記事内に広告が含まれています

桐野夏生「奴隷小説」

スポンサーリンク
スポンサーリンク

世界は野蛮で残酷な牢獄に満ちている―。その「虜囚たち」の姿を容赦なく描いた、超異色短編集。
(「BOOK」データベースより)

あなたと 逢ったその日から 恋の奴隷になりましたぁ~♪
Song by 奥村チヨ!

 

さて、この「奴隷小説」は、様々な状況で囚われ虐げられている“奴隷”について描いた短編集です。
 

どこにも逃げられないよ
(文藝春秋「奴隷小説」帯文)

 

帯に書かれた文藝春秋のPOPの通り、読後感はひっじょーーーに悪いです。
栄えある「登場人物に冷たい作者No.1inNIPPON」の座を、乃南アサから桐野夏生に挿げ替えようかと思えるくらい、物語ごとの登場人物に容赦なし。
 

日本には奴隷制度は無い筈ですが、どっこいこの本の中にも“日本の奴隷”は出てきます。
それは「神様男」に出てくる地下アイドルと、そのファン。

地下アイドルとは
比較的小規模なライブを中心に活動しているアイドルのこと。別名、ライブアイドル、インディーズアイドル、リアル系アイドル。ライブ会場でのグッズ販売などにより十分な収入をあげることができ、地下アイドルだけを多数擁している芸能事務所もある。1990年代に、バラエティ番組への出演など歌手以外の活動を嫌い地道にライブ公演し始めた宍戸留美らが地下アイドルの元祖とされている。2013年現在では女性アイドルの1ジャンルとして確立しており、差別的意味合いを感じさせる「地下アイドル」ではなく「ライブアイドル」と呼ばれることも多くなってきている。メディアに露出することはほとんどない。
(コトバンクより)

AKB48も昔は地下アイドルのひとつでしたが、今じゃすっかり国民的アイドルへ。地下から昇ってスカイツリー展望台。
でも、世の中にはAKBの何倍も何十倍もの人数の地下アイドルがいるようで。
何年か前でしたが、テレビで『アキバ系地下アイドル大集合☆』みたいなライブイベントの中継番組がありました。
人数さまざま、容姿レベルもさまざまの地下アイドルグループが歌い踊り、各々のファンがオタ芸により舞台を盛り上げるのをただひたすらに中継するという、思い出すだに おぞましい スゴい番組でした。
しかし日曜の午後に家族全員で3~4時間も番組を観続ける さくら家もどうよ。何やってたんだ我が家は。
 

「神様男」の中で、握手会に来た男は言います。

『きみたちは夢の奴隷なんだから、僕たち神様が解放してあげるんだよ』

地下アイドルは“成功”という夢に捕らえられた奴隷。
でも、それを解放してくれる筈の神様(ファン)も、偶像崇拝に従属する奴隷なのです。

神様(ファン)がいなければ、偶像(アイドル)は解放されない。
偶像(アイドル)がいなければ、神様(ファン)は充足されない。

お互いがお互いを搦めているから、その縄が切れない限り、双方とも解放されることはないのだろうなあ。
成功しても、しなくても。
 

恋の奴隷と偶像の、手枷が消えるのは、いつだ?

タイトルとURLをコピーしました