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近藤史恵「マカロンはマカロン」

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下町のフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マルはカウンター七席、テーブル五つ。三舟シェフの気取らない料理が大人気。実はこのシェフ、客たちの持ち込む不可解な謎を鮮やかに解いてくれる名探偵でもあるのです。突然姿を消したパティシエが残した謎めいた言葉の意味は?おしゃれな大学教師が経験した悲しい別れの秘密とは?絶品揃いのメニューに必ずご満足いただけます。
(創元推理文庫 巻末紹介より)

あのう…創元推理文庫の担当者様にお願いがあるんですが…。

シリーズ物2作目以降の出版の際は、巻末紹介に「〇〇シリーズ第△弾!」とか入れておいてもらえないものでしょうかね?

この「マカロンはマカロン」が<ビストロ・パ・マルシリーズ>の3作目であることを知らずに読んでしまった私からのささやかなお願いですよ。

ああそりゃね、シリーズ3作目でも読むには支障まったくございませんし、楽しんで読まさせて頂きました。シリーズ1.2を知らなくても十分に理解できる(多分)内容ではございます。

でもさぁ。シリーズ物の途中から読むのって、何か損をしたような気になるじゃないですか。最初から読んでいけばもっとお楽しみ要素があった(かもしれない)のを見逃してしまったような。お楽しみ要素があるかどうかもわからないのに。

そしてさらに悔しいのが、当ブログほんのむしを書くためにアマゾンのサイトに行ったら、アマゾンサイトには麗々しく「シリーズ第3弾!」と書いてあった事実よ。先にアマゾン見とけってことかしら。しくしく。

さて上記の説明のとおり、この「マカロンはマカロン」は、下町の小さなフランス料理店<ビストロ・パ・マル>を舞台にした連作ミステリ短編集です。前述で申し上げたように、前作を知らなくても十分に楽しめます(多分)。

内容としてはいわゆる「日常の謎」かつ「安楽椅子探偵」系。ビストロにやってきたお客さんのちょっとした謎をシェフが解明するという、文庫本解説者の若林踏氏曰く「お仕事ミステリ」に属します。

なのでビストロで血なまぐさい殺人事件とかは起こりません(血なまぐさいシーンがあるにはある)誘拐も脅迫も身元不明の死体も出てきません。

読む側としても安心して読んでられるほっこりミステリ。

今のご時世、何かとストレスも多いですからね。ほっこりしたいですよほっこり。

「マカロン・パリジャンももちろんマカロンだ。でも、世界にはそれだけではなく、いろんなマカロンがある。これは彼女のメッセージだ。もしかすると、戻ってこられないのは家族と揉めているからかもしれない。もうひとつの不安は、戻っても居場所があるかどうかわからないということもあるんでしょう」

“彼女のメッセージ”ってのが何なのかは、秘密です。

ところで、こういう“場”を舞台にしたほっこり小説って、読んでいるとその場に行きたくなってくるものじゃありませんか。小さなビストロ、いいわあ。家の近くにこんなビストロあったら、いいわあ。

私は決して日常的にフランス料理店に通うようなおセレブさんじゃございませんが、それでもちょっとした時にちょっと素敵かつ気軽に行ける、美味しいビストロなんかあったら最高じゃございませんか。

ですけどね。昨今のご時世で<ビストロ・パ・マル>にも逆風が吹いているようでして。

さて、近藤は今後、どのように<ビストロ・パ・マル>シリーズを紡いでいくのだろうか。それに関して、自身のツイッターアカウントで次のような発言をしていた。
「仕事終わりました。パ・マルがコロナ禍でテイクアウトをはじめる話を書いたよ」(2020.4.29)
(若林 踏「解説」より引用)

4月末と言えば新型コロナで緊急事態宣言、ステイホームが推奨されていた頃。ビストロ・パ・マルもテイクアウトお弁当の販売で売上を捻出しなければならない事態に陥っているようです。三舟シェフ…きっとお弁当販売は嫌だったろうに…ソムリエの金子さんも「あたしはどうすりゃいーの!?」と思ってただろうに…。

「マカロンはマカロン」を読んですっかり<ビストロ・パ・マル>のファンになってしまった私は、11月現在のGoToイートではビストロ・パ・マルがどう対処しているのか(でもきっと予約サイトとか使ってないから対象外)ビストロ・パ・マルにお客さんは戻っているのか、非常に気になる次第です。

ああ、どうなるビストロ・パ・マルの経営状態。それが謎。リアルな謎。

次作を早く読みたいものだわと思いつつ、まずは前2作を早いとこ読まなくちゃだわ。

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