簡易宿泊所で暮らす晴男はレイプ現場を中年女性・優子に目撃され、彼女の家につれていかれる。そこには同じ格好をした十名ほどが「家族」として暮らしていた。おぞましい儀式を経て一員となった晴男は、居住者は優子に虐待されていることを知る。一方、区役所で働く北島は、中学時代の初恋相手だった愛香と再会し「家族」での窮状をきく。北島は愛香を救い出す可能性を探るが、“悪魔”が立ちはだかる。
(「BOOK」データベースより)
「修羅の家って、どんな家?」
と、私の部屋でこの本を見つけた娘が聞きました。
心優しい母である私は、小説に登場する“家族”の儀式—-主人公が「修羅の家」の“家族”の一員になるための儀式について説明してあげました。
「そりゃあ…修羅だわ」
「家族になるためのハードルが高すぎる」
「私たちは一生、家族にはなれないんだね…」
うん。私もそう思う。
どんな儀式かってのは、ナイショです。
血しぶきが飛び、やがて皮膚片、肉片のようなものまでが飛んでいた。疲れから、俺の力も少しずつ弱くなっていったはずだが、その光景に優子も文句は言わなかった。
四十発目で、光男は崩れ落ちた。やめていいとは言われなかったので、俺は最後の十発を光男の太股へ叩き込んで優子を振り返った。
「これでいいですか」
優子の顔が上気し、目が潤んでいるのが分かった。
「ああ。よくやった。やっぱりあんたはあたしの思った通りの男だった」
この小説「修羅の家」は、2002年に発覚した北九州監禁事件をモチーフにしています。んー我孫子さんが別にそう明かしている訳じゃないけど、誰が読んだってそう思うべな。
我孫子武丸では未読の「監禁探偵」なる本も、タイトルと内容紹介を見る限りシチュエーション的には実際に起こったある事件を彷彿とさせる…ような気がする。どうした我孫子、社会派狙いか?
ちなみに「監禁探偵」は未読です。これから先も当ブログで「監禁探偵」をご紹介することはないでしょう。絶対読まない。絶対読まないよ我孫子さん!
娘を持つ母としては、タイトルと内容紹介から想像される“あの”事件を、楽しく読もうという気には到底なれないのですよ。とか言って、私の想像が全然的外れである可能性も無きにしも非ず。もしそうだったら誰か教えてください。
さて、修羅。修羅というか、グロ。
我孫子武丸は定期的にグロ系を執筆する決まりがあります。殺戮にいたる病しかり、狼と兎のゲーム(これは既読だけどブログには載せない。理由は監禁探偵と同じ)しかり。この修羅の家もしかり。
なんでしょうか我孫子さん。定期的に毒を吐いてガス抜きする必要があるのでしょうか。
他のグロ系作品と同様、修羅の家でもハナから飛ばしていきます。いやー。いやー、なの。冒頭で申し上げた“家族になるための儀式”以外にもグロ話は続く。どんどん続く。ラストにもまだ物足りなかったのか、不要と思われるグロまでついでにプラス。我孫子先生、思う存分欲求を満足させております。
あのね。我孫子先生、私ね。私としては我孫子先生のほっこり系が好きなの。鞠小路鞠夫から入った私としては寂しいの。極私的・我孫子武丸ベストは探偵映画なの。ほっこり系好みなんだよ、よろしく頼むよほっこりおさせてくれよ。
……でも我孫子武丸は、大石圭的グロ作家ではなくミステリ作家であることを忘れちゃならない。
「修羅の家」を読み始めると、冒頭で妙な違和感を感じるんですよ。そこからの話があまりにもとんでもないのでについ忘れてしまいますが、物語後半になって違和感の理由が判明します。
あーそういうことだったのね!
だよね、あれが問題にならずにスルーされてしまう訳ないもんね!と。
当ブログをご覧の皆様には、ここでその種明かしをしましょう。修羅の家をミステリとして読みたい方は、以下はスルーで。修羅の家をグロ話として読みたい方は、このままお読み進めください。
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まどかちゃんは南極方面の人。
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上記でピンときた方は、違和感の理由が分かる。
それと同時に、自らのピンク方面の知識レベルも分かる。
レベルが高いからと言って、それが自慢になるわけじゃない。