ホテル・コルテシア大阪で働く山岸尚美は、ある客たちの仮面に気づく。一方、東京で発生した殺人事件の捜査に当たる新田浩介は、一人の男に目をつけた。事件の夜、男は大阪にいたと主張するが、なぜかホテル名を言わない。殺人の疑いをかけられてでも守りたい秘密とは何なのか。お客さまの仮面を守り抜くのが彼女の仕事なら、犯人の仮面を暴くのが彼の職務。二人が出会う前の、それぞれの物語。「マスカレード」シリーズ第2弾。
(「BOOK」データベースより)
「姉さん、事件です!」
東野圭吾版“HOTEL”再び。
過去にご紹介の「マスカレード・ホテル」シリーズの2冊目です。とはいえ続編ではなく、スピンオフ作品というか、外伝の類ですね。
多分ねえ東野さん、このくだりが気に入っちゃったんだと思うの。
「ホテルを訪れる人々は仮面を被っている。お客様という仮面をね。それを剥がそうとしてはいけない」
そしてこのくだりを読む読者の脳裏に、再び少年隊の「仮面舞踏会」がエンドレス再生される訳ですが。
トゥナイヤイヤイヤイヤイヤイヤ、ティア。
という訳で、この本をお読みになる前には前作の「マスカレード・ホテル」から先に読みましょう。
じゃないとこの本の楽しさ半減。というより、さしてどーでも良い本になっちゃうのよ。
前作「マスカレード・ホテル」の主要登場人物2名。高級ホテルのフロントクラーク山岸尚美と、警視庁捜査一課の新田浩介。
「マスカレード・イブ」は、ふたりが出逢う前のいくつかの事件(?)エピソードを描いた短編集です。
まあちょいちょいミステリちっくな仕掛けもありますが、基本的には尚美と新田のキャラ押し小説の側面が主流です。
ふたりともまだ若く、血気盛んな新人時代のストーリーでして。前作でもピッキピキとんがっていた新田クンは、新人時代はさらにピッキピキ。肥大したプライドと高く伸びた鼻は、満員電車では迷惑になりそうなほどです。
だいたいねえ、被害者宅のリビング飾り棚を見て「バカラの『ダークサイド アン・パルフェ』ですね」とかわざわざ言っちゃって。「オレ知識あるー!オレお洒落ー!」と、新田クンが鼻の穴を広げている顔が目に浮かびます。しかもこのバカラ、事件には全然関係ないしね。
尚美ちゃんもフロント配属なりたてで、まだこっちもピキピキしてます。肩肘張って杓子定規なその様は、公園の砂場で作られたお山に割り箸ぶっ立てたみたいです。
とある事件の真相に気付き、それを黙認することは我慢したものの、ついどうしても一言いってやらずには気が収まらなかったり。かなーり失礼なこと言ってますけどね。大丈夫かお客さんだぞ。
この短編集では尚美編が2つ、新田編が2つ、計4編の短編が収録されておりますが、極私的にはいちばんのお気に入りは『仮面と覆面』です。
ホテルにカンヅメになった覆面作家と、作家ファン達の攻防戦。最後のちょっとしたドンデンも含めて、軽やかで楽しい一編ですよ。
上記でも申し上げました通り、この「マスカレード・イブ」は、「マスカレード・ホテル」で尚美ちゃんと新田クンのファンになった読者への、ファンサービスとして書かれたような一冊です。
お好きな方は是非どうぞ。
別にふたりのファンでなくても、さらっと軽やかにお仕事紹介モノを読みたい方も是非どうぞ。
そして前作「マスカレード・ホテル」で、少年隊の「仮面舞踏会」が脳内エンドレス再生されて困った人も、是非どうぞ。
再び少年隊の呪いに悩まされるが良いや。
あなたと私、ひとつのイヤフォンを片耳ずつ分け合うみたいに、同じ曲を一緒に聴こう。
トゥナイヤイヤイヤイヤイヤイヤ、ティア。