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高田郁「小夜しぐれ-みをつくし料理帖」

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季節が春から夏へと移ろい始める卯月のある日。日本橋伊勢屋の美緒がつる家を訪れ、澪の顔を見るなり泣き始めた。美緒の話によると、伊勢屋の主・九兵衛が美緒に婿をとらせるために縁談を進めているというのだ。それは、美緒が恋心を寄せる医師、源斉との縁談ではないらしい。果たして、美緒の縁談の相手とは!?―(第三話『小夜しぐれ』)。表題作の他、つる家の主・種市と亡き娘おつるの過去が明かされる『迷い蟹』、『夢宵桜』、『嘉祥』の全四話を収録。恋の行方も大きな展開を見せる、書き下ろし大好評シリーズ第五弾。
(「BOOK」データベースより)

久しぶりに高田郁の「みをつくし料理帖」シリーズ5冊目です。

前作「今朝の春」では幼友達の野江ちゃん(源氏名あさひ太夫)が吉原から身請けされるには一万二千両、現在の価値に換算して20億円が必要だということがわかりました。

ほぼ無理ゲー!確実に無理ゲー!ちっこい料理屋の雇われ料理人である澪ちゃんには調達するなどまるっきり不可能な金額です。

しかし、それが可能なのではないかという一案が今回出てまいりました。

すげーな、20億稼ぐ方法があるんだったら私だって知りたいわ。

さてそれは何かと言いますと、吉原のお座敷に提供する仕出し料理を作るお仕事です。

野江のいる扇屋が契約している仕出し料理屋では、一人前料理の相場が金一分だそうで。

金一分って何?それいくらよ?と思いますよねそうですよね。調べてみたところ、一部金が4枚で一両になるそうです。金一分はつまり0.25両ですね。

前作と同じ計算で考えますと、一両は17万円。

17×0.25=4.25。つまり金一分は42,500円。料理一人前42,500円ってのも凄いですな。澪ちゃんが腰を抜かすものもわからないでもありません。

まあ御成門にあるステーキ屋さん麤皮(あらがわ) では相場が一人10万円だそうですから、それに比べりゃ安いのかな。

この本の中で澪がスポットで作ったのは11人前。本来は4.25×11で467,500円の報酬の筈ですが、扇屋の伝左衛門さんは澪に小判5枚渡してます。

小判5枚ってのはつまり5両。およそ85万円。相場よりもほぼ倍額!伝左衛門さん太っ腹!

1日で85万もらえればね~。どんなに材料に贅を尽くしたにしても、かなりの儲けになることは間違いありません。

伝左衛門さん曰く、澪がこの先つる屋を辞めて吉原専属の仕出し料理屋になれば、いつかは野江ちゃんの身請け代に達するのではないかと。

「時に遊女の揚げ代よりも台の料理の方が高い、という廓の不思議。お前さんほどの腕があれば、年に八百、否、千両稼ぐことも夢ではあるまい。遣り方次第ではもっと稼げるかもしれぬ」

しかしまあ、そうは言っても必要なのは20億ですよ20億

必要経費もありましょうから、1日あたり仮に50万円の利益が出たと計算しましょう。

20億÷50万=4000日。年中無休で仕出し料理を作り続けたとして、4000÷365=10.958…

20億貯まるにはおよそ11年かかる計算になります。

ちょっと待って。11年も経ったら、もうとっくのとうに野江ちゃんの年季は明けてるんじゃないか?

前回のブログで説明したように、野江ちゃんは現在3人の旦那衆の専属となっていて、年季が明けたらいずれかの旦那の本妻もしくは愛人の座に収まることが決定されているのです。

澪ちゃーん!間に合わないよー!

11年もかけていられないよ-!花の命は短いんだから。

吉原の仕出し料理屋案もなかなかGoodではありましたが、時間制限のある中で澪が野江を苦界から救い出すのには、あとふたつみっつ高田郁のスパイラルな技が必要なようです。

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さて今回「小夜しぐれ」では大きな動きがありました。

澪と読み方が同じな、伊勢屋のお嬢様の美緒ちゃん。彼女は町医者の源斉先生に憧れて、いつか先生の嫁になりたいと切望していましたが、伊勢屋の婿取り話が持ち上がったのです。

源斉先生ね~。私は、美緒でなく澪と出来上がるもんだとばかり思っていたんですよ。しかしながら澪ときたら源斉先生ではなくショボクレオヤジの小松原さまなんぞにコロツといきやがって。

どっからどう見ても小松原さまより源斉先生の方が良いわよね!美緒もそう思うし、私もそう思います。

そんでまあ美緒ちゃんとしても、いくらお家のためとは言え好きでもない男と結婚なんかできないわ、と、家出してつる屋に飛び込んできたりして、なんだかんだと騒動が沸き起こります。

「美緒さん、本当に良いの?悔いはないの?」
腕を掴まれたまま、美緒はじっと澪を見つめた。その瞳がじわじわと潤み始める。あなたを、と美緒は低い声を絞り出した。
「あなたを嫌いになれれば良いのに。心から憎めれば良いのに」
くっと涙を堪えて、美緒は静かに澪の腕を外した。

私は天衣無縫なお嬢様の美緒ちゃんが結構好きなので「小夜しぐれ」の中では美緒ちゃん主役の表題作が好きであります。

で、上記の美緒のセリフの意味と、美緒が結局どうなったか、どのような結論をくだしたのかについては伏せますが。てか本を手に取って表題作の副題を見ればわかる。気になる人は本を手に取ってみてください。買わなくても良いから(いやもちろん買っても良いけど)

とりあえずはジジイ好みの澪よりもはるかに男性の趣味がまともな美緒ちゃんに、末永き幸あれと願わずにはいられません。

だってよう…澪の男の趣味はなんだかなぁ…本当に良いの?って聞きたいのはこっちだよ澪ちゃん。だって小松原さま、ジジイだぜ?

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