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スティーブン・キング「図書館警察」

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あの図書館には何かがいる。不気味な貼り紙、冷酷な司書、期日に本を返さないと現れる図書館警察。幼い頃の恐怖が甦り、サムの心を侵す。戦え、心の闇を消し去るのだ―恐怖に対決する勇気を謳い、感動を呼ぶ表題作。さらに異界を写すカメラがもたらす破滅を描く「サン・ドッグ」。翻訳者+装幀者による巻末の解説座談会も必読。
(「BOOK」データベースより)

 

下の画像は「図書館警察」ハードカバーの裏表紙イラストです。こ、怖いでしょ。

この本は図書館から借りてきた本です。

返却期限は本日12/3です。

だから私は、これからすぐに家を出て、ぜったいぜったいぜったいにこの本を返却しなくてはなりません。

ぜったいぜったいぜったいに。

今日中に本を返さなければ、図書館警官がやってくる。

AVOID THE LIBRARY POLICE!
GOOD BOYS AND GIRLS RETURN THEIR BOOKS ON TIME!

主人公のサム・ピーブルズは不動産会社の社長さん。

とある事情から、図書館に行く必要がありました。

子供の頃に行ったっきり、ずっと足を踏み入れていなかった市立図書館へ。

いまのご時勢では図書館利用者数も減少しているのか、人気のない図書館のカウンターで暇そうにしていた司書のオバチャンと軽口を交わし、首尾よく2冊の本を見つけて、ついでに昔懐かしい児童図書室も回遊してみたりして。

本を探し、本を見つけて、本を借りた。ただそれだけ。

返却期限は七日後の、4月6日。

「返さなかったら?」サムはたずねた。自分の笑顔が、いきなり笑顔でなくなったように思えた——まるで仮面と化したようだった。
「その場合には、お宅に図書館警察の警官を派遣しなくてはなりませんね」

アメリカでは今でも「本を返さないと図書館警察が来るよ」とはよく言われるそうですね。
日本に例えて言うなら「悪い子はサーカスに売られるよ」と同種の脅しでしょうか。

金だって本だって、借りたもんは返しゃー良いのよ。さっさとね。

でも、そう上手くいかないのが世の常人の常。ついつい返却期限を忘れて過ぎてしまうことだって、よくあるでしょう?

借りた本を誤って汚したり、ページを破いてしまうことも。

もっと悪いことに、借りた本を失くしてしまうことも。

図書館警察の厄介になるべからず!
よい子は本の返却日をかならず守りましょう!

本の返却をすっかり忘れていたうっかり八兵衛サム・ピーブルズ。

司書のオバチャンからの督促TELであわてて探してみたものの、2冊の本はどこにも見つからず。なんと、古新聞にまぎれて古紙回収に出されてしまったことがわかりました。

サムは詫びを入れるために図書館に向かいます。

弁償する費用もお財布に痛いし、きっとオバチャンに滅法怒られるんだろうなあと思うと胃も痛む。

さすがに『図書館警察』なるものは子供への脅し文句だと知ってはいても、失策に叱られるのが嫌なのは大人も子供も同じ。

ところが。

再び訪れた市立図書館は、先日とはうってかわって活気のある場所に。

利用客もスタッフも多く、蛍光灯が明るく照らされた建物内の、書架の棚まで変わってる。

薄暗い室内に光を落としていた天窓も消えて。

たったの七日間で、図書館の改修工事が行われた?いやまさか。

司書のミス・アーデリア・ローツを探しても、その司書のことをスタッフの誰も知らない。

自分が行った図書館は、どこだったのか?

自分が会った司書アーデリア・ローツは、だれだったのか?

自分が借りた本は、なんだったのか?

「ぼくは図書館から、存在しない本を二冊借りだした。いまその二冊は、ほんとうに存在しなくなっている。なくしたんだ。その本がどこに行ったかはわかるか?」
ナオミはかぶりをふった。
サムは左側を指さした。ピックアップ・トラックの運転席からふたりの男がおりてきて、資源ごみを荷台からおろしている。
「あそこだよ。本はあそこに行っちまった。パルプにされたんだ。ぼくにのこされた時間は真夜中まで。それが過ぎると、こんどはぼくが図書館警官にパルプにされちまう。本のカバーはのこっていたけど、ぼくの場合にはカバー代わりの服ものこらないんじゃないかな」

話が進んでいくにつれ、30年前に死んでいる筈の司書アーデリア・ローツの謎や、図書館警官が犯した罪、サムが子供の頃に受けた傷と彼にかけられた罠が明らかになっていくのですが、正直『アーデリア&図書館警官 vs サムと愉快なアル中患者達』の直接対決あたりは、読者の心は「???」とはてなマークでいっぱい。

あれ、いや、何で?図書館警官の退場早すぎない?アーデリアさんのストロー、物が詰まりやすすぎやしませんか?

例えて言うなら口裂け女に『ポマード!』と叫んでベッコウ飴を投げつけて退治するような、理由のないオチに消化不良。

だから、まあ、結末については期待しないで。

一番の主題は、子供の頃に感じた恐怖の根っこ。

心の奥底にしまい込んだ恐怖のタネが、大人になってから甦ってくる、その怖さを堪能してください。

さあ、早いところ支度して、図書館に行かなければ。

本は汚すな、濡らすな、破くな。間違っても失くしたりするな。

返却期限までに返さなければ、図書館警官がやってくる。

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