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五十嵐貴久「能面鬼」

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一周忌の案内状は、地獄への招待だった……
私立の名門大学のサークル「ヒートウェーブ」の新歓コンパで悲劇が起きる。
無理矢理飲まされ続けていた新入生の諸井保が、急性アルコール中毒で死亡してしまった。
これからのキャリアを考えたメンバー達は、保身のために死因を偽装する。
事件の記憶が薄れかけた一年後、案内状が届く。
保の実家である寺で、一周忌法要を行うというのだ。
罪悪感に苛まれていたメンバーは、けじめをつけるため出席することにした。
そこに地獄が待っているとは知らずに……
(実業之日本社「能面鬼」内容紹介より)


五十嵐貴久はサービス精神旺盛な作家だということを、私たちは知っている。

たとえどんな売らんかな精神でチョイスした題材であっても、モリモリにネタを盛り込んで、十分に読者を楽しませてくれることを私たちは知っている。

…どうして五十嵐貴久の小説を読むときの前提条件を最初に申し上げたのかと言いますと、この小説「能面鬼」の筋立てがアルアル設定だからです。

どういう設定なのかは冒頭の内容紹介を読んで頂ければわかりますが、簡単に言えば綾辻行人の「十角館の殺人」もしくは「そして誰もいなくなった」とほぼ同様。あーもしくは「13日の金曜日」でもいいや。

復讐のために複数人をひとっところに集めて次々と殺人…ってストーリー自体は、小説でも映画でも漫画でも、探せばそこそこ見つかります。

では、五十嵐貴久はそんな手垢のついたシチュエーションを、どうエンターテインメント性豊かに仕上げて読者を快楽に導くのか。

それこそが興味深いところ。

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前回のリカちゃんシリーズ「リフレイン」で、五十嵐貴久さんは物量勝負のワザを覚えてしまいました。

いや今回も殺す殺す殺しまくるよ。さすがにリフレインの135名には負けますが、今回殺すのは33人。「能面鬼」はリアルで過去に起こった“津山事件”(八つ墓村のモデル事件ですね)をモチーフにしているんですよ。

津山事件で殺害した人数は30人ですが、五十嵐さんったらサービスでプラス3人、33人を殺しています。そんな所までサービスしなくていいと思います。

ですが復讐されるべきサークル部員は8名しかおりませんので、残り25人は誰を殺すか、それも問題です。

あおりをくらってついでに殺されちゃった人物としてかなり可哀そうなのが、コンパで死亡した保の中学時代の同級生4名。殺された理由は葬式にこなかったから。えーひどくなーい?それで殺されちゃうのー?

本当に彼らは数合わせのために殺されたような存在で、彼らが恨むべきは保の祖父か、それとも五十嵐貴久か。

それ以外にもまだ20名以上殺さなければならないので、誰を殺すか(殺されるか)悩む…

恐ろしい話じゃ、と将弦がつぶやいた。
「三十三人が死んだ。その意味がわかるか?」
都川群都実が殺した者の数と同じです、と大河原がうなづいた。祟りはまだこの村に残っておる。と将弦が言った。

ちょっと待って将弦さん。あなたあの時、あのお寺に居なかったでしょう?どうして33人死んだってわかるの?

最終的にどこの誰がどの順番で死んだのか、2回読み返してもまだわからない。誰か「能面鬼」で明確な人数がわかる記述があったら教えて頂ければ幸い。

しかしまぁ、半日も経たないうちに33人順番に殺さなきゃいけないんだから、鬼も将弦さんも五十嵐貴久も大忙しで大変ですよ。

ハイスピード勝負の中でも、五十嵐さんは読者の皆様により一層楽しんで頂けるように、殺し方もそれなりのバリエーションでお楽しみ頂けます。

一番のヒットはね、性交中の男の首を日本刀で一瞬にしてバッサリと切り落として、下でアンアン言っている女の上に生首を落としてるシーンよ。いや凄くないこれ!?素晴らしく切れ味の良い日本刀。かつ性交中(ちなみに正常位)男なんて、なかなか目標を定めるのも難しいだろうに。石川五右衛門もびっくりよ。

と、いうわけで。

どんな手垢のついた題材であっても、グリングリンにネタ盛り込んで、これでもかというくらい読者を楽しませるのが五十嵐貴久であります。

私たちはそれを知っている。

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