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神田憲行「「謎」の進学校 麻布の教え」

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灘、開成、筑駒…東京大学合格者数ランキングの「常連校」は数多く存在する。しかし、五〇年以上トップ10に名を連ねる麻布の校長は「東大入試のために六年間も使うのはバカバカしい」と断言して憚らない。校則も無ければ、大学現役合格にもこだわらない。いわゆる「進学校」のイメージを裏切り続ける麻布。独自の教育と魅力を解き明かすべく、現役の生徒から図書館司書、保健室の先生、麻布が輩出した各界OBの証言までを徹底取材!
(「BOOK」データベースより)

東京近郊の小学生以下息子持ち家庭の方しか興味をそそらない本ですよね。関東圏以外の方には誠に申し訳ない。

インターネッツの広い海に放つローカルネタ。まあしばしお付き合いください。

そもそも麻布って何?という方にご説明しますね。麻布中学校・高等学校は、東京都港区にある私立の中高一貫校です。

港区麻布ってだけでアーバンなお坊ちゃん感がプンプンしますね。渋谷や六本木でブイブイ言わしてそうですね。

なおかつ、麻布は関東圏の中学受験界では「男子御三家」と呼ばれる超難関校のひとつであります。

つまり麻布に通う中高生は、アーバンで富裕層で頭脳明晰なワンダフルボーイズと言って良いのかと。

そんな麻布中学に、我が家のお隣一家の息子さんが通っております。

すっげーなUさん!ウチには縁のない世界だねえ。と思っていました。これまでは。

そしたら先日、反対側のお隣一家Yさんのお父上(Mrダンディ)と立ち話をしていたところ、Mrダンディも出身校が麻布である事実が判明。

アーバンで富裕層で頭脳明晰なワンダフルボーイズに我が家が挟まれていることを知った衝撃。オセロなら既に我が家は麻布になってる。

てーか、右から左から高偏差値の壁が迫ってきて我が家の敷地が圧迫されている。私インディ・ジョーンズじゃないから!我が家にトロッコないから!

我が家のアーク(聖櫃)を守るべく、インディさくらは件の学校を取り上げた「「謎」の進学校 麻布の教え」を読んでみました。

そして、知ったこと。

左右のアーバンで富裕層で頭脳明晰なワンダフルボーイズが通う(通った)学校は、どうやらとても変な学校らしい。

《麻布の校則》

・鉄下駄禁止

・授業中の出前禁止

・賭け麻雀禁止

以上

アーバンで富裕層で頭脳明晰なワンダフルボーイズの学校の校則は、上記の3つ。

…バンカラ?

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著者の神田憲行さんがこの本を書くために、麻布に取材交渉をしたときの企画書の仮タイトルは「麻布って変」だったそうです。こう申し上げては何ですが神田さん、もうちょっとプレゼンの仕方は考えるべきよ。

「うーん、変とおっしゃられても、我々としては理念に基づいて教育しているわけでして」
「(やっぱりそうだよな……)」
「自分たちで変なことをしているという自覚もありませんし」
「(企画書練り直ししよう……)」
「というわけで、今後の取材、よろしくお願いします」
「えっ、いいんですか!?」

麻布は、先生も変らしい。

企画書のタイトル作成に難有りの神田憲行さんが、何故か取材OKをくれた麻布の教員・生徒・OB・その他もろもろへ、2年間かけて『首までどっぷりとつかって』取材して作り上げた本が「「謎」の進学校 麻布の教え」です。

「まあ、こんな騒がしい学校だとは思わなかったわ」
と笑う人もいた。だいたいみんな私のように「すごくよく勉強できる大人しい子どもなんだろうな」というイメージで来て、いろんな意味で予想を裏切られてどっぷりハマった人たちなのである。
コラムでは著名なOBたちに当時の雰囲気を伺った。何人か、
「俺、たぶん裏口入学っぽい」
と言い出す人がいて慌てた。「伝説の天才」と言われた東大教授が、
「学校生活で覚えているのは麻雀くらいしかない」
と言い出して頭を抱えた。母校への懐かしさ、おかしみ、さまざまな想いが伝わってきた。

「「謎」の進学校 麻布の教え」を読めば読むほど、麻布の「変」さ加減は突き進みます。

絶望的に汚い教室、髪を七色に染めた文化祭実行委員、仮装して式に出席する卒業生、半端なく勉強しない生徒、野蛮な集中力、特殊な試験問題。

規律とモラルと常識が抜け落ちた落丁の辞書のような麻布カルチャーは、好みがはっきり分かれる学校でしょう。

たまらなくシンパシーを感じて麻布に入りたい(もしくは入れたい)と思うか、麻布だけはご勘弁、と思うかは人それぞれ。

んーでもまあ、お隣Uさんちのご夫婦は、見た目に反して結構なギャンブラー精神をお持ちの方だったんだな、とは思いましたよ私。偏差値がどうこうってのは度外視しても、息子をここに入学させるのは一種の冒険なような気がする。

「「謎」の進学校 麻布の教え」は、関東地方に居住して、中学受験を目指す小学生の息子を持つ親御さんか、もしくは麻布のOB、あるいは関係者しか手に取らない本だと思います。

あ、それと自宅の左右を麻布に挟まれたインディ・ジョーンズとね。

では、関東圏でない、もしくは麻布に過去も未来も縁のない層は、果たしてこの本を読んで何か得るところはあるのでしょうか?

インディさくらが得た感想というのは『ダンスィのとんがったプライド』です。

今も昔も、麻布に入学する12,3歳の少年というのは、それまで小学校や塾の中でも偏差値トップクラスの子供達なのですね。

で、進学校によくありがちと思われる状況が、各校のツブ揃いが集まったが故の“ただの人”への凋落。

各小学校(or中学校)で秀才の名を欲しいままにしてきたプライドが、周囲全てレベルが高いために「俺って一番じゃない」と鼻っ柱を折られる場面がやってきます。

神田憲行さんも、生徒や教員へのインタビューを通じて「独特の緊張感」を感じています。

「僕は最初感じなかったんだけれど、いろんな人、特に女の先生から『緊張感がある』と聞くんですよ。要するにこの学校はいろんな『一番』の子が集まっている。『僕はこの一番』『俺はこれの一番』みたいに、成績は芳しくなくても、『この点では負けない』という価値観をもって進んでいく。それが自分を保つための条件、みたいなものにもなっている。当人同士はそれほど闘いだと思っていないんですが、部外者から見ると異様な、熾烈な闘いに見えるんです」
自分の立ち位置、キャラ立てを巡る争いと言っていい。当然、疲れてくる生徒もいる。

だからといって、それが悪いと言うつもりじゃありません。

むしろ現代の草食男子の増加の中で、とんがったプライドを持ってガルルガルルと野獣化するダンスィの存在は、頼もしいっつちゃー頼もしい限り。

時に素っ頓狂な方向に進もうとも、健全な競争原理が働く環境があるというのは良いよなあ、と思いました。

鼻っ柱をへし折られるのも経験、金平糖みたいに四方八方にとんがるのも経験。

アーバンで富裕層で頭脳明晰なワンダフルボーイズかと思いきや、実はガルガルの野獣に我が家が挟まれていることを知りました。

オセロなら既に我が家は野獣になってる。

てーか、右から左からダンスィのとんがったプライドの壁が迫ってきて我が家の敷地が圧迫されている。トゲトゲ痛いから。私インディ・ジョーンズじゃないから。トロッコないから。

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