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今野敏「任侠浴場」

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東京のとある町に事務所を構えるヤクザの親分・阿岐本雄蔵は、困った人をほっとけない上、文化事業好きな性格が困りもの。そのせいで組員たちは、これまで出版社、高校、病院などの経営再建に携わる羽目になってきた。今度の舞台は赤坂の路地裏にある古びた銭湯!世の中どんどん世知辛くなって、ヤクザ稼業も楽じゃないが、阿岐本、代貸・日村はじめ個性的な面々は、銭湯にお客を取り戻すことができるのか!?
(「BOOK」データベースより)

銭湯

出版社、学校、病院ときて、次は銭湯。

今野版『愛の貧乏脱出大作戦 byみのもんた』…って、そろそろこの番組名も分からない人が増えてきてるだろうな。

過去に当ブログでも取り上げた、阿岐本組の任侠シリーズ第4弾。中間管理職の日村さんも、相変わらず阿岐本組長の世話焼き性分に振り回されて大変です。

阿岐本がかぶりを振った。
「俺はな、無理だと思えば思うほど、挑戦したくなるんだ。なあ、誠司、おまえだってそうだろう」
「いや、自分は……」、
「そうだよな、誠司。それでこそ、俺の代貸だ」
その一言で、日村は何も言えなくなった。
阿岐本に「死ね」と言われれば死ぬ覚悟ができているはずだった。こんなことくらいでうろたえていてはいけない。
日村は、自分にそう言い聞かせようとした。だが、なかなか受け容れられない。
溜め息が出そうだった。

しかしまあ、これまでの「任侠書房」「任侠学園」「任侠病院」の3作に比べると、家族経営の銭湯は小ネタつっちゃ小ネタですね。

阿岐本組の皆さんがやることも基本的には掃除くらいなモンなので、さほど活躍はされてないです。

ですので今野センセー、ページ埋めグリコのオマケとして阿岐本組ご一行を愛媛県は道後温泉に連れて行ってあげてます。名目としては、銭湯の勉強ね。あとは若干、阿岐本組長からの慰労の意味もあるかな。社員旅行みたいな。

しかし、慰労目的であるならば、私は阿岐本組長にちょっと言いたい。

ヤクザが社員旅行に行く温泉旅館と言ったら、奥湯元あじさいホテルがベストなんじゃなくって?

気がつくと、ずいぶん長く湯に浸かっていた。日村にしては珍しい。
普段、長湯が嫌いだというのは、おそらく他のことで頭がいっぱいだからなのだろう。こうして、頭を空っぽにすると、いくらでも湯に入っていられそうな気がした。
湯の温かさとともに、阿岐本が言っていたことが、体に染みこんでくるような気がした。めりはりが大切なのだ。昔の日本人は、こうしてゆっくり湯に浸かって、頭を空っぽにしたのだろう。
それで一日のオンとオフが切り替わるのだ。
この気分が、きっと檜湯の役に立つ。日村はそう思っていた。

ヤクザが温泉、と聞くと、ふと疑問に思ったりしませんか?

ヤクザが身体に入れている刺青は、大衆浴場への入浴の妨げにはならないのでしょうか?

とりあえず「任侠浴場」の中では、その問題は解決されています。旅行前の下調べにより、刺青オーケーの温泉を探したり。回の立て直し対象の銭湯でも、掃除しただけでお風呂には入ってませんしね。

ですが、これを機に「檜湯」では、刺青オーケーの日を設けることも検討されているそうですよ。赤坂付近のヤクザの皆さん、朗報ですね!

昨今では、刺青を入れた人に対して厳しい世の中になりましたが、私が子どもの頃はもうちょっと世情がゆるやかであったように思われます。

学生時分に行った区民プールでは、思いっきり“勧進帳”の絵柄を背中に背負った男性も普通に泳いでましたしね。まあ、それは実家付近の環境がヤクザ比率高めだっただけかもしれませんが。

でもさあ、それでも区民プールで背中にバリバリお絵かきしてる人がいたのは当時でもびっくりしたよ!?

もっと詳細に絵柄を見たかったのに、レーンの先で泳ぐ弁慶の早かったこと早かったこと。ヤクザもやっぱり、体力勝負なんですかね。泳ぎも逃げ足も、速くなくっちゃね。

「自分も、シャワー派ですけど、たまに風呂に浸かると気持ちがいいですね」
「そうだろう。その気持ちがいいってことが重要なんだ」
香苗が尋ねる。
「なんで?」
「今の日本人は、嫌なことばかり考えているからだよ。マスコミのせいもあるだろうな。景気はなかなかよくならないとか、先行きは不透明だとか、国際情勢は予断が許さないだとか、テレビも新聞もそんなことばっかり言ってる。そりゃ、国民に警告することは大切だよ。けどね、テレビや新聞を見るたびに悪いことだらけじゃ、いい加減、嫌になるじゃないか」
「そりゃそうよね」
「だからね、今の日本人はもっと気持ちのいい思いをしなけりゃだめなんだ。日常の中でも何か気持ちいいことを見つけなけりゃ。そういうものの積み重ねで、世の中の気分ってものができあがるんだ。経済なんて、けっこう気分で変わるんだよ」

阿岐本組長のご高説は、誠におっしゃるとおり。

私もたまには銭湯に行って…っても、今の家の近くに銭湯が存在していないんだよなあ。
いっそ松山の道後温泉まで行って、刺青オーケーの温泉宿を探してみるか。

もしくはプリズンホテルの奥湯元あじさいホテルに行って、極楽の湯に浸かってみるか。

露天風呂で背中に勧進帳を描いたオジサンを見つけたら、今度こそじっくり見せてもらおう。

お風呂は25メートルプールよりも狭い(だろう)から、今度こそきっと追いつける筈。

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