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ジャン・トゥーレ「ようこそ、自殺用品専門店へ」

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「自殺用品専門店」へようこそ!どんな死に方をお望みで?首つりロープ、切腹セット、毒リンゴにタランチュラ。ふつうの死に方から、男らしい死に方、女らしい死に方まで、死を願うすべての人の希望を叶える商品を取り揃えております。われわれ一家はこの店にふさわしく、暗く、陰鬱で、笑ったことなど一度もありません。だからこそ、お客様にも信用していただけるのです。…なのに、末っ子アランが生まれてから、すべてがめちゃくちゃです!この子がベビーカーのなかで笑うのを見たときから、イヤな予感はしていたんです…フランスでベストセラーになったブラックユーモアあふれる物語。
(「BOOK」データベースより・抜粋)

タイトルから、昔なつかしい「完全自殺マニュアル」のような書物を連想した方がいたら、予めその誤解を正しておきましょう。
この小説は『もっとも暗いテーマを使って笑える小説を書きたい』と、おフランスのジャン・トゥーレさんが書いたコメディです。
“人生に失敗?それなら上手に死のう!”がキャッチコピーの、自殺用品専門店が舞台。

「どんなものがいいかしら?さわっただけで死ぬ毒薬はいかがでしょう?ほかにも吸入タイプや、飲むタイプもありますけど」
「そうねえ……」思いがけない選択肢に、女性はとまどった。「どれが一番いいのかしら」
「触れただけで死ねるタイプでしたら、あっという間ですよ!このタイプにもいろいろな種類の毒薬があるんです。『青うなぎの毒』に『金色カエルの毒』、『ナマズの毒』、それから『宵の明星』なんてロマンチックな名前のものから『エルフの懲罰』、『灰色の恐怖』、それに『猛毒ゼりー』『気絶油』なんてのもね……全部は置いてませんが、冷蔵棚にいくつかあるはずですわ」ガラスの小瓶がずらりと並べられた陳列棚の前でルークリースは言った。

「自殺用品専門店」には、毒薬以外にも様々な自殺用道具が置かれています。ナイフや拳銃、首吊り輪っかロープや、足枷付のコンクリートブロック。ちなみにコンクリブロックには店のロゴが入っているので、宣伝効果もばっちり♪
店主のミシマさんがおすすめするのは切腹(ハラキリ)だって、ほら、ミシマだから!
 

ミシマ = 三島由紀夫以外でも、登場人物の名前や出てくる固有名詞は自殺した人・自殺の関連作品で統一されてます。娘のマリリンはマリリン・モンロー、その恋人はアーネスト・ヘミングウェイ。長男のフィンセントは、あれよあの人、フィンセント・ファン・ゴッホ。
次男のアランは、アラン・シリトーあたりかと思ってましたが、途中でアラン・チューニングであると明かされています(そもそもアラン・シリトーは自殺じゃない)アラン・チューニングをご存知?コンピューターの父よ。皆様がお使いのiPhoneのAppleロゴマークのデザインは、アラン・チューニングの自殺方法に由来しているという説もあります(諸説あり)
 

その、次男アランくん。
とんでもなく、不肖の息子です。
ネガティブ思考と陰鬱な面持でいるべき「自殺用品専門店」なのに、ポジティブな性格でよく笑う、明るい子なんて、まったく冗談じゃない!

「本当は、三人目の子がほしいなんて思ってなかったんですのよ、社長さん。あの子ができたのは、穴あきコンドームを試しに使ってしまったからなんです。あの、性病にかかって死にたい人のための商品よ」
ルークリースは自分の運命を呪うかのように、頭を振った。
「たった一度試しただけなのに、なんてツイてないのかしら!」

…いや奥さん、それは自業自得ってもんだろう…。

アランは学校でも「Suicide(スュイスィデ=自殺者)とは何ですか?」と聞かれ「スイスに住む人」と答えておしおきをくらっています。
まったく不肖の息子だね、アランくん!
 

世界の暗鬱による自殺の流行と、テュヴァッシュ・ミシマ一家の努力で利益を出していた「自殺用品専門店」が、不肖の息子アランの言動のせいで経営の危機。
果たして「自殺用品専門店」の未来はいかに?!
 

との結末はさて置いといて。
この小説「ようこそ、自殺用品専門店へ」は、2013年に「スーサイド・ショップ」というタイトルでアニメ映画になっていたそうです。監督はパトリス・ルコント!へー、パトリス・ルコントってアニメーション監督もやるのね。
ちょっとアニメも観てみたいですね。でもネットで画像検索すると、奥さんのルークリースがマツコ・デラックスみたいなのが気にかかる。ああ気にかかる…。

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