあげて…っ!

監督、吉池のおじさん→陸上の名伯楽もガンで闘病中です。ですが病院のベッドからでも、山城くんごときの若いのなんて簡単に転がしちゃう海千山千は相変わらず。うっ…好き…。

「どうだ…俺に任せてみるか?」吉池が提案した。
「任せるって…無理はしないでくださいよ」浦はあわてて言った。「監督には、まずご自分の体のことを考えていただかないと」
「毎日ここで寝てるだけなんだから、時間はいくらでもある」
「何かアイディアでもあるんですか?」浦は探りを入れるように言った。
「ない」吉池がきっぱりと言い切った。

箱根駅伝は10区ありますが、シリーズを通した主要メンバーはこんなあたりでしょうか。

ちなみに実質的なシリーズ第2作の「ヒート」で出てきたペースメーカーの甲本さんも登場しますよ。甲本さんは現在、神奈川県庁にお勤めです。箱根駅伝メンバーだけでなく別ラインもちょい登場させるところが、オールスター総出演って感じで楽しいですね。

あー楽しい。オトナになったキミタチを見て、もうすっかり気分は親戚のおばちゃんよ。

で、話の内容はと言えばですね。「チームⅢ」で走るのは山城さとるちゃんではないんです。いやあの人も走りますけど。

かつては大学生だった皆さんもオトナになりましたからね。スポーツの世界は年齢的な限界ってのが大きいですし、世代交代の時期だったりするんですよ。

新たなエースとして日本陸上界の期待を担う日向くんって子を、ホンマモンのエースにするために、旧 学連選抜の仲間たちがチームを組む、というのが本作なのですが…はい皆さんも想像するとおり、山城さとるちゃんは若者の指導なんてできるようなタイプとは思えませんわよね?チームなにそれおいしい?くらいなタイプですわよね。

瀬戸内海の離島で隠遁生活を送る山城さとるちゃんをどう引っ張り出すか、腹黒の浦キャプテンやら海千山千の吉池のおっさんやら、美味しいとこ取りの門脇オリビエポプランやら、さてさて彼らはどうするんでしょうねえ。さとるちゃんはいったい、どうするんでしょうねえ。

新たなエース日向くんの方にもいろいろ事情はあったりするんですが…まあ彼は置いておきましょう。必要とあらば堂場瞬一が別シリーズで書くに違いない(でも多分やらない)

私たちにとって(少なくとも私個人にとって)重要なのは、箱根駅伝の学連選抜で走った彼らが、まだ走り続けてるってことですから。陸上選手であろうとなかろうと。どんな形であろうとも。

あーやっぱり良いわあ箱根駅伝。まだ5月だというのに待ち遠しいなあ箱根駅伝。

一日も早くコロナ禍が収束して、学生ランナーの皆様方が練習できるよう、切に祈ります。私の正月がかかってるからさ、頼むぜベイビー。

タイトルとURLをコピーしました