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東野圭吾「疾風ロンド」

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強力な生物兵器を雪山に埋めた。雪が解け、気温が上昇すれば散乱する仕組みだ。場所を知りたければ3億円を支払え―そう脅迫してきた犯人が事故死してしまった。上司から生物兵器の回収を命じられた研究員は、息子と共に、とあるスキー場に向かった。頼みの綱は目印のテディベア。だが予想外の出来事が、次々と彼等を襲う。ラスト1頁まで気が抜けない娯楽快作。
(「BOOK」データベースより)

「疾風ロンド」映画化とのことで、次に本屋に行ったら購入しようかと考えていた私。
でもその前にシリーズ前作の「白銀ジャック」を再読してからにしようかな、と本棚をあさってみたら
…家にあったよ「疾風ロンド」!
いやーすっかり忘れていた。危うく2冊購入してしまうところでした。しまったしまった。
そして前作「白銀ジャック」の方が見つからない今。そう広くない家の、そう大きくない私の本棚なのに、何故か見つからないダンジョン。
まったく、本って野郎は、こっちが探している時には姿を隠すいけすかないヤツですよね。
さて「疾風ロンド」は、スキー場を舞台にした“ぶっ飛び!”シリーズ2冊目になります。しかし家にあったのを忘れていたくらいですので、正直、他の東野作品に比べて印象は薄いw
作者も軽~いタッチで楽しく書いたエンターテイメントという感じです。
毎回毎回重ーい話が続いたら、疲れるでしょ?たまにはさらっと、東野版『私をスキーに連れてって』で軽妙にいきましょうよ。

「それから、一つ教えてほしいことがある」
「何?」
「どどめ色って、どういう色だ」

主人公は、大学研究員の栗林さん。
シリーズ前作から繋がる元々の主人公は別に存在しますが、事件との関わりからしても描写の比重にしても、本作では栗林さんが主人公と考えて間違いないでしょう。
で、その栗林さん。研究所から危険な病原体が盗まれ、所長からその捜索を命ぜられます。
なんたって、盗んだ犯人が交通事故で死んじゃったものですから、死人に口無し。在り処を聞くことができなくなってしまったんですよ。
残された写真から判別した病原体の隠し場所は、長野のスキー場。
コース外のどこかに埋められた病原体入りのガラスケース。
春になって雪が溶けたら、ガラスケースが爆発する仕掛け。

「『K-55』は、単なる病原体じゃないんです。超微粒子に加工された生物兵器です。容器の蓋を開けた途端、空気中に舞い散ります。それを一粒でも吸い込んだらアウトです。当人だけでなく、近くにいた人間の殆どが発症します。そして、おそらく助かりません」

東野版『私をスキーに連れてって』は、スピードスキーの疾走感と、軽妙なユーモア・サスペンス。
スタート合図の電子音が鳴ったら、スタートゲートを飛び出してHere we go!

Here we go!…なーんて格好つけつつも、主人公の栗林さん、そんなに格好良くありません。
スキー技術はボーゲンが精一杯、しかもブランク数十年。コース外に埋められたガラスケースを探すどころか、ファミリーゲレンデをあがって降りてでもう大変。
雪に埋もれて死にかけるわ足を捻って動けなくなるわ、それに勿論、久方ぶりのスキーで全身筋肉痛ね。
所長には突き上げられ息子にはバカにされ、スキー場スタッフには叱られ嘘がばれて責めたてられ…中年男がオロオロ・オタオタするドタバタ喜劇の色合いが強し。
しかも、ラストに至るまで栗林さんのイメージが挽回することないですからね。最後までオタオタしっぱなしで、事件の解決に何の役にもたってないし。
この小説自体は軽~いユーモア・サスペンスとして、さらっと気軽に読んで主人公のオタオタっぷりを笑って流せば良いくらいですけどね。
映画化されたと。しかもその『役立たず中年男・栗林』役を阿部寛さんが演じると聞けば、笑って流してもいられないんですよ我が家としては。
阿部さ~ん、大丈夫?同じ東野作品の“加賀恭一郎シリーズ”とかなり毛色が異なりますが、だ、大丈夫?イメージ的に許容範囲?
阿部寛さんが『役立たず中年男・栗林』を演じることによってイメージに傷がつかないか心配だわ。彼には是非良い役を得て、俳優として成功して頂きたいんですの。
だから、映画版「疾風ロンド」の脚本では、栗林さんがもちっと格好良く描かれていることを期待しております。
どうしてさくら一家が阿部寛押しなのか。それは極私的な御恩です。
さくら旦那が貧乏学生時代、テレビ局の大道具?小道具?のバイトした時に、阿部寛さんからロケ弁をめぐんでもらっていたらしいのですね。阿部寛がまだトレンディドラマの二枚目俳優の頃。
一宿一飯の恩義は強い。貧乏学生に与えたロケ弁への感謝の念は強い。
『阿部寛は良い人だ~、学生バイトにも丁寧で、本当に良い人だ~』と、未だにさくら旦那は、阿部寛がテレビに出る度に言ってます。ほんと、食べ物の恩っていつまでも忘れることはないなあ。
是非とも。あぁ是非とも、映画の神さまにお願い。
映画での栗林さんがちょっとは格好良くなっていますように。さくら旦那からのロケ弁感謝の心をこめて、映画の神さまお願いします。

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