公務員、税理士、部長・課長、タクシー運転手、専業主婦…善良な人が罪を犯し、まさかの転落した切ない実話33。人には誰にも「別の顔」がある。
(「BOOK」データベースより)
いま麻薬取締法違反の罪に問われている沢尻エリカの公判に関する新聞記事を読んでいたら、法廷で職業を聞かれ「無職です」と答えた、と書かれていました。
わざわざ無職、かつ女優復帰の気持ちがないと被告人質問で答えている旨も書かれていて、沢尻エリカの顔が好きな私としては悲しいですよ。あの顔。あの顔がもう見られないなんて。
しかし沢尻エリカに限らず、裁判になるような事件では被告人が「無職」である率が高し(らしい)。これは全員が全員もともと無職だった訳ではなく、逮捕されて会社をクビになったために、裁判時の職業は無職になる(人もいる)ってこと。
つまり、ある日突然に私もあなたも、無職になる可能性があるってわけ。
裁判所では今日も、たくさんの事件が裁かれている。健全なビジネスマン生活を営む人にしてみたら、別世界の出来事のように感じられるかもしれない。でも、被告人席に座る彼らも、少し前まではあなたと同じ側にいて、ふとした邪心や油断、運命の悪戯によって犯罪に手を染めた人たちだとしたら…。
「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」で有名になった北尾トロさん。彼のおかげで傍聴マニアになった人もいるのでは?
かくいう私もその本を読んで傍聴に行きたくなった内のひとりです。「なった」だけですけどね。未だに行ったことないですけどね……って、これは「裁判官の爆笑お言葉集」でも書いていたとおり。
で、「なぜ元公務員はいっぺんにおにぎり35個を万引きしたのか(副題省略)」は、北尾トロさんが傍聴しに行ったビジネスマン裁判の傍聴記です。
あ、ちなみに「ビジネスマン裁判」ってのは北尾トロさんの造語です。ビジネスマンが起こした事件って意味。
この本では後半に「法定の人に学ぶビジネスマン処世術」ってのがあり、そちらもそれなりには面白く読めます。しかしやっぱり主題は傍聴記よ。
いくつかのエピソードの中でも、タイトルにある「おにぎり35個万引き事件(窃盗)」の元公務員さんについてのエピソードは可哀そうすぎて涙でる。
お役所の福祉課→とび職→無職ホームレス→おにぎり35個万引き。おにぎりってところがチョー泣ける。しかも35個ってところがチョー泣ける。
「社会復帰したら、カッコつけずに仕事を探しましょう!」(弁護人)
「やり直せるはずです。どうしても困ったときは、相談に乗りますからきてください」(検察)
「生活が成り立たないからといって、他人のものに手を出さないでいただきたい。わかりますね。あなたに期待します」(裁判長)
異様だった。それ以前も、それ以降も、法曹三者が口をそろえて被告人を励ます場面に出会ったことはない。つまりそれだけ、今回の事件には同情の余地があるのだ。
いやー泣ける。弁護人も検察官も裁判長も泣いちゃう。どうして元公務員がおにぎり35個を万引きするにまで至ったのかの詳細は、実際に書籍をお読みくださいませ。
あとは専業主婦による売春防止法違反の裁判も、かなり胸にキます。。主婦逃げてー!全力で逃げて―!って感じです。
執行猶予付き判決を受けた妻が、本格的に風俗で働き始める日は遠くない。そう思った傍聴人は僕だけでなかったに違いない。
いやー、久しぶりに北尾トロの本を読んだけど、やっぱり彼の裁判モノは面白い。というか、裁判が面白い(のもある)のか。世の中の事件が面白い(のもある)のか。
やっぱり一度裁判所に行ってみるかなあ。行きたくなってきたなあ。
でも多分きっと行かない。思うだけー。