警察が悩む難事件も、ママにかかっては子供の遊びも同然だった。なにしろ、家で話を聞いているだけで、事件を解決してしまうのだから。そんなママが、西部に引っ越したデイヴを訪ねて、はるばるブロンクスからやってきた。そこに発生した助教授殺し。悩むデイヴの前にママは名推理を披露する!安楽椅子探偵の代表の一人とされる、あのママが帰ってきた!新シリーズ第一弾。
(「BOOK」データベースより)
このブログ ほんのむし は、基本的に私の愛読書と気に入った本の感想だけを載せるようにしているのですが、ひとつここでお断りしておかねばなりません。
ごめん。「ママ、手紙を書く」は、実はあんまり好きじゃない。
ですが、以前「ママは何でも知っている」の中であれだけ嫁姑争いと旦那のヘタレさを記述したからには、シリーズの2冊目となる「ママ、手紙を書く」についても言及しなくては片手落ちになるのです。
やはり、書かねばなるまい。
“ブロンクスのママ”シリーズ2冊目となる「ママ、手紙を書く」は、作者ジェームズ・ヤッフェがほぼ20年ぶりに書いた小説です。
そして、作中で経過した年月は、おそらく3~5年間。
「ママは何でも知っている」の中で、ローストチキンを焼きながら嫁をこき下ろす合間にちょちょいと殺人事件の謎を解いていたブロンクスのママは、この数年の間にどうなったのかというと・・・
舞台、ブロンクスじゃないし。
息子のデイブ、ニューヨークからメサグランデ(ってどこだ?)に移住してるし。
そもそもデイブ、刑事辞めてるし。
嫁のシャーリィ、死んでるし。
・・・どどどどーした?!
嫁のシャーリィが病気で死んだ気落ちにより、ニューヨーク市警の刑事稼業にやりがいを見出せなくなってしまったデイブ君。
メサグランデで弁護士をしている昔なじみからの誘いにより、弁護士事務所の専任捜査官として新たな仕事&新たな生活をはじめることとなりました。
メサグランテ(ロッキー山脈の山裾に広がる中規模の町、だそうです)はニューヨークに比べて田舎町なので、殺人事件などそうそう起こる事がない平和な日常を過ごしていたデイブでしたが、ママがはるばるニューヨークから遊びにきた丁度その時。
ママ大好物の殺人事件が、タイムリーにママをお出迎えしてくれます。
さあ、ブロンクスのママ。ブロンクスで快刀乱麻のひらめきを見せた名推理の手腕は、ここメサグランデでも発揮されるのか?!
とか言いながら。
この本に限っては、推理はどーでも良いよ。
“ママの手紙”の秘密なんて『何じゃそりゃ』状態。それで良いのかと。死人に口なしで終わらせちゃって良いのかという感想。
推理にも結末にも納得いかないので、ミステリとしての楽しみは横に置いといて忘れちゃって下さい。
それよりも、シリーズ2冊目「ママ、手紙を書く」でどうしても気になっちゃうのが、ママのパーフェクトさ加減。
息子が“嫁というフィルター無しに”自分の母親を描写すると、こんなに有能で優しくて気の利く人として描かれることになるのか。と、作者ヤッフェのマザコンっぷりがダダ漏れしています。
この本書いたときはヤッフェ60歳を超えている筈なんですが。この作者、還暦すぎてもママン好きが抜けないの?
マザコンっぷりもさりながら、主人公のデイブが配偶者を亡くした気落ちっぷりにも、男の弱っちさがダダ漏れです。漏れるどころじゃない、デイブのヘタレ具合はロッキー山脈からごうごうとなだれ落ちる河のごとし。
以前「女は上書き保存、男は名前をつけて保存」と区分けされるとどこかで書きましたが、配偶者が死に、残されたのが側がどちらであるかについても、男女の違いは出るようです。
今回の男代表デイブは、妻を亡くして仕事も手につかず、夫婦で暮らした家にも居られないほどの精神的ダメージ。
対して、女代表のママ。
メサグランデに引っ越す計画が持ち上がって、息子デイブの「僕のアパートに住めば良いよ」との提案に返した言葉。
「つもりは結構。ありがたいけど、あたしはこれまでの人生の三十四年間を一人の男と、それに育っていく息子と---つまりあんたの父さんと、あんたと一緒に暮らしたのよ。三十四年間、炊事、洗濯、トイレの掃除に明け暮れた毎日だった。楽しかったわよ、喜んでやってきたんだけど---でもこの二十年一人で暮らして、一人分だけの炊事、洗濯、トイレの掃除で済ませてきたら、その快適なこと。だから、もしあんたがあたしみたいに世話をやいてくれる女の人が欲しいのなら、どうぞ勝手にお捜し。なんなら手伝ってあげてもいいわよ---でもあたしはご免、その気はありませんからね」
女って、こうだよねぇ~。
多分結構な割合で、連れ合いが死んだ後に遺品をさっさと断舎利できるのが女性。いつまでもとっておくのが男性。
離婚したとしたら、いつまでも写真を手帳に忍ばせておくのが男性?婚約指輪を質屋に売っぱらっちゃうのが女性?
女は冷酷だと男は言い、男はヘタレだと女は言うかしら。
でも野坂昭如も言ってるし。
たとえば男はあほう鳥 たとえば女は忘れ貝
男と女の間には深くて暗い川がある ローエンドロー♪
世のあほう鳥さんたちよ。しっかり頼むぜ、全くよう。