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ジェフリー・アーチャー「嘘ばっかり」

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町長殺害事件を捜査する刑事の前に現れたのは、犯行を自白する51人もの町民だった…「だれが町長を殺したか?」。早期退職を強いられた銀行員が資産家の顧客の秘密に気づき、人生大逆転の賭けに出る「上級副支店長」。旅行の保険で小金を手に入れる術を考案した夫婦の末路を3通りのエンディングで描く「生涯の休日」。奇抜すぎる発想と意外すぎる展開で人生の不思議を縦横に描き出す傑作集。
(「BOOK」データベースより)

ジェフリー・アーチャーの作品で、まだ読んでいないのは「クリフトン年代記」
 

長い!長いわ~。長すぎるから読めないのよ~。
読めばきっと面白いであろうことはわかっていますが(だってアーチャーだもんね)あまりにも壮大なサーガすぎて、手を出すにはちょっと勇気がいります。
 

過日とうとう「クリフトン年代記」が完結し、その宣伝目的で組まれた短編集が、この「嘘ばっかり」
アーチャーさん臆面も無く、この短編集内でバリバリ宣伝に励んでいます。相変わらず売らんかな精神にあふれたビジネスマン作家ね。好きよそういうアナタ。
 

長い旅路に出る前に、まずはちょっと寄り道として、山椒は小粒でピリリと辛いアーチャー短編集で一服つけようかなと。

ジェフリー・アーチャーの短編作品が安心して読める理由のひとつは、勧善懲悪な点です。
 

「良い人は良い結末に、悪い人は悪い結末に」
 

この場合の“良い人”は、法律的に・道徳的に“善い”人とばかりは言えません。たとえ犯罪者であっても、人間的に良い人であれば、その犯罪は(おおむね)成功し、「あーこいつイケ好かない奴だなー」と読者に感じさせる人物は、最終的にかなりの確率で悲惨な結果を迎えます。
 

あ、それと若い美人ね。ジェフリー・アーチャーの作品に若い美人が登場したら、ほぼ100%彼女にとって満足のいく結末が用意されていることでしょう。
全くよう、おっさんは若い美人に弱いよなあ。
 

本短編集の一編『だれが町長を殺したか?』もそのひとつ。
 

イタリアの田舎町コルトリアで町長が殺され、ナポリ警察から派遣された若き警部補ロセッティくん。
住人の誰もがお互いのことを知っている小さな田舎町。しかも被害者は町の有力者ということで、犯人を見つけるのはさほど難しくないと思われました。
 

だがしかし。
 

犯人が見つからないどころじゃない。犯人が、多すぎる。
 

「——どうやって死んだかははっきりわかっています。わかっていないのは、だれが殺したかです。しかし、あなたでないことは確かですね」
「それが本当に問題なんですか?」デ・ロサが言った。「それなら、ロンバルディがどうやって殺されたのかを教えてください。そのとおりに自供しますから」
やってもいない犯罪をやったお主張する人物にもロセッティは初めてお目にかかった。

「一つだけ小さな問題があるんです」ロセッティはつづけた。「残念ながら、それについて言うなら、ロンバルディはあなたにも、あなた以外のだれにも絞め殺されたのではないんです」
「しかし、あの男はすでに灰になっているんですよ。なぜそんなことがあなたにわかるのかな?」
「なぜなら、あなたと違って検視報告書を読んだからです。お教えしますが、シニョール・ペレグリーノ。死因は絞殺ではありません」
「それは残念ですが、あの男を絞め殺したいと私が思っていたのは確かだから、殺人未遂でお願いできませんか?それですべては解決でしょう?」

町長を刺し殺したと自首してくる犯人。
 

町長を絞め殺したと自首してくる犯人。
 

風呂場に沈めて殺した(町長の家にはシャワールームしかないのに!)と自首してくる犯人。
 

町長を海に突き落として殺したと自首してくるサッカーチーム。
 

我こそがロンバルディ町長を殺したと名乗り出る真犯人の数、総勢51名。
そもそもその51名の誰も、町長がどうやって殺されたのか、その死因すらわかっていないのに。
 

犯人が見つからないのも困り者ですが、多すぎるのも、また困り者ですね。
 

さて、それで。ナポリっ子のロセッティ警部補はどうしたのかというと……まあ、それはそれとして。ロセッティ警部補のプライベートな事情の方だけ説明しておきますとね。
彼、コルトリアで若い美人に出会いまして。見事ゴールインして、コルトリアに移り住んで新婚生活を送ることになったようですよ。
 

ロセッテイくんのプライベートな事情と、町長殺しの捜査とは、あまり関係ないような気もしますけどね。
 

でも、ジェフリー・アーチャー作品の特徴として。
良い人は良い結末。そして若い美人も良い結末。それが犯罪者であろうと、なかろうと。
 

『だれが町長を殺したか?』さていったい、誰なんでしょうねえ?

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