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鳥居りんこ「偏差値30からの中学受験合格記」

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偏差値30から中学受験を決意した母と子が、念願かなって有名私立校に合格するまでの、涙あり笑いありのドタバタ奮戦体験記。中学受験のリアルなシミュレーションにも。HP「湘南オバさんクラブ」の人気コーナーを単行本化。
(「MARC」データベースより)

一点ご注意をば。

この本のタイトル「偏差値30からの…」には、若干のアオりが入っていることだけはお伝えしておきましょう。

確かにこの本に登場する受験生『たこ太』くんは、中学受験の大手塾“N研”に入塾した時の偏差値は30だったかもしれません。しかしながら、彼の入塾は小学5年生後半。一般的な入塾タイミングの小学4年生(正確には3年生の2月)から比べると、一年以上の遅れがあります。

一年も前からアイドリングしてる車と比べて、最初のラップタイムが遅いのは至極当然でしょ?

その後たこ太くんが6年生に上がる頃には、周回差をものともせず偏差値50前後まで伸ばしているんだから、むしろたこ太くんは優秀な部類に属するのではないかと。つまり、この本を『オツムの芳しくない子供が一発逆転で合格を勝ち取る』話として読むのは間違ってます。

これはごくごく一般的な、関東近県で中学受験をしたご家庭の一体験記であると。

ごく一般的な話だったら、あんまり面白くはないんじゃないの?

いやいや、イマドキの中学受験なるものは、それぞれのご家庭毎の大スペクタクルでございますことよ。

「こんな成績で受かるわけがないでしょう?」
「やる気あんの?」
「もういい。受験はやめ!」
これらは、みーんなりんこさんが実の息子に言い放った言葉のごくごく一部だ。もっともっと過激な「親が子どもをつぶしたいときに用いる言葉」のオンパレードであった。決して口に出してはいけない言葉も数々言った。
しかしもう、このレースに参加を決めて走り出しリタイヤする勇気がないなら、「この道しかない!」と信じて突き進もう。親は受験という名の新興宗教にハマってしまおう。

私 さくらは、この本を少なくとも3回は読み返しております。

最初は、娘がまだ小学3年生。中学受験が視野に入りはじめた頃。

中学受験の何たるかもわからぬままに、ドタバタ喜劇を観賞するかのように読んだ覚えがあります。

次に読んだのは娘が小学6年受験勉強まっさかり。

ドタバタ喜劇なんてとんでもない、これは正に我が家の悲喜劇そのものではありませんか。「組み分けテストで一喜一憂」「夏季購入の費用ハンパない」首がもげるほど頷ける箇所が多く。

そして今。娘は中学3年生。あの怒涛の中学受験から早三年が過ぎ、ちょっと遠い昔になりつつある今。

ああああ~、そうだったそうだった。あの嵐の日々が甦りつつ「あの時、この本のアドバイスを実践しておけば良かったなあ」と、今さらになって気付くこともあります。

この本を面白おかしい体験記として読むか、ここから何かを学び取ることができるか。中学受験生の母よ、君にはまだ出来ることがある。

中学受験に関する書籍やブログって、世の中に沢山あります。

でも、中でもこの「偏差値30からの中学受験合格記」は、面白さと読みやすさで言ったらダントツです。

発刊は2003年なので、既に10年前の話とも言えますが、大丈夫。いまでも中学受験の世界って殆ど変わってないよ。

2003年だろうと、娘が中学受験した2014年だろうと、現在佳境に入ってる2017年受験予定のご家庭だろうと、多分、同じ。どこの家庭でも「子供のやる気が出な」くて「成績下がって母がブチ切れ」て、同じようにジタバタして泣いて笑ってそりゃもう大騒ぎさ!なんです。

なーのーでー。

いま正に!入試まで50日を切った受験生の母よ。そして現在小学4年生、5年生の子を持つ母よ。

読んどけ。これ読んどけ。子供が塾に行って暇な時間に読んどけ。

面白いし、笑っちゃうし、なんか共感しちゃうし、実はこの本に書いてあるアドバイス、結構役に立つ。

ゆえにりんこは毎回、逆指名をかける。どーせなら「イケメン」のが絶対いい!
「室長先生の面談でお願いします!」
たとえ、たこ太のクラス担当の先生が電話口に出ようとも、りんこはひるまない。今や国際社会とオバサン界では自己主張をした者勝ちなのだ。

著者りんこさんは、受験のプロとか教育者ではない“普通の母”なので、目線が塾講師とかのプロ側ではなく、私たち同様の、いわゆる普通の家庭の一般目線です。

だからねえ、家庭の主婦としては気になるお財布問題も当然書かれる訳ですよ。

出願料は2万前後が中心であろうか。1万5千円のとこもあるし3万円のとこもあるし、半端な2万1千円なんてとこもある。複数回受験とかでも微妙に変わってくる。入試日以降の夫婦の連携プレーは十何年ぶりかの夫婦の呼吸がモノを言う。
なぜなら「無駄な金は、一銭もない!!」からだ。

しかしながら著者りんこさん。さすが堂々とオバチャンを自称するだけあってパワフルです。この行動力は見習うべきであった。

…って母。あなた、そんな暇があったら個別説明会の列に即行、並びましょう。
「でも、あたしィ。何、聞いていいかわかんないし~」
ですから、先生と名の付く人の前に出ると上がってしまう「ウ・ブ・な・私」というあなたは、あらかじめ質問表を作成していなくてはなりません。何故なら、あなたは忘れっぽいからです。—(中略)—そこが面接のない学校ならば(面が割れる心配がないので)思い切って突っ込みましょう。なーに、一期一会。こういうときに使う言葉です。

りんこ、説明会で仲良さそうにしている全く知らない母たちを見ても心がざわめく。彼女たちが羨ましくなかったと言ったらウソになる。孤独だった。誰かに聞いてもらいたかった。
でも、りんこは、あえて「孤独」をオススメしよう。

ともかく「過去問は神の使い」である。決して、粗末にしてはならない。
りんこは、回る学校、回る学校、すべての先生に質問した。
「過去問ってどうよ?」
先生方の意見は次の2点に絞られる。
「あっしらは神さまではない!」「あっしらは、公立のように転勤がない!」
その心は?

まあね、でもね、別にこの本を“役に立てなくたって”かまやしません。読むだけでも面白いし。

読んでいるうちに、中学受験を経た家庭の母としては、まるで著者りんこさんが戦友のように思えてくる訳ですよ。

そして、同じように中学受験生を抱える母に対して、古兵からエールを送りたくなる気分になる訳ですよ。

もうすぐ年末。中学受験の入試が開始される2月1日(東京都の場合)まで、あと一月半。

ほんと、マジ、受験生も母も、それから父も兄弟も、これから本格的に怒涛の日々がはじまるから。ほんとマジ頑張れ。

全ての子供たちと全ての親が最後に笑えるようにエールを送ろう。ファイト!

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