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サン・テグジュペリ「星の王子さま」

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砂漠に飛行機で不時着した「僕」が出会った男の子。それは、小さな小さな自分の星を後にして、いくつもの星をめぐってから七番目の星・地球にたどり着いた王子さまだった…。一度読んだら必ず宝物にしたくなる、この宝石のような物語は、刊行後六十年以上たった今も、世界中でみんなの心をつかんで離さない。最も愛らしく毅然とした王子さまを、優しい日本語でよみがえらせた、新訳。
(「BOOK」データベースより)

我が娘の学校で行く春の遠足は、今年は箱根だそうです。

晴れたら箱根の関所と杉林を散策するそうで、花粉症の娘は今から『雨が降らないかなぁ~』と雨乞いの気分。

しかしながら雨天時のスケジュール『星の王子さまミュージアム』ってのも、「星の王子さま」を未読の娘にはイマイチ気乗りがしない。

「『星の王子さま』って、どんな話なの?」

そう聞く娘に、優しい母は

「飛行機墜落して砂漠で死にそうな男が、パンクなパツキンの電波少年と出会って、さんざんデンパな妄想聞かされたあげく少年が死んだら、飛行機直して家に帰る話よ」

と、簡潔に説明してあげました。

もしこの春に娘が『星の王子さまミュージアム』に行ったら、母の卑俗さが露呈してしまいそうです。

なので、当日は是非ともピーカンのお天気で、娘には鼻をズビズビいわせながら杉林を練り歩いて頂きたいものだと願ってやみません。

「人は星を持っているけど、その星はみな違う。星は旅行者にとっては案内人だし、ほかの人にとってはただの小さな灯りだ。もっと別の人、学者にとっては星は研究課題だ。ぼくが会ったビジネスマンときたら、星を金貨金だと思っていた。でも星たちはみんな黙っている。でも、きみはほかの誰とも違う星を持つことになる」
「どういうことだ?」
「きみが夜、空を見上げると、あの星の中の一つにぼくが住んでいるんだから、その星の中の一つでぼくが笑ってるんだから、きみにとっては全部の星が笑っているようなものだ。きみは笑ったりすることができる星を持つことになるんだよ」

「星の王子さま」を読んだことがない人でも、小さな星の上に立つ王子さまのイラストを目にしたことがない人はまず居ないでしょう。

“たいせつなものは目に見えないんだよ”という台詞も、よく引用されがち。

だから、なーんとなく知っているようで、その実あんまりよく知らない「星の王子さま」。

リリカルで情緒豊かなイメージ先行で、『よくわかんないけど情操教育に良さそうじゃない?』と、小さなお子様のお誕生日プレゼントにしそう。

しかしながら、実際この本を子供が読んでも『ワケわっかんねー』という感想だけが残りそうです。

少なくとも私自身はそうでした。

いやごめん、正直いって、今も同じくワケわっかんねーっす。

ワケわっかんねー王子さまの一人語りを読んで、妙に繊細な気分にだけなっちゃって、なんだか心が繊細になっちゃったような(気のせい)気持ちになって、読んだ事実にだけ満足する。

ああ、罪深き星の王子さまマジック!

「ああ、わかったよ。だけど、どうしてきみはいつも謎みたいなことばかりいうの?」と王子さまがいった。
「謎は全部おれが解く」と蛇がいった。
そして二人は黙りこんだ。

しかし、大人になってこの本を読み返すと、子供の頃とはまた違った発見があるものです。

それは、バラ。

美しいバラの花に見る、女の手練手管。

王子さまの故郷の星には、一輪のバラが咲いているのですが。こいつすげーよ。バブル世代の高飛車オンナ並みの女王様ぶりです。

常に男(王子さま)に奉仕を求め、男(王子さま)の奉仕への文句は絶えることなく。

そして奉仕に疲れきった男(王子さま)が星を去ろうとすると、途端にしおらしく反省して、けなげな女(バラ)のそぶりを見せます。

「アタシは大丈夫よ、あなたの思うままに生きて」みたいな。

去り際をキレイにすることが余韻を残すことにつながることもちゃんと知っている、オンナ偏差値の高いバラです。

で、まあ、男なんざそういうオンナの手練手管にころっと騙されちゃうもんだから、王子さまも例外ではありません。

「あのころは何もわかっていなかったんだ。彼女の言葉ではなくて行動で判断するべきだった。彼女はぼくの星をいい匂いで満たしてくれた。ぼくの生活に灯をともしてくれた。ぼくは逃げたりしてはいけなかったんだ。つまらない見せかけの裏にあるやさしさをちゃんと理解するべきだった。花のすることは矛盾だらけだ。それにしても、ぼくは幼すぎて、花を愛するということがわからなかった」

おーい、王子さまー。

オンナの策略にまんまとのせられているぞー。

そして王子さまは最終的に、地球の肉体を脱ぎ捨てて、愛する女(バラ)の元へ戻って行く訳です。

戻ったって、結局同じなのにねえ。

男っつーのは、ちょろいもんだねえ。

しかし娘にこういう感想を述べると、さらに母の卑俗さが露呈してしまいそう。

遠足当日が雨になって、娘が『星の王子さまミュージアム』に行ったらどうしよう。
神様お願い、どうか「星の王子さま」について語り合う日が来ませんように。晴れたらいいね、晴れたらいいねbyドリームズ・カム・トゥルー。

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