綾辻行人と牧野千穂が、見えない魔物を描きだす―
「くうきにんげん」を知っているかい?
誰も気づいていないけど、世界中にたくさんいるんだよ。
普通の人間におそいかかって、空気に変えてしまうのさ。
(岩崎書店より)
当代の人気作家5人と絵本作家がタッグを組んで、子ども向けの「怖い」絵本に挑戦する「怪談えほん」シリーズ。
第1期5冊の発刊は知っていましたが、いつのまにか第2期も出ていたとは。
ま、また怖~い、怖~い本が増えていくのよおおおお。
怖いから他の人にも紹介して、怖いのを私だけじゃなくしよう。そうだそうしよう。
・・・という訳で、まずは第2期「くうきにんげん」からご紹介。
登場人物は可愛いうさぎちゃん。
うさぎの顔をしていますが人間(?)です。
ランドセルを背負って、小学校から下校途中。
いろいろな種類の動物の顔をした大人や子供の行き交う町を、うさぎちゃんが家に帰ります。
どうやらうさぎちゃんはカギっ子ちゃん。もしかすると母子家庭?
自分でカギを開けて、家に入ったらひとりでもちゃんと手洗いうがい。えらいえらい。
お母さんが置いていってくれたオヤツを食べて、窓の外に飛んでいる風船を見つめます。
でも。
うさぎちゃんはひとりだけど、ひとりじゃないんです。
誰も気付いていなけど、世界中に大勢いる「くうきにんげん」
空気みたいに見えなくて、空気みたいに軽くって、どこへでも行ける。どこにでも入れる。
うさぎちゃんがきちんと戸締りをしてたって「くうきにんげん」には関係なし。
ふたりの「くうきにんげん」が、町中に。通学路に。家の中のどこかに。
「くうきにんげん」は空気みたいに聞こえない声でうさぎちゃんに語りかけながら、徐々に、徐々にうさぎちゃんに近付いていく。
そして、みぎのほっぺたと、ひだりのほっぺたを、同時にそっと触れたら・・・
こわーい!こわーい!怖いよおおお!
直接的に来る怖さではなく、じわじわじんわり来る怖さです。
絵柄が可愛いだけに、じっくり読めば読むほど染み入ります。逆に、パパーッと読み流してしまえば、そう怖くはない。
怖いのが苦手な向きはパパーッと読み流すことをおすすめします。なんて嘘。じっくり読みなさい。じわじわじっくりと近付いてくる「くうきにんげん」の怖さを存分に堪能しなさい。
そして、じっくり読んだなら。
絵本の最初のページに戻って、うさぎちゃんが図書室で読んでいるご本のページををよく見てちょうだいな。
うさぎちゃんが読んでいる絵本が何なのかわかったら、次はあなたと私が「くうきにんげん」の気配に怯える番。
みぎのほっぺたと、ひだりのほっぺたに、同時に触れる手を感じたら、あなたも私ももう逃げられない。