「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」令嬢刑事と毒舌執事が難事件に挑戦。ユーモアたっぷりの本格ミステリ。
(「BOOK」データベースより)
女子の心秘かな憧れ。それは、豪邸で執事にかしずかれながらアフタヌーンティーを楽しむ情景。
そんな乙女の願いを充足させる執事喫茶なるものが世の中にはありまして。メイド喫茶と同じようなものですね。
執事喫茶が世に登場したのは、およそ今から十数年前。思えば息の長い商売してまんな。
当時の会社後輩が、出来立てホヤホヤの執事喫茶に馳せ参じたことがありました。そりゃもう気分アゲアゲで行ったさ。さすがにドレスは無理でもお高い服着て、髪巻いて、爪磨いてね。
ハイジに出てくるセバスチャンみたいな黒スーツ&蝶ネクタイの白髪のバトラーが『お帰りなさいませ、お嬢様』と出迎えてもらえるならば、そりゃもう体感せねばならんでしょ?
…そして翌週、出社してきた後輩に『どうだった?』と聞いたところ。
『店に居たのはバトラーじゃなくって新宿ホストでした(泣)』
どうやら、私(ジジ専)と後輩(ジジ専)が夢見るセバスチャン像と、二次元女子の夢見る黒執事像の間には、深くて暗い河が在るらしい。
「謎解きはディナーのあとで」の執事 影山が、セバスチャンか黒執事かは判らねど。
この執事にかしずかれながらディナーを頂くのは…私はちょっと、辛いなあ。
我が家に「謎解きはディナーのあとで」のシリーズは1、2、3と全て揃ってるんですけどね。娘が好んで読んでました。ほら、嵐の桜井くんがドラマやってたしねー。
本格ミステリ、と銘打ちつつ実態はユーモアミステリなので、サクッと読めて面白い。
リアリティとかは気にしちゃダメ。巨大グループの総帥令嬢がどうして公務員やってるんだ、とか、何故に国立くんだりに住んでるんだ、とか、野暮なことは言いっこなしよ。
それよりもですね。「謎解きはディナーのあとで」の真髄は、執事 影山の毒舌にあるというのが定説でございましょう。
さあ!皆さん覚悟は宜しいか?!影山の直截で舌鋒鋭い暴言の数々、まとめてドンだ!
「失礼ながらお嬢様——この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか」
「こんな簡単なこともお判りにならないなんて、それでもお嬢様はプロの刑事でございますか。正直、ズブの素人よりレベルが低くていらっしゃいます」
「失礼ながらお嬢様、やはりしばらくの間、引っ込んでいてくださいますか」
「お許しください、お嬢様。わたくしチャンチャラおかしくて横っ腹が痛うございます」
「おやめください、お嬢様。いくらなんでも予断と偏見が刑事失格レベルでございます」
「お嬢様は冗談をおっしゃっているのでございますか——もしそうだとすれば『ウケる〜』でございます」
「お言葉を返すようで恐縮ですが、お嬢様のほうこそ、どこに目ン玉お付けになっていらっしゃるのでございますか」
「残念ながらお嬢様のお考えは犬に食わせるほどの値打ちもございません」
「お嬢様の単純さは、まさに幼稚園児レベルかと思われます」
「ああ、お嬢様!——まさに、お嬢様のおっしゃったとおりでございます。確かに、お嬢様の凡庸な閃きなど、誰かに話すほどのものではございません。聞くだけ時間の無駄でございました」
「なぜ、お嬢様は数多くの事件を経験しながら、一ミリも進歩なさらないのでございますか?ひょっとして、わざとでございますか?」
「わたくしと比べて目だけはよろしいものと思っておりましたが、どうやら見当違いでございました。目の前にあるヒントにまるでお気づきにならないとは……わたくしお嬢様には心の底からガッカリでございます」
「この程度の謎で頭を悩ませておいでとは、お嬢様は本当に役立たずでございますね」
痛い~キーボード入力するだけで心が痛い。恐ろしいのはこれが暴言の全てじゃないって事実です。
この暴言を日々聞かされて心が折れない麗子お嬢様は、持ってるゴールドも多くてヒットポイントも高いドラクエの勇者。
セレブって、すごいわねぇ~。
生涯女子魂のわたくしも、未だに執事にかしずかれる体験は憧れのひとつではありますが。
影山さんは、ちとご勘弁ね。
新宿ホストも、やっぱりご勘弁ね。
細身長身白髪の60overダンディを集めた、英国調本格派執事喫茶なるものがどこかで営業していないものかしら。
そしたら私、後輩誘って行くんですけど。
ニーズはあると思うんですけど。