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ジェイムズ・ヤッフェ「ママは何でも知っている」

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毎週金曜の夜、刑事のデイビッドは妻を連れ、ブロンクスの実家へママを訪れる。ディナーの席でいつもママが聞きたがるのは捜査中の殺人事件の話。ママは“簡単な質問”をいくつかするだけで、何週間も警察を悩ませている事件をいともたやすく解決してしまう。用いるのは世間一般の常識、人間心理を見抜く目、豊富な人生経験のみ。安楽椅子探偵ものの最高峰と称される“ブロンクスのママ”シリーズ、傑作短篇8篇を収録。
(「BOOK」データベースより)

安楽椅子探偵というミステリのジャンルがありますね

クリスティならばマープルおばさん、黒後家蜘蛛の会ならばヘンリー(超好き!)、最近の本では『失礼ながら、お嬢様は馬鹿でございますか?』の影山など。

安楽椅子探偵をご存じない御仁にご説明。

安楽椅子探偵とは、自分が実際に現場に赴く事なく、人の話を聞くだけの数少ない情報により事件を推理する探偵役のことです。またの名をアームチェア・ディテクディブ。

本当に安楽椅子に座ったままではない人も大勢います。例えばヘンリーはレストランの給仕なので、安楽椅子探偵というより立ちっぱなし探偵。

さてブロンクスのママ。お手製ローストチキンがお得意の、ニューヨークに住むユダヤ系の未亡人。

息子はニューヨーク市警の刑事。敏腕刑事との噂がありますが、その手腕はもっぱら「ママ」の推理を所以とするものです。

ママの推理の元となるのは、

ごまかしの上手な肉屋や食料品屋の店員を相手にしてきた長年の経験のたまもの

彼女の眼をもってすれば、刑事稼業なんてものはおちゃのこさいさい。殺人事件の捜査なんては児戯にひとしい朝飯前なのです。

週に一度、ブロンクスのアパートでの夕食会で、ママは息子の話を聞きながら、2、3の筋違い(と思われる)質問をして、あっという間に事件の道筋をたててしまう。

そして息子はニューヨーク市警で評判を上げ、出世街道ひた走りめでたしめでたし。

・・・という話ではありますが。

・・・私、このママの嫁になるの無理!無理っす!

まず毎週金曜日ごとに、旦那の実家に夕飯食べに行くのがお決まりって前提ってどーよ。花金(古い)なんだからゆっくりさせてよ。

しかもこのママ、性格がきっついきっつい。

嫁に対しても辛らつ極まりなく、トメトメしさ全開です。

まあ、嫁側もかなり気が強い性格なので、毎週金曜日に勃発する嫁姑戦争へも勇んじて応戦。
ニューヨークでも日本でも、数々の家庭で繰り広げられているであろうヨメVSトメバトル。
ああ、息子の頼りなさたるや如何に。

「ママは何でも知っている」に関して言えば、この小説はミステリとして謎解きを楽しむと同時に、ママの辛らつな物言いや、嫁姑バトルの模様を覗き見るのも楽しみの内です。

よって、いま現在、嫁姑バトルに悩まされている方は、読むのを止めておいた方が精神的にもよろしいのではないかと老婆心ながら申し上げます。リアル嫁立場の人が読んだらムッキー!と本を窓から放り出す危険性もあるのでね。要注意ね。

あっ!これを読んで『オレん家は嫁と母さんが仲良いから心配ないね~』なーんて他人事みたいに考えている旦那さん諸君!

他人事と思っているのはキミだけかもしれんよ旦那さん諸君。

嘘だと思ったら自分の嫁に「ママは何でも知っている」を与えてみたまえ。

窓の外に本が落ちていたら、要注意だ。

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