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石持浅海「トラップ・ハウス」

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大学卒業を間近に控えた本橋大和は、級友たちと車2台に分乗し、郊外のキャンプ場に出かけた。先乗りしたはずの幹事の姿は見えないが、チェックイン済みのトレーラーハウスに向かう。見慣れない宿泊施設に興奮した九人全員が中に入って、そのドアが閉まったとき、復讐劇の幕が開いた―。はたして彼らは、生きてここから出られるのか!?―。
(「BOOK」データベースより)

クローズド・サークル物が大好きな石持浅海。狭い空間で膝つきあわせてみっちみちするのが好きなんですね、きっと。
キャラクターだったら、お外でパレードのミッキーマウスよりも「すみっこぐらし」の方が好きなんですね、きっと。
 

私も好きですよ「すみっこぐらし」
引きこもりニート御用達キャラ好きが、すみっこで膝を抱えて読むのは、トレーラーハウスの密室殺人。
空間、せっまーい。

「キャンピングカーとは、似て非なるものだな。根本的に考え方が違う。キャンピングカーが『宿泊もできる自動車』なのに対して、トレーラーハウスは『移動もできる住居』だ」

大学4年生の男女10人組が向かった郊外のキャンプ施設。
ひとりを除いて全員就職先も決まり、ウッキウキでキャッキャウフフの卒業旅行。
 

だけど、会場となるトレーラーハウスに一歩足を踏み入れたら、あれれ?おっかしーなー、ドアが開かないぞ?
水道もガスも使えない、携帯の電波も入らない。
 

そして誰かさんからの、お手紙がひとつ。

「君たちは、ここから出られないよ。
一生ね」

差出人の名前は、なかった。

そして一人が死んだ。
 

石持浅海のミッチミチ劇場、はじまりはじまり~♪

「トラップ・ハウス」の“トラップ”って、かなーり、地味です。
主に画鋲。
…地味っ!
 

あとは目覚まし時計とか、椅子の足を切るとか、10人を殺すにはちょっと役者不足じゃない?って凶器ばかり。
それもそのはず、誰をも知れぬ犯人は、そもそも仕掛けた罠で入室者を殺す意図はありませんでした。ハナからひとり死んじゃったけど、まあそれは偶然的要素が大きい。
では、犯人は何が目的だったのか。それは、2年前に起きた、皆のトモダチ中井戸くんの事故死にありました。

「中井戸の死に方に裏があるかどうかは、今はまだわからない。けど、もし俺たちの解釈が古木の意図を汲んだものだとしたら、少なくとも古木は、中井戸の交通事故死に納得していないということだ。その上で、俺たちを閉じ込めて真相究明させようとしているなら、おそらく——」
広瀬は、一度話をやめて、大きく息を吸った。そして吸った息を吐き出す勢いで、一気に最後まで話した。
「あいつは、中井戸の死に関与した奴が、この中にいると思っている」

作者の石持さんには申し訳ないんですけど、私はいつも、石持ミステリの“動機”にイマイチ納得がいかないんですよねえ。
死んじゃった中井戸くんの謎を解明しよう!って気持ちはわかるけど、なんでわざわざ旅先で?なんでわざわざトレーラーハウスに細かい仕掛けを施して?
作業ボリュームと得られる結果のバランスが悪い…もっとさあ、効率的なやりかたがあったんじゃないの?
 

閉じ込められた9人にも、ちょっと不満はポロポロと。
みんなもっと脱出する術を考えようよ!何でのんびりと語り合ってるの?
トレーラーハウスから出られる方法はないか、役立つアイテムはないかと、もっとちゃんと皆で探そうよ!
そしたらもっと早い時間に冷蔵庫を開けて…ゲフンゲフン。いやそもそも事件が起こる前にどうして誰一人として冷蔵庫をゲフンゲフン。
 

とか言って。
そんなアラ探しするのは、野暮というものよ。
石持ミステリはいつも狭い空間でミッチミチと語り合う、すみっこぐらしワールドが真骨頂なのですもの♪
大事なのは動機よりシチュエーション。細かいことは気にせずに、ミッチミチの舞台立てを存分にご堪能ください。
 

しかしなあ…冷蔵庫はなあ…普通見るだろ、真っ先に…。

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