末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには八年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして十二年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。第十回吉川英治文学新人賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
死体を切断するのが大好きな島田荘司と、誘拐事件が大好きな岡嶋二人。
「バラバラの島田」「ひとさらいの岡嶋」と呼ばれていたのも今は昔。
しかし、今思えば酷い言われようだ…。
ほんのむしで、はじめて岡嶋二人という作家の存在を知って、もしこの書評をきっかけに「99%の誘拐」をはじめて読んで、
「いやぁ!岡嶋二人って面白い!他のも読もう!」
と、いう感想を抱いた方が、もしいるとしたら。
その人には予め謝っておこう。
ごめんなさい。岡嶋二人という、井上泉(現・井上夢人)と徳山諄一(現・田奈純一)の2名のコンビは、もう解散してしまって久しいので、この先いくら待っても新刊が登場することはありません。
あなたには最初から、作品を全て読破した後の“岡嶋ロス”が約束されているのです。
気持ちはよくわかるから、代わりに謝っとくわ。ごめんよ。
話を戻して「ひとさらいの岡嶋」の異名の通り誘拐モノが抜群に面白い岡嶋二人の、これが極私的最高峰。
スピード感があって、スマートで、スリリングで、ちょーちょー面白い!
だって誘拐犯が『犯人』と『身代金の運搬役』の一人二役を、警察と被害者の目の前で演じるのよ?
しかも誘拐された子供の前には、一度たりとも姿を現していないのよ?
そして誘拐犯は、自身も誘拐された被害者でもあるのよ?
こんなハラハラドキドキ感、ページをめくる手を止められる訳ないじゃありませんか。
この小説で使用される重要なアイテムのひとつは、今はもう懐かしのパソコン通信です。
ADSLですらなかった時代、テレホーダイになる午後11時を待って、いそいそとダイヤルアップ接続した昔が懐かしい。
昔の通信手段を使用しているとはいえ、今読んでも全く古さは感じませんよ…って、いまの時代に同じ事件を起こしたとしたら、実際どうなるかしら。
パソコン通信をLINEのチャットに置き換えて、子供にはスマートフォンを持参させて、自動音声はボーカロイドに喋らせて、フロッピーディスクをSDカードに変えても…ありだな。あり。2016年の今になっても、すごく新鮮。すごく斬新。
もうひとつ、小説の後半には重要なアイテムが登場します。
身代金の受け渡し場所に向かうために必要なもの。
10億もの身代金を、いかにして誘拐犯がゲットするか。しかも警察と関係者の目の前で。
ああっ!もう、この緊張感とスピードを、私が余すところなく語るのは難しいわ。
もし、このブログではじめて岡嶋二人という作家の存在を知った人がいるならば、今すぐ読みなさい。「99%の誘拐」を読みなさい。
ハマる確立99%。そして、他の岡嶋作品も読み漁る確立99%。
そして、作品を全て読破した後にやってくる、“岡嶋ロス”で脱力する確立、99%。
気持ちはよくわかるから、岡嶋二人の代わりに謝っとくわ。ごめんよ。