母の涙の数だけある真実のストーリー。涙あり笑いあり驚愕あり、でも止められない中学受験。合格を勝ち取るための反面バイブル。
(「BOOK」データベースより)
「りんこさん、私はもうダメです。母親として失格です。こんな母親ならいないほうがマシです。死んだほうがいいです。りんこさん、死んでもいいですか?」
私が文面を見て「また来た!」と思うメールである。冗談ではなく、私の元には数多くの母から「死にたい」メールが届く。
世の中学受験生のお母さんたちー。気持ちはわかるけどー、りんこさんは“いのちの電話”じゃないよー。
およそ一年前の2016/12/19に、私 さくらは当ブログにて鳥居りんこさんの「偏差値30からの中学受験合格記」をご紹介しました。
まあ正直言ってだね。この本、10年以上前の2003年発刊の本な訳ですよ。アマゾンでも中古本としてしか発売されておらず、ふるーい本のご紹介、という心持ちがあったところです。
しかしだね!この本、世の中学受験生の母たちにとっては、今現在でもまだまだアツい本らしい!当ブログのアクセスランキングでも着実にランクを上げていて、特に受験勉強が佳境に入ってきたと思われる11月後半からは、毎日ページのアクセス数が伸びております。
TVで話題になった書籍でもなし、何らかのイベントがあった訳でもないのに、不思議なくらいの閲覧数。
……ってことはだ。世のお母さん方が、如何にこの本を、鳥居りんこさんを求めているかということだ。
まあ、その理由は簡単ですよ。
だって他に、ロクな本がないんだもん。
世の中には中学受験に関する本って沢山ありますが、殆どは教育のプロが書いた本で『上からメッセーン』のご高説であります。
あとは父親が書いた中学受験体験記。あれね、どうして父親が書いた受験本って親のプライドが先に立った書きっぷりなんでしょうね。男なんてそんなもん?
それに比べてだ。鳥居りんこさんの体験記は、親のカッコつけなど微塵もない、ストリップで言ったらご開帳はなはだしい(すいません下品で)ぶっちゃけ感に溢れてる。
頭ではわかっているのだ。偏差値なんて、塾が決めた人気ランキングであり、年度によっても、日にちによってもコロコロ動く、極めて当てにならない、たかが「数字」に過ぎないということはわかっているのだ。
でも、なぜだろう。渦中に居れば居るほど「校風やら理念こそが私立のすべて!偏差値に一喜一憂するとは愚の骨頂!」という偉い人たちの諫言はまったく耳に入らず「でも、この偉い人たちはみんな偏差値が高い学校を出てるじゃん?お腹の中ではそうは思ってないんじゃね?」とか「なんか自分がよくできるからって、上からものを言って嫌な感じ!」といったひがみ根性がフツフツと湧き上がり、そういう意見は一切無視!はっきり言えば、数字しか目に入らない母になっていた。
(「合格奮闘記_これが中学受験ザマス」より引用)
そう、渦中にいる母は、どこかのお偉いさんのご高説なんて、聞きたくもないのよ。
知りたいのは「皆どんなことやってんのー?!上手くいかないのって、ウチだけなのー?!他の子供ってちゃんと勉強してるの他のお母さんってちゃんと母親やれてるのー?!」ってことなんです。
さて、それでだ。
自らの身を切り骨を断つ覚悟で、自分の息子の中学受験体験記を書いた鳥居りんこさんが、中学受験を経験した仲間たちにアンケートをとって結果をまとめた本が、この「合格奮闘記_これが中学受験ザマス」です。
合格奮闘記、とありますが、各ご家庭の結果はそれぞれ。見事志望校に合格した子もいるし、残念ながら合格しなかった子もいる。(むしろ第一希望に合格した子の方が少ない。統計的には、第一希望の合格率はおよそ25%だ)
結果はそれぞれでも、それに至るまでの過程は、皆同じ。いやそれぞれの家庭毎に違うドラマはあるけれど、結局のところ、皆同じ。
どの家庭もどの母も、泣いて笑ってキレて叫んでテキストを投げて、熱く激しく、切ないドタバタ悲喜劇がある。
これから自分の子供に中学受験をさせようかと迷って『これが中学受験ザマスか』とこの本を買おうと思った貴女。
私は言おう。早まるな!
この本は、中学受験母の初心者にとっては劇薬です。まずこの本から読み始めようと思うのは愚の骨頂。
怒声と拳と包丁が飛び交う世界を垣間見たら、中学受験から手を引こうと思うのは必至です(まあ、それも選択のひとつだ)
だって、りんこさんが母達に聞いたアンケート回答が、あまりにもセキララすぎる。
例えば、受験勉強時に母たちがしてしまったご乱行(の一部)を読めば。
『塾の宿題が終わらないので、夜中の3時までやらせてしまった』
『娘の顔を叩いたら鼻血を出してしまった』
『子供に「死になさい」と言ったり、首を絞めた』
『母が考えているとおりに勉強しない息子にキレて、息子への暴言を吐きながら壁を蹴った。息子のテキストやノートを引きちぎったり、鉛筆を折ったことも』
『娘とバトルをしていて気が狂っていた。壁には母が穴を開け、テキスト、プリントもしょっちゅう破いていた。過去問も破いた。娘を投げ飛ばしたこともあり、椅子から叩き落としたこともある。あるとき、会社で「手が痛い」と思ったら、娘を殴った後遺症で手にあざができていた』
私の知人の息子さんが中学受験する際、息子がマンションの壁を蹴って穴が開いたという話はお聞きしましたが……こっちは母ですか。母が壁に穴を開けますか。
ね?悪いことは言わないよ。読むんだったらせめて「偏差値30からの中学受験合格記」から読んどきな。この本から読んだら中学受験やめたくなるよ、壁の補修代金を考えて。
こんなに金も時間もかけているのに!生活すべてをかけているのに!
「最低最悪でも、このレベルよりは上の学校でなければ意味がない!」
そう思った。
人に問われれば「まあ、そんなに大した学校じゃないんだけどね」という笑顔の枕詞付きで、はっきりと合格した中学校名を口にしたいと思っていた。
何のために?
誰のために?
自分が何をやっているのかがよくわからなくなって、よく泣いた。
そして、この本を読むべき人。この書籍名をググって、このページに飛んできた人は、恐らくは今まさに中学受験が佳境に入って、自分の気持ちも子供もコントロールが効かなくなってパニックになっている、そう、貴女の筈だ。
貴女は、読みなさい。
子供にギャンギャン怒鳴って、塾のテキストをゴミ箱に叩き込んで(そして後で拾って)、自己嫌悪に陥って自分が駄目な母だと思ったら、読みなさい。
中学受験、母には死にたい夜もある。この道で迷子になっている夜がある。
でもね、今、私はそういう夜も悪くないって思ってる。正しい子育てか否かと問われたら、それは決して褒められたものではない。
自分が普通じゃないと思った日々は後になっても消せないけれど、きっとこの先、ほろ苦い思い出と共に「お母さん12年生」の自分を懐かしく振り返る。
いつまでもそこにはいられない。こんなことでイチイチ死んでいたら、この先何千と命があっても足らない。私たちは子育て下手だけど、下手は下手なりにやっていこう。
大丈夫、みんな、こうして来たんだ。私たちは子育て下手だからこそ、懸命に今を頑張るしかないんだよ。
自分だけじゃない、そうやってほっと安心できるなら、それで精神の均衡が保たれるならば、それで良いじゃない。傷の舐めあいだなんだと横からほざく奴等は、ほっとけ。
12月。これから中学受験本番の怒涛の渦に飛び込んでいく母と子に、りんこさんと私で大きな大漁旗を振ろう。
泣いてるヒマはないぞー!死んでるヒマもないぞー!怒涛の渦に、突っ、込、めーーーーー!