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ジェフリー・アーチャー「ケインとアベル」

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1906年、ポーランドの片田舎で私生児として生れたヴワデクは、極貧の猟師に引きとられた。時を同じくしてボストンの名門ケイン家に生れたウィリアムは、祝福された人生を歩み始めた。ドイツの侵攻で祖国も肉親も失ったヴワデクは、数奇な放浪の旅の果て、無一文の移民としてアメリカに辿りつき、アベルと改名した。「三作目が勝負」と明言した著者が、満を持して発表する大作。
(「BOOK」データベースより)

はい、山田涼介さんと桐谷健太さんのファンの方ー。
昨年2016年のフジTVドラマ「カインとアベル」の余韻に浸りたくなって検索した方はごめんなさいねー。
それ「カイン」だから。「カ」だから。こっち「ケ」だから。
お暇だったら読んでいってくれるのは嬉しいけれど、お急ぎだったら無理強いしないわ。またのお越しをお待ちしてまーす。
 

および、旧約聖書に興味がおありで「カインとアベル」の兄弟顛末をお知りになりたい方ー。
すいまっせーん。この小説のタイトルが創世記に出てくるカイン&アベル兄弟に酷似しているのは、タイトルで釣って売らんかなのジェフリー・アーチャーの陰謀でーす。
宗教家の清廉さとは裏腹の、欲に満ち満ちた所業ですので、欲にまみれない内にお戻りくださいませー。
でも私、そういうアーチャーさんの商売人感覚、嫌いじゃないですよ、ふふふ。

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さて、この「ケインとアベル」は、1900年代初頭の同じ日に生まれた二人の男性をめぐる大河小説です。
ひとりはウィリアム・ケイン。苗字がケイン。
ひとりはアベル・ロスノフスキ。名前がアベル。
 

二人の人物の、苗字と名前を混在してわざわざ「ケインとアベル」にしたところに、アーチャー大先生の売らんかな商売感を感じるでしょう?
繰り返しますが、嫌いじゃないのよ嫌いじゃ。レッツ資本主義。
 

彼らは同年の同日に生まれ、互いにビジネス上で成功者となります。
諸般色々あってふたりは対立することとなり、ン十年の足の引っ張りあいで相互が恨み骨髄に徹する中、互いの子供がロミオとジュリエットばりに出逢って恋愛してでもわたしたち死んだりしないわ駆け落ちして幸せになっちゃうのチャオアルベデルチグッドラック!ってーな話なのです。
極私的に言えば、この二人の話は正直、どーでも良い話です。
「ケインとアベル」の諍いのほぼほぼ原因は、ウィリアム・ケインの継父ヘンリー・オズボーンが存在しなければ回避出来る話ですから。ヘンリー邪魔。ヘンリー殺しとけ。
そもそも私は、この小説では脇役のフロレンティナ・ロスノフスキを主人公に据えた「ロスノフスキ家の娘」の方が好きなんですよ。私にとっては「ケインとアベル」の方がサイドストーリーなの。おっさん同士の話、いらないの。
 

それでは「ケインとアベル」の、一体何が楽しいんでしょう?
彼等が生まれたのは1906年。第一次世界大戦の直前期です。
そこから始まるアメリカ史が、ふたりの成長と共に流れていくのが面白い。つまり、映画「フォレスト・ガンプ」的な面白さですね。
だってウィリアム・ケインのパパが死んだはタイタニック号の沈没でよ?レ・キ・シ~って感じでしょ?
アベル・ロスノフスキは元々ウワデク・コスキェヴィチという名前でポーランド出身。第一次世界大戦時のポーランド侵攻でソ連の強制収容所に連行→脱出(ここいらへんすごく面白いよ!)アメリカ移民が大量に増えた時代に、ウワデクもアメリカ移民の仲間入りをしてアベルと名前を変えました。
その後に彼等が若かりし頃にウォール街大暴落世界恐慌が起こり、そのアオリで彼等の遺恨が発生。
次に起こった第二次世界大戦では、ドイツでアベルがケインの生命を知らずして助けたりするんですけどね。で、小説はおおむねケネディ大統領就任直前まで続きます。
つまり「ベルサイユのばら」でフランス革命を知るように「ケインとアベル」でアメリカ史を知る!というのも、これまたひとつの楽しみ方であります。

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でも、やっぱり「ロスノフスキ家の娘」の方が好きだわ、私。
おっさん達より美貌の娘っ子の方が読んでて楽しいじゃない。
 

という訳で、フロレンティナ派の私は「ロスノフスキ家の娘」の復刊を切に希望する也。
フロレンティナを思わせるヒラリー・クリントンは、ホテル王アベル・ロスノフスキを思わせるドナルド・トランプに負けたが。
 

「元始、女性は太陽であった。真正の人であった。今、女性は月である。他に依って生き、他の光によって輝く。病人のような蒼白い顔の月である。私共は隠されてしまった我が「ロスノフスキ家の娘」をいまや取戻さねばならぬ」
 

絶版書籍の復刊を阻むガラスの天井に負けてはならない。
復刊解放運動のリーダーは平塚らいてうだ!

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