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五十嵐貴久「リメンバー」

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バラバラ死体をビニール袋に詰めて川に捨てていた女が、都内で現行犯逮捕された。フリーの記者で、二十年前の「雨宮リカ事件」を調べていたという。模倣犯か、それともリカの心理が感染した!?精神鑑定を担当した立原教授の周りでは異常かつ凄惨な殺人が続発する。現場付近で目撃された長い黒髪の女は何者なのか?リカの闇が渦巻く、戦慄の第五弾!
(「BOOK」データベースより)

リメンバー

東京都某区の図書館で、五十嵐貴久の「リカ」を借りようとしている人に告ぐ。

他の区はどうか知らねども、少なくとも私の住まう某区の図書館所蔵本には「リカ」は単行本版しかありません。

かつて「リカ」の記事でもお伝えしたとおり、単行本と文庫ではラストが異なります。幻冬舎出版の「リカ」文庫本には、単行本の出版時には描かれていなかったエピローグが追加されているのです。

このラスト、その後のシリーズ全体に深く、深ーくかかわってきますので、「リカ」を読むときには文庫版がおすすめです。文庫版が図書館になければあきらめて買いたまえ。

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さて先日ご紹介した「リハーサル」で、五十嵐貴久は今後リカちゃんの現在・過去・近未来を“リカ・クロニクル”として書き進める予定だと公表していることをお伝えしました。

んーーー!五十嵐さん、好きーーーーーーーーーーーーーー!!!

そしてこの「リメンバー」は、“リカ・クロニクル”の第5章となります。

きゃーー!五十嵐さん、好きーーーーーーーーーーーーーー!!!

「リハーサル」を読んでから「リメンバー」が発売される2019年12月までは私も結構ウキウキでしてね。第5章ではどんなリカちゃんが登場するのかしら?いつの時代の話なのかしら?本間さん(ダルマ)介護生活?看護学校時代?升本病院?それとも…。

「何度も言わせないで編集部には百人二百人が出入りしてるって言ったじゃないもっとかもしれないその中には顔も見たくない奴がいるどうしてかおもあんなやつがわからないいるのかあたしのことをわかってくれないりかいはらがたつしようとしないはなしかけてもへんじもしないしどうしてそんなことをするのかむしするのやめてとなりにすわっただけでどうしてそんないやそうなかおするのおまえだよおまえおまえおまえたきもとおまえだおまえおまえおまえおまえ」
ぶつり、という大きな音がスピーカーから聞こえた。宮内の両手の指に、毟り取った紙の毛が絡みついていた。

しかしながらリカちゃんファンの皆さん残念でした。今回はリカちゃん登場いたしません。時代は「リカ」の20年後、「リターン」でリカちゃんが死んでから10年後になります。

でも大丈夫よ。リカちゃんは登場しませんが、代わりにお馴染みさんがいろいろと登場してきます。誰とは言わんがああまあそりゃね、という人も。あれー?その人ー?という人も。

かつてリカに関わった、お久しぶりの人々。皆さんいずれも、ある意味成長を遂げています。ただしその成長はいわゆる人間的な成長ではなく“リカ的成長”

ちなみに作中の立原教授は“リカ的成長”のことを“心理感染”と名付けていました。これがどんな意味なのかは「リメンバー」でご確認ください。

透明な涎が痩せこけた老人の唇の端から垂れ、清潔なパジャマの襟を汚していた。
後から後から、涎は蜂蜜のように糸を引いて垂れ続けている。右目に眼帯を付けた三十代後半と思われる女性が、ハンドタオルでそれを拭いながら、僅かに開いた老人の口に小さなスプーンを丁寧に差し入れていた。

誰とは言わんが、確かどこかに片目をケガしたことがある人がいたような気が…。

それで、我らがリカちゃんは一体どうなったのでしょうか。いやだからさっきも言ったとおり死んでるって。さすがにリカちゃんも12発も弾丸くらったら生きてはおるまい。そのうち6発は頭部だしねえ。さすがのリカちゃんも死んでいる筈…な、筈…死んで…る、よねぇ?

あれはリカだ。
あの女はわたしと立原教授を見ていた。もし雨宮リカではないとしても、限りなくリカに近い何かだった。

『限りなくリカに近い何か』って、何だ!?

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五十嵐貴久は、あとがきでこんな風に書いています。

ウィキペディアの五十嵐貴久の項目には、「日本の小説家・推理作家」とあります。個人的に自分を推理作家と思ったことはありませんがーーー(後略)—
(「リメンバー」/リカ・クロニクルの増殖 より引用)

あらそうかしら五十嵐さん?確かに貴方推理小説が主流ではないけれど(そもそも五十嵐貴久の主流は何なんだ)この本にもさりげなくミステリ的トリックなんて混ぜ込んじゃってますじゃない?ミステリとホラーのマリアージュね。

「リバース」はホラーでもあり、ミステリでもあり、人間のリカ的成長小説でもあります。

ホラーとミステリと成長小説のマリアージュ。リカって恋多きオンナですこと。どんなウェディングドレスが、リカちゃんには似合うかしら。

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