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ジーン・ウェブスター「あしながおじさん」

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お茶目で愛すべき孤児ジルーシャに突然すてきな幸福が訪れた。月に一回、学生生活を書き送る約束で、彼女を大学に入れてくれるという親切な紳士が現われたのだ。彼女はその好意にこたえて、名を明かさないその紳士を“あしながおじさん”と名づけ、日常の出来事をユーモアあふれる挿絵入りの手紙にして送りつづけるが……このあしながおじさんの正体は? 楽しい長編小説。
(Amazon.co.jpより)

 

誤解を恐れず、大きな声で言おう。
あしながおじさんは、エロい。

「あしながおじさん」を児童文学のカテゴリに入れてしまうのは、私にとってお茶の間ドラマで突然セックスシーンが始まってしまった時と同様の気恥ずかしさを感じます。
あーあーこんなの子供に見せちゃ駄目~ダメダメよぉ~!
R18指定とまでは言いませんが、PG12くらいの指定はして頂いてもバチはあたらないと思うの。
 

そもそもですね。「あしながおじさん」を『子供を学校に通わせてあげる篤志家の話』として考えてはいけないのです。
だって主人公のジュディ(ジェルーシャ改め)の年齢は、物語の開始当初が18歳から大学卒業する21歳まで。
対する“あしながおじさま”は、32歳からはじまり36歳。
 

三十路男が18歳の娘に金銭的援助するって、ちょいと色々不埒な妄想が沸きませんこと?

彼はやせて背が高く、しわっぽい、浅黒い顔で、とても奇妙な、ひそやかな笑顔をなさるんです。口の両すみにちょっとしわをよせるだけで、顔全体はすこしも笑っていないというような。それでいて、お会いする早々、なんだかずっと前から知っていた人のような気持ちにさせられる様子があります。とても親近感のあるかたなんですの。

“あしながおじさま”の正体を知らないジュディはともかく、男の方は下心バリバリです。
同室の友人の叔父さん“ジャーヴィ坊ちゃま”としてしれっと現れ、素性を隠してジュディに近付きます。
大学に入りたての世知を知らない18の小娘が、金持ちで世慣れた三十路男に優しくされたら、コロッといっちゃっうのも無理はないではありませんか。

あのかたがお帰りになってしまったのでとても寂しいんです!親しみなれた人々とか、場所とか、生活様式とかが、突然奪い去られたあとに残るものは、胸にくい入るようなおそろしい空虚さです。ミセス・センプルの話すことが、いかにも味のない食べものの感じですの。

ジャーヴィ坊ちゃまは女子大学にせっせと通ってジュディと交流し、自宅に帰った後で、彼女が書いた手紙に描かれている自分自身に関する記述を読む。
お屋敷の一室でニヤニヤしているあしながおじさんが目に浮かびます。やーらしいなぁ、おい!
 

なおかつジャーヴィ坊ちゃまは、自分の欲のためには手段を選びません。
ジュディが他の男と仲良くなりそうになると知るや、彼が同行する夏休みの休暇旅行への禁止令を発布し、また別の夏には財力に物を言わせてヨーロッパへ放り込んで二人キャッキャウフフの夏を画策します。
影ながら、娘の成長をそっと見守る匿名のあしながおじさん…どころの騒ぎじゃない。デートDVのだめンズ彼氏のように干渉しまくりっすよ旦那。

なんて茶々を入れながらも、読みながら私 さくらの乙女心はきゅんきゅん花盛りです。46歳乙女を痛いって言うな。
「あしながおじさん」のクライマックスでは、大学を卒業した21歳のジュディに36歳ジャーヴィ坊ちゃまがプロポーズをし、その求婚を断った顛末をジュディが“あしながおじさま”宛てにしたためます。
自分が孤児であり、年配(と思っている)の篤志家から作家修行のために教育された恩義もあり、上流階級である彼との結婚に相応しくない身の上であるとどうしても打ち明けることができないと。

それからあのひとは——ああ、そうですわ。あのかたはああいうかた。もうどう言っていいかわかりません。彼がいないと、わたしはただ寂しくて、寂しくて、寂しくて。世の中全体が空虚で苦悶しているようです。月の輝きが憎らしいですわ。なぜといって、その美しさをいっしょにながめる彼がわたしのそばにいないからです。でも、あなたもきっとだれかを愛されたでしょうから、こんな気持ちはわかってくださいますわね?
—(中略)—
わたしが彼に会って、理由はジミイにあるのでなく、ジョン・グリア・ホームだと説明するのはどうでしょうか?——そうするのはわたしとしてはおそるべきことでしょうか?それはとても勇気のいることにちがいはありません。この先の生涯をかなりみじめにしてしまうとは思いますけれど。—(中略)—おじさまは、わたしがどうするのがいちばんいいとお思いになるでしょうか?

こんな手紙を当の本人が読んでいるなんて考えたら、まったくもう有川浩も裸足で逃げ出すきゅんきゅん大量産体制じゃありませんか!
引用文を入力しているだけで鼻血が吹きそうになる、変態を通り越してど変態だ。
 

まあ、最後にはですね。
ジャーヴィ坊ちゃまは自分が“あしながおじさん”であるとジュディに明かして、めでたく二人は結ばれるのですけど。
どちらかというと最後の顛末より、それ以前の状態の方がエロい。
 

もしね、いまこのブログをお読みの方で、児童文学の対象年齢の娘さんがいるお母様がいらしたら。
是非とも一家に一冊、子供に読ませるフリして本棚に忍ばせておくのが宜しいことよ。
日常生活できゅん成分が薄れたら、「あしながおじさん」読んできゅんきゅん補給して、お肌に潤いを取り戻すのよ。
でも当の娘には読ませちゃ駄目よ。エロいから。

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