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奥田英朗「ナオミとカナコ」

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ナオミとカナコの祈りにも似た決断に、やがて読者も二人の“共犯者”になる。望まない職場で憂鬱な日々を送るOLの直美。夫の酷い暴力に耐える専業主婦の加奈子。三十歳を目前にして、受け入れがたい現実に追いつめられた二人が下した究極の選択…。「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」復讐か、サバイバルか、自己実現か―。前代未聞の殺人劇が、今、動き始める。比類なき“奥田ワールド”全開!
(「BOOK」データベースより)

ドラマにもなった小説ですが、ドラマは未見。

原作同様、ドラマの最終回でも『ふたりは逃げのびたのか、逮捕されたのか』は結末で明かされず、TV視聴者に煩悶させた「ナオミとカナコ」

悩むが良いさ、ふっふっふ。

この煩悶は、マルチメディアで道連れだ。

直美はひとつ深呼吸をし、少し考えてから《Clearance Plan》と書いた。和英英語で「排除」を引いたら、いろいろな英単語が出てきたが、その中で「クリアランス」という言葉がいちばん響がいいのでプラン名に使うことにした。クリアラスと言えば、セールを連想する。だから、在庫処分するように、達郎を排除してしまうのだ。

夫からの暴力に悩まされている加奈子と、その親友直美の2名が共謀して、DV夫を殺害しようというClearance Plan。なんか景気が良い感じで良いですね!

私も誰かを殺したくなったら、その名称を拝借しようかとも考えました。今のところ予定はないですが。

彼女達のクリアランス・プラン。

なんというか、言い方悪いですが“女の浅知恵”感プンプン。認知症のシルバー女性と、DV夫にそっくりな中国人男性を利用してたてた殺害計画は『額に入れて飾りたいほどの完璧なプラン』と直美が自画自賛しつつも、その実は偶然にたよった、穴だらけの杜撰さ。

まあ、計画の穴と杜撰さは、犯行後に自分たちもいやおうなく自覚しますので、ここではヤイノヤイノ言わない。

「ナオミとカナコ」という小説自体が、女子高生ノリで殺人を犯す女性達が、オロオロする過程をじっくり眺めて応援するのが目的の小説です。

夫を殺害して隠蔽…という題材では、桐野夏生の「OUT」がまず連想されるところですが、こっちのふたりは「OUT」な女達に比べてずいぶんとか弱い。

「まだ壊れちゃってない人達」です。

壊れちゃってない女性が、壊れちゃった人と同じことやろうとするもんだから、妙に主婦感覚だったり、自分に都合が良く解釈しがちだったり、計画的なようで無計画だったりする。

偽装計画と資金調達のために移動した預金が結局没収されて、金銭が持ち出しになっちゃったりね。

ホームセンターで堂々と死体の穴掘りスコップ(2つも!)購入しちゃったりね。

DV夫が失踪して間もないのに、お部屋のインテリア変えてキャッキャウフフと北陸まで旅行に出かけちゃったりね。

読んでいる方はもう、あーハラハラする。読者の気持ちは夜遊びする女子高生を心配する親目線よ。

あなたたち、あとで後悔したって遅いのよ?

加奈子は、足が地上から数センチ浮いたような、不思議な浮遊感の中にいた。ここ数日は自分の感情がわからない。怯えていながら、どこか開き直っている部分もある。少なくとも、生き抜くことへの執着はある。

穴だらけの計画で素人殺人を犯した直美と加奈子の前に立ちはだかるのは、DV夫の妹、陽子。

直美と加奈子の二人が、シロウトっぽく女子高生っぽく描かれているのに対して、妹・陽子の方は怖えー怖えー。私立探偵と警察を背後に従えて、二人を追いつめる姿はまるで冷酷なジャベール警部のようです。あ、レ・ミゼラブルのね。

本来ならば『兄を殺された哀れな被害者家族』の筈なんですが、どうにもこうにも陽子に同情票が入らないw陽子が動けば動くたび、殺人犯人の直美と加奈子に応援する気持ちが湧いてまいります。

どうやら失踪した服部達郎は、何らかの事件に巻き込まれた可能性がある。

その事件には、妻の加奈子が関与しているらしい。

そして、妻の友人である小田直美も、加奈子との協力関係にあることが疑われる。

そこまで(陽子のおかげで)突き止めた警察が動き出しました。

そしたら、もう逃げるっきゃないよね!

しかし殺人の計画もシロウトならば、逃亡もシロウト計画です。正直、このままずっと逃げおおせる筈もないような行き当たりばったり。
でも、そんな二人だからこそ、ついつい応援したくなっちゃうんです。

このまま逃げ切って!国際便の搭乗口まで走って入って!飛行機よ早く飛んで、ふたりを中国まで乗せていって!

…で、結局、ふたりが無事に逃げおおせたかどうかは、小説でもTVドラマでも明らかになる事は無いのですが。

出来れば、逃げのびてくれていれば良いなあと、願ってやみません。ほら、だって、読者の気持ちは夜遊び女子高生を心配する親目線だからさ。

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