「我はありもしなかったクリスマスの亡霊である」ゴーリー風味のアレンジで見苦しさの一歩手前まで盛り上がる『クリスマス・キャロル』! オールカラー。
(河出書房新社 内容紹介より)
ホッホッホッ、メーリィ、クリスマース!
良い子のみんなにサンタさんから、エドワード・ゴーリーのプレゼントだよ!
今宵はクリスマス・イブ。
そこで当ブログでも、時勢にあわせたクリスマス絵本をご紹介。
とはいえ作者はエドワード・ゴーリー。普通のクリスマス絵本とは、ちょっと違う。
ポットカバーが突如ピクピク動きだし、その下から、かりにポットが入っていなかったにしても中の空間に比べて何倍も大きすぎる生き物が飛び出してきた。
「我はバアハム・バグである」と生き物は言いはなった。
「教訓主義の効用を広めるべくここへ来たのである」
このバアハム・バグって虫がねえ、気色悪いんですよホントに。黒くて!巨大で!足いっぱいあって!
クリスマス・イブの夜更けに枕元で読み聞かせをするには、全くもってふさわしくない。
そもそもエドワード・ゴーリーの絵本を読み聞かせしようなんてお母さんは、本のチョイスから間違っています。
そして内容も難解です。てか、わっかんねー。
世捨て人のオジサンが一人クリスマスにお茶を飲もうと思ったら、ポットカバーから巨大な虫が飛び出して、クリスマスの亡霊と共に様々な場所を探索するストーリー。
様々な場所では、それぞれ胸ふたがれる光景、鬱屈とした情景、やりきれない情勢が見られるのですが、それぞれの風景には全く関連性もなく、意味があるのかないのかすら分からない。
ゴーリー先生ーっ!ワケ、わっかんねーよー!
山荘で、緩んだ屋根板を直そうとしたエドウィン・ストップルが屋根から落ち、するとバグが詰責的な口調で「そういう真似は沢山であろう」と言いはなった。
本編でワケわっかんねー人は、解説を読むと納得いたします。
この「憑かれたポットカバー」は、ディケンズの「クリスマス・キャロル」のパロディだそうなんですね。んー、それは分からないわー。元ネタのクリスマス・キャロルを読んだことがない人には、わっかんないわー。
逆に、ディケンズの「クリスマス・キャロル」が記憶にある人には、楽しんでお読み頂ける事でしょう。全体的な話の流れから、細かい台詞や固有名詞まで、元ネタを知っていれば『ああそう、これこれ』と分かる……筈!私には分からないから、何とも言えないけどね!
(一例を挙げれば、巨大な虫の名前「バアハム・バグ The Bahhum Bug」は、ディケンズ版の主人公スクルージの口ぐせ「ふん!ばかばかしい! Bah!Humbug!」をもじっているそうです。いや、分からんて)
内容はイマイチ分からなくても、そりゃあもう、エドワード・ゴーリーですから。
精密で(クソ細かくて)美しく(はない)不気味で(間抜けで)独特の(確かに)ゴーリー版クリスマスを堪能できる絵本であります。
何だか妙に、楽しいしね。
クスクス笑いと、踊りと、金切り声が場にはびこり、晩がふけていくなか、見苦しさの一歩手前まで盛り上がったのだった。
ホッホッホッ、メーリィ、クリスマース!
良い子のみんなにサンタさんから、エドワード・ゴーリーのプレゼントだよ!
ゴーリーさん主催のクリスマスパーティは、気色悪い気晴らしに誠に宜しく、見苦しさの一歩手前までのご盛況。
本の扉を開いて、どうぞパーティにおいでなさいまし。