切なくてあたたかい、小さな「わすれもの」の気持ち。
ミナちゃんは、パパとママと大好きなひつじのぬいぐるみと一緒に公園に遊びに行きました。ベンチにひつじを座らせたミナちゃんは、遊びに夢中になり、公園にひつじをわすれてしまいました。ひつじは、カラスにつつかれたり、ベンチから転げ落ちながらも、迎えが来てくれると信じています。けれどあたりが暗くなり、その夜は雨も降ってきて…。
(BL出版 内容紹介より)
ねこのおかあさんは ひつじを ベンチにおろすと いいました。
「あんた、すてられたのかい?」ひつじは びっくり。
「ちがうよ、ちょっと わすれものに なっただけ!」
「わすれもの?」
「そう わすれもの。すてられたら むかえはこないけど
わすれものは むかえがくるんだ。ミナは きっとくるよ」
我が娘がちいさいころ、犬のマスコットがおきにいりでした。
(娘はクマさんと呼んでいた、けれどあれはきっと犬…)
そのマスコット。おきにいりなので屋外に持っていく機会が多く、よく落としたり忘れたりしていたのだけれど。
なぜか、いつどこで失くしても、戻ってくる。
近所のスーパーに買い物に行ったときも。
新宿駅の構内で落としたときも。
「こりゃー無理だべ!」とあきらめていても、何故か手元に戻ってくる。
そりゃあもう、チャイルドプレイか死霊館のアナベルかお菊人形なみのリターントゥフォーエバーですわ。
「ミナは ぼくがいないと ひとりで ねむれないのに…」
ここでいう「ミナ」ちゃんは、ひつじさんのいちばんの仲良しさん。推定6歳。
ストーリーにはまったく関係ない話ですが、おそらくは新興住宅地に住む、そこそこアッパー階級の子どもですね。
「ひつじ」といっても本物じゃありません。抱っこサイズのぬいぐるみちゃん。
ミナのいちばんのおともだち。
しかしミナちゃん、持ってるぬいぐるみって1個だけなのかな?子ども部屋には他のぬいぐるみもオモチャも一切なく、シンプル&シックなオシャンティー部屋。
子ども部屋が、やたらひろい。そこそこアッパー階級の子どもだとの推測は、子ども部屋のインテリアを根拠としています。
プリキュアとか、ないの。
で、本題。
公園にピクニックに行ったミナちゃん、お気に入りのひつじのぬいぐるみを公園のベンチに忘れてきてしまいまして。
ひつじさんはもう大変よ。ひとりでお家に帰れないし(ぬいぐるみだからね)カラスにつつかれたり、坂道からころげ落ちたり。猫に首くわえられたり。
実は、ひつじが公園内でプチ冒険をしている最中、夜にミナちゃんとお母さんが探しに来ていたりするんですけどね。
ちょうど間の悪いことにすれ違い!「君の名は」(アニメじゃなくって真知子の方)か「冬ソナ」か。
夜に、たったひとり。空からは雨も降ってきて、
「ぼくも おうちに かえりたいよう…」
この本は、過日採りあげました「おどりたいの」と同じ、豊福まきこさんが書いた絵本です。
記事内で登場した図書館員のマダムに「おどりたいの 可愛いですね~!」と感想を述べたら、こちらがデビュー作であるとご紹介頂きました。
ですので、この「わすれもの」は、その図書館から借りてきております。
いや売上も重要だろうけどね、図書館は図書館で、貸し出し件数とかの実績数字が重要らしいよ?公営だから関係ないような気もしますけどねえ。それはさておき。
「おどりたいの」も暴力的な可愛さがありましたが、いやぁこっちも、可愛いねぇ~!
絵本の表紙はどちらかというと“怪談えほん”シリーズのようなイメージですが、いやまたどうして。ほんのりとあたたかく、美しい色彩。
癒されるー癒されるわー。
ひつじの寂しげな顔、不安げな顔、泣き顔、そして笑顔。
ひつじさんの表情がクルクルと変わり(ぬいぐるみなんですが)ああ!小さくいたいけな者の愛らしさよ!
ひとばんじゅう ふりつづけたあめが こさめになり、
あたりが あかるくなってきました。
すると あさもやのむこうに ちいさなひとかげが みえました。
「わすれもの」と「おどりたいの」の2つを見比べて可愛い大賞を決めるとしたら。
個人的にはどちらかと言えば、鼻から醤油出るいきおいのド直球ストレートである「おどりたいの」に軍配が上がりますが。
それでもやはり、ミナちゃんにギュッと抱きしめられたときの、ひつじさんからこぼれる雨つぶだか涙だかのしずくの愛らしさは、捨てがたい。
ああ、癒される…。大人女性の乙女心に突き刺さる…。