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岡崎京子「pink」

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愛と資本主義。
欲しいものは欲しい、ヤなものはヤ。ワニと住むOLでホテトル ユミちゃんの、ポスト・ポストモダン社会の愛のおとぎ話。
(マガジンハウス帯文より)

岡崎京子が交通事故にあってから、今年でちょうど20年。

いやもう本当に飲酒運転ってダメだよね!『飲んだら乗るな、乗るなら飲むな』の交通標語はホント正しい。誰が言ったか知らねども。

ちなみにご存知ない方にご説明。漫画家の岡崎京子さんは、お散歩中に飲酒運転の4WDにひき逃げされて、2016年の今現在でもリハビリ生活を送ってらっしゃいます。

ひき逃げ犯が逮捕されたというニュースを見た覚えはありませんが、飲酒運転って分かってるんだから、多分捕まっているんだろうと思う。

交通事故の後、岡崎京子の新作は一切発表されず。

ひき逃げ犯は、自分がなんて大事なモノに傷をつけてしまったのか、本当にわかっているんだろうか?

あたしは悪いけど
立ちなおりが早い
それは頭が悪いせいと
目の前の事しか考えないから

これは「pink」の主人公ユミちゃんの台詞。

岡崎京子がユミちゃんの如くと言うつもりは全くありませんが、このユミちゃんの突き抜けた力を、彼女に与えてあげたい。

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さて「pink」

ジャンルとしては少女漫画に分類されるのでしょうが、少女に読まれるにはちょっとためらうかなあ。かなり内容はゴッツいお話です。

何か あたしは
なんだかすごく悲しくなって
そんなにお金欲しければ
カラダ売ればいいのに
と思った

ユミちゃんはOLの副業で、ホテトル嬢をしてお金を稼いでいます。

一人暮らし生活はお金かかるんです。ペットのワニはいるし、部屋にピンクのバラは飾りたいし、アンアンのグラビアみたいな部屋で暮らしたいし、新作のジュンコシマダの服は欲しいし。

飼っているワニもなかなかハードですよ。コビトカイマンどころじゃない。後々には継母の策略によって鞄にされてしまう(泣)ことを考えると、かなりの大きさがあるイリエワニの可能性も。

室内飼いペットのイリエワニ!近所のババアん家のプードルなんてバリバリ噛み砕いちゃいますよ。おうちがスリルとサスペンス。

だって 私にはワニがいる
強くて冷たくて 何でも食べちゃう ちっちゃな恐竜

OL兼ホテトル嬢のユミちゃんと、その恋人(かつ継母の愛人)のハルヲくん、腹違いの妹のケイコは、諸般の事情からハルヲのアパートで生活をはじめます。あ、もちろんワニも一緒にね。

楽しい毎日を送っていたユミちゃんでしたが、ある日突然にワニが姿を消してから、ユミちゃんの“幸せな日常”が軋みだしていきます。

街中で突然「どうしてあたしはここにいるの?」「どうしてここに立っているの?」と“頭の中がクエスチョンマークだらけ”のパニックに陥るユミちゃん。

でもそれはワニが居なくなったことだけが原因ではないようです。その発作は過去にも経験し、既知の発作であるらしいので。

だれかあたしをたすけて

おねがいです

恋人のハルヲは、もしかしたらユミちゃんを助けてくれる存在になるかもしれませんでした。
自作の小説がいきなり桜桃賞を獲って、莫大な賞金と名声を得たハルヲは、ユミちゃんを東京というたいくつな街から南の島に連れ出してくれる救いの神、ヒーローに成り得た筈。

ですがハルヲは、南の島への出発直前。ホテトル嬢ユミちゃんとの同棲を記者に追及され、記者をブン殴ったあげくに、道路に飛び出して車にぶつかり、おそらくはそのまま死亡します。

「pink」のラストは、ケイコと一緒にハルヲを待つユミちゃんの姿。

ワニを南の島に連れていってあげられるし(鞄だけど)マニキュアもキレイに塗れてるし、恋人とのバカンスに胸焦がせて、素敵なワンピース姿でオスマシしているユミちゃん。

“最上の幸福がやって来るのを待つってこんな気持ちかな”

ユミちゃんは、いつまで空港で待ち続けるんだろう?

ユミちゃんに最上の幸福は、いつやって来るんだろう?

この「pink」が発表されたのが1989年。

「pink」を境にして、岡崎京子はサブカル系ガールズブラボーの世界から、クールで陰鬱?な岡崎ワールドの世界に移行していく訳なのですが。

それがたったの7年間で。

1996年の交通事故で、それが断ち切られてしまったのが、残念で残念でしょうがありません。
やっぱあれだね。『飲んだら乗るな、乗るなら飲むな』マジ。マジでよろしく。

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