200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、メーカーの担当者と生き残った自衛隊パイロットは調査のために高空へ飛んだ。高度2万、事故に共通するその空域で彼らが見つけた秘密とは?一方地上では、子供たちが海辺で不思議な生物を拾う。大人と子供が見つけた2つの秘密が出会うとき、日本に、人類に降りかかる前代未聞の奇妙な危機とは―すべての本読みが胸躍らせる、未曾有のスペクタクルエンタテインメント。
(「BOOK」データベースより)
角川文庫版「空の中」に掲載されている、新井素子の解説文が好きです。
読め。
面白いから。
私はこの本をおすすめするにあたり、上記を超える言葉を書ける気がしない。
よって、本日の ほんのむし、終了———。
待て待て待て待て。
もうちょっと新井素子の解説文のお話をしましょう(あれ?「空の中」は?)
新井素子が「空の中」を読んだ当時、彼女はとある雑誌の書評連載をしていたそうです。
で、彼女は『とりあげた本については、べたべたに褒めた』くなっちゃうタイプ。考察とか論評とかすっ飛ばして、
「この本は面白いよー、この本はこんなことに興味がある人にお薦め、こっちの本は、多分読みたがる人あんまりいないかも知れないけど、実はこんなに面白い、読めー、読めー、読むんじゃあ」
と褒めて褒めて褒めまくりたい。
気持ちわかるわー。飲み屋で友達の恋バナ聞く時くらいに首ブンブンしちゃうわー。
このブログも然り。『評』とかどーでも良くて『読めー、読めー、読むんじゃあ』と言いたいだけの私です。
しかしながら雑誌の書評となると、取り上げた全ての本が“好きな本”ばかりとはいかず、与えられた本にも書評を書く必要があるのもお仕事であるが故。
その本がイマイチな出来だったり、自分の琴線にどうにも触れない本だったりすると…モニョるよなあ。お仕事って辛いなあ。
新井素子が、できれば『とっても面白かったから、他人様に絶対薦めたくなる本』を求めて書籍の荒野を流浪していたときに出逢った本。
それが「空の中」です。
『あなた・たち・航空自衛隊岐阜基地所属の武田光稀三尉・と・&・日本航空機設計事故調査員・春名高巳・は・now・今・現在・私の・上に・いる・stay here・ます』
高度二万メートルの空に存在していた【白鯨】に衝突した二機の航空機。それにより死亡した2名と、その関係者。
謎の物体【白鯨】とは?
と言って、ストーリーを最初から紹介しようと思うとテンコ盛りで大変。
UMAと未知との遭遇と日本の危機とパニックと拾った子犬(のような生物)と淡い初恋と青春と解離性同一性障害と遺族感情と親子の絆と空への憧れと老人の含蓄と素直になれない乙女心と分離不安ときゅんきゅんとホロリを中華鍋に入れて炒めたら「空の中」の出来上がり。
コツは強火で一気読みよ。
ひとつだけ言わせて頂ければ、UMAの【白鯨】=ディックが、ちょーちょーカッチョ良いってことですね。映画「トランスフォーマー」のオプティマス・プライムを髣髴とさせる、クールで理知的な存在です。
ああ、理知的と言えば宮じいもたまらない。『お前は一体何様になったがな』の厳しくも温かい台詞は「空の中」の一番の名シーンと言って過言ではない(多分)
高巳と光稀もね、まあ、光稀のカマトトっぷりにはやりすぎ感が否めないけど、世の乙女達にはこれくらい迂遠な方がきゅんきゅんかと。
フェイクの可愛さも異常。マジ犬。投げたフリスビーをキャッチしてワフワフ言う犬。ぷにぷにしたい。
言い出したらひとつだけで終わらない。
つまりは、これに敵う言葉はない。
読め。
面白いから。