ニューヨーク・アート・シーンに忽然と出現し、漆黒のダンディズムをまき散らして逝ったロバート・メイプルソープ。その冷徹なカメラアイに捉えられた『美しきものたち』の肖像。
(「BOOK」データベースより)
嫁して16年余り。
実家に残しておいた書籍を、いいかげん処分しやがれという家族の要請(叱責)により、現在の自宅にまとめて持ってきた私です。
本棚の余剰はもうありません。
配送された段ボール箱の中の本を、これからいかにして収納すべきか、ちょっと途方にくれているさくらであります。
しかし久方ぶりに見る本は「こんな本持ってたっけ?」「おお懐かしい、好きだったなあ」と、一冊ずつ手にとっては思い出の小道を散歩する始末。
ついつい読み始めてしまって、本棚の整理は全く進まない。
一体いつになったら、私の部屋のダンボール箱が片付くのか…ちょっと途方にくれているさくらです。
「メイプルソープと美神たち」も、実家から持ってきた本の中の一冊です。
ロバート・メイプルソープ。1970~1980年代のNYアートの代表格。
『花を撮るように性器を撮り、性器を撮るように花を撮る』と称され、作品の一部は猥褻図画とみなされ一時期は輸入禁制品とされて物議をかもした、まあ、今に例えたらろくでなし子みたいな人ですわ(異論あり)
わいせつか、芸術か。二十世紀においても二十一世紀においても終わりなき大論争。
難しい議論はお偉いさんにまかせて、ただ美しいものを美しいなと思えば。
ため息が出るほど、うっつくしいよお?
ひとつご注意をば。
上記アマゾンのリンクでは、この写真集の著者名はメイプルソープではなく“ジョーン・ディディオン”さんと記載されています。
ディディオンさんはこの写真集の巻頭文を書いた人。
えー、でもさあ、メイプルソープの写真なんだから、メイプルソープの写真集だよねえ?!
という理由につき、当ブログのタイトルではアマゾンと違い『ロバート・メイプルソープ「メイプルソープと美神たち」』としております。何卒ご了承のほどを。
さて。
「メイプルソープと美神たち」は、メイプルソープの女性ポートレイトを集めた写真集です。
この本が発刊された時には、既にメイプルソープ自身はエイズで亡くなってます。享年42歳。
今だったらHIVウィルスに感染しても、かなりな確立でエイズ発症を防ぐことが出来るようになりましたし、エイズを発症しても薬剤カクテルの効果で、既に「エイズ=死の病」ではなくなっています。
でも、メイプルソープが亡くなったのが1989年。エイズがアメリカで確認されてからたった7年、HIVウィルスが発見されてからたった5年しかたってない。
ニューヨークアートの最先端は、エイズ流行の最先端でもあると。やるな、メイプルソープ。
写真集「メイプルソープと美神たち」に話を戻しますが、実際の写真は著作権云々の関係上ご紹介できないのが口惜しい。
久しく絶版だから、上記アマゾンのリンクでも画像イメージが表示されない。しくしく。
あ、興味のある方は上記リンクをクリックすると、ユーザーの投稿写真で表紙の写真だけ見る事ができます。いやマジ美しいにもほどがあるから是非チェックを!
被写体の女性たちは、子供もいれば老婆もいる、白人黒人東洋人、着衣もあればヘアヌードも有。
日本人の読者としては、オノ・ヨーコとかブルック・シールズとか、シンディ・ローパーとかがお馴染みでしょうか。
メイプルソープの元恋人パティ・スミスの姿も、彼が亡くなる1年前に撮った写真が収められています。
いずれも、とても、美しい。
私の貧弱な語彙では表現できないのが口惜しい。
そこで、前述のジョーン・ディディオンさんの巻頭文を一部引用。
彼の特質は、初めから、新しいことがらよりはむしろ古いものに向けられる「ショック」、既成の道徳観念への「ショック」であった。彼の作品は、つねにある種の緊張感をはらみ、光と闇のあいだに生じる葛藤さえ感じさせる。無力であることを賛美しているかのようでもある。そして、死の誘惑、十字架上の磔刑の幻想がつきまとう。
ですが、美しいものを美しいと思うに、本当は解説なんて必要ないんです。
緊張感も、葛藤も、幻想も死の誘惑も、なにも考えなくても、ただ美しいものを美しいなと思えば。
ちょっとロバート・メイプルソープの写真を見てごらん。
ため息が出るほど、うっつくしいよお?