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モンゴメリ「アンをめぐる人々」

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シンシア叔母さんお気にいりのペルシャ猫は、いったいどこへ消えたのか?どうしても父親を結婚式に招待したかったレイチェルの作戦は?崇拝者を持ったことがないとは言えなかったばかりに、シャーロットが立ちいたった珍事態―平和に見えるアヴォンリーでも、人々は何かしら事件をかかえている。深い人間愛と豊かなユーモア、確かな洞察力で描かれた、アンをめぐる人々の生活。
(新潮社 書籍詳細より)

新型コロナでマジ大変なご時勢ですが、皆様ステイホームにいそしんでらっしゃいますでしょうか。

私 さくらも仕事が在宅ワークとなり、絶賛引きこもり中です。

元々インドア気質な私としては引きこもりニートもむしろ歓迎…とも思っていましたが、いやあ、予想以上にストレスって溜まるもんですね。3食たべる日本の食生活が憎い…1本のフランスパンを朝昼晩に分けてかじるような食生活がしたい…。

愚痴はともかく。ストレス解消にはやっぱり読書でしょう!

私の愛する図書館も現在は閉まっているため、読もうと思って図書館で予約待ちしていた宮部みゆき本「さよならの儀式」をアマゾンポチっとな。

—で、どうして今日のブログが「さよならの儀式」じゃないのかって?

あんな、宮部本はな、気持ちがブルーになってるときにゃ、読んじゃいけねーよ。
基本あのヒト社会派だからな。この無常なご時勢に世の無常を読まされると(いや無理矢理読まされたわけじゃないけど)ブルーな気持ちが益々ブルー。限りなく透明に近いブルーになってしまうのです。

ごめん、みゆき。君のせいじゃない。君が悪いわけじゃない。
図書館から借りようと思って300人以上の予約(すごいね!)をのんびり待っていたボクが悪いんだ。
悪いタイミングで出会ってしまったのが悪いんだ。すまんな、みゆき。

さて。

問題は私の心の復権ですよ。

さらに初見本にチャレンジして、再び精神的にクる本を読んでしまったら、ちょっと立ち直れるにはダメージでかすぎる。

ここは古くからの既所有本で心の安らぎを得る必要があります。100%安心できて、読んでも心をゆるがせない、安定本で心のリハビリ。

—-と言ったらやっぱり、赤毛のアンシリーズ、これに決まりでしょう。

「アンをめぐる人々」は『赤毛のアン』シリーズ第8巻。主人公はアンではなく、アンの故郷アヴォンリーで暮らす市井の方々を描いた短編集です。

これがねぇ~いいのよぉ~。「赤毛のアンシリーズはアンが大人になってからが真骨頂」と思う私としては、大人アンが直面するようなアレコレのようなアヴォンリーの皆様方のあれやこれや(主に恋愛沙汰)に、まーキュンキュンしますわ。エストロゲン出まくりでお肌プルプルになりますわ。

「ベティ!」私は声も切れ切れに言った。
「私は年をとっている—-君にはあまりに年を取りすぎている—-ベティより二十年以上も年上なのだよ—-私は—-」
「おお!」ベティはさっと私の方に向き直ると足を踏み鳴らした。「二度とあたしに年のことなんかおっしゃらないでちょうだい。たとえ、あなたがメトセラほどの年寄りであとうと、あたし、かまわないわ。でも、無理にあたしと結婚してくださらなくてけっこうですよ!おいやなら、あたしはだれとも結婚しませんから—-オールド・ミスとして一生を終わりますからね。もちろん、それでご満足でしょうよ!」
ベティは泣き笑いをしながら立ち去ろうとしたが、私は彼女を腕に抱きしめ、美しい唇を私の唇に押し当てた。

(『ベティの教育』より引用)

もう、とってもとってもメロメロメロドラマチックでしょ?

いやーたまらんですわー。お肌プルップルですわー。

しかしですね。「アンをめぐる人々」の中で一番好きなのは、上記じゃなくって『偶然の一致』です。

「おお、ホームズさん、もうあの方にお会いになって?」
と、叫んだ。
「だれに?」
私は興奮の色もなく問い返し、指貫と型紙を取出した。
「あら、セシル・フェンウィックさんよ。あの人きてるのよ—-アヴォンリーに—-お姉さんのマクスウェルさんを訪ねて」
私は一同が期待したとおりのことをやったようだ。手に持ったものを全部とり落とし、ジョセフィン・カメロンがあとになって言ったが、シャーロット・ホームズはお棺に横たわったときでもあれほど真っ青にはなるまいというほど青ざめた。私がそんなに青くなった理由を人々が知ったとしたら、どうだろう!
「そんなことはありえないわ!」
私は茫然とした。

(『偶然の一致』より引用)

短編『偶然の一致』の主人公シャーロット・ホームズさん(まあ名探偵のような名前ですこと)は40になっても結婚していないオールド・ミス。一度たりとも崇拝者(恋人ですね)がいたこともなく、そのためにアヴォンリーでもちょっとはぐれ者扱いをされていました。

たとえ結婚してないにしても、過去には恋愛のひとつやふたつ…ねえ?ってなもんで。

シャーロットさん、それがどうにも辛くて、ある日“お針の会”でちょっとした嘘をついてしまったのです。

18歳のときにニュー・ブランズウィックのブレイクリー(過去1度しかアヴォンリーを離れたことがない)で出会った5歳年上の弁護士(兄が弁護士だった)、セシル・フェンウィックと恋に落ち(新聞にフェンウィック製の漆喰広告が載っていた)、くだらない喧嘩の果てに彼が西部に行ってしまったので、それっきり。

彼が今なにしてるのかもわからないし、生きてるかどうかもわからないが、その後どうしても他の人を愛することはできなかった。

—-だってさ。

まあ、気持ちがわからんでもない。山本周五郎ちゃんの作品にも似たような嘘をついてしまう女性がいましたよ。題名忘れちゃいましたけど。

いもしないセシル・フェンウィックとの恋の顛末を打ち明けたおかげで、その後のシャーロットさんは毎日が明るくなりました。若いお嬢さん方(ここらへんにアンがおります)はシャーロットさんに秘密の恋を打ち明け、いわば心の友に。彼女自身も、いもしないセシル・フェンウィックがまるで本当に過去の恋人のように思われ、夜中にそっと彼を想う詩を綴ったりして。

しかしながら。

天網恢恢疎にして漏らさず。もしくは信賞必罰。

悪いことすれば、その後むくいが来るってもんであります。

「お嬢さんにお目にかかりたいと言いなすって男の方が客間にいらっしゃいます」
私の胸はどきっとした。
「どんな—-どんな男の方、ナンシー?」私は声を震わせてきいた。
「あれがきっと、ここにしばらくいるフェンウィックさんというお人じゃないかと思いますね」ナンシーは私の空想がもたらした途方もないことのてんまつを少しも知らなかった。
「なんだか、おそろしく怒ってなさるようすで、わたしゃ、あんなしかめ面は見たことがありませんよ」

で—-まあ—-どうなったか、というのは省略しますけどね。

だーいじょうぶ。心配しないで。今、私たちが求めているのは心の安らぎだから。それに値することは保証するから。

今の世の中大変だから、読書に求めるのは100%の安心感と、リラックスと、娯楽。
ついでにエストロゲン分泌させて、ステイホームでお肌プルプルにしようじゃないか。

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