アフリカにすむ一頭のたいくつなキリンが、手紙を書きました。配達するのは、やはりたいくつなペリカン。「地平線のむこうでさいしょにあった動物」あてに書かれた手紙が、だれにとどいたかというと…そして、それからどうしたかっていうと…?キリンはいっていました。このお話、ひとりぼっちの人、たいくつな人、いそがしい人に、ぜひよんでもらいたい、ってね。小学中級から。
(「BOOK」データベースより)
我が家で購読している毎日新聞のコラムにて、この児童書がドイツの児童文学賞を受賞したことが紹介されていました。
よく知りませんが、何やら児童書の世界では権威のある賞らしく、日本人の書いた本が受賞するのは初めてだとのこと。
ミヒャエル・エンデの国だからなあ。ネバーエンディングストーリーbyリマールですね。
いつもなら「ふーん」で読み飛ばしそうなコラムに目を留めた理由は、作者 岩佐めぐみさんの顔写真。
めっさ美人なんですわ。
白黒の新聞紙面でも十分に分かる、色素が薄そうで繊細なお顔立ちの、めっさ美人。
さぞかし若い頃はモテモテで、息子の授業参観でも『岩佐のカーチャン、めっさ美人じゃん!』とお友達の評判であっただろうことが伺えそうな。
過去にご紹介した「筆談ホステス」と同じように、ビジュアル重視で作者の顔だけに興味をひかれて読んだのが「ぼくはアフリカにすむキリンといいます」です。
動機が、不純。
地平線のむこうに すむ きみへ
ぼくはアフリカにすむ キリンと いいます。
ながい首で ゆうめい です。
きみのことを おしえて ください。
キリンより
アフリカのペリカンさんが退屈しのぎにはじめた“ペリカン便”
最初のお客さんになったのが、やはり退屈していたキリンさんでした。
「あの地平線のむこうに行って、最初にであった動物にこの手紙を渡して!」
アフリカじゃ、動物じゃ、インターネットの出会い系サイトは使えませんからね。
知らない人とお友達になる手段もアナロギー。
「なかよし」や「りぼん」の最終ページ近くにあった文通コーナーのようなものですかね。
そういえば私 さくらも、小学生の頃になかよしの文通コーナーを見て、栃木の女の子に手紙を出したことがあったなあ。
今じゃ名前も覚えてない、本当に栃木だったかどうだかも定かではありませんが、あのコは今どうしているのかなあ。
キリンくん
ぼくは クジラ岬にすむ ペンギンといいます。
ぼくは、きみの手紙で はじめて 首というものを知りました。
ぼくには首がないのでしょうか?
それとも ぜんぶ 首なのでしょうか?
クジラ岬 ペンギンより
キリンさんのお手紙を受け取ったのはペンギンさん。
ペリカンさん、ずいぶん遠方まで頑張りましたね!
地平線の向こうって言っても、行くにはずいぶん遠いですものね。
キリンさんとペンギンさんの間には、その後も何回かの手紙のやりとりがございまして。
なにせアフリカのペンギンと、どこだかわからないけどクジラ岬のペンギンですからねえ。
“首”の概念もイマイチわからず、ペンギンはクジラ先生の尻尾の付け根を“首”だと認識する始末です。
「先生、どうやら先生の首はこのあたりのようでーす。ほそくなっていまーす。——ということは、先生は すごーく頭が大きいんですねー。からだのほとんどが、頭といってもいいくらいでーす。——そうか、だから先生は、頭がいいんですねー。」
文通相手のペンギンさん、いったいどんな恰好をしているのだろう?
どうやら首がないらしい。どうやらペリカンと同じように、くちばしがあるらしい。体色は白と黒で、どうやらシマウマと同じらしい。
アフリカの動物の姿から、見たこともないペンギンの姿をあれやこれやと想像して。
「どうやら、こんなんじゃね?」と、考えた想像図。
そして、その想像図と同じ恰好をして、実際にペンギンさんに逢いに行こうと考えたキリンさん。
首をなくして、羽と水かきとくちばしを付けて、白黒シマウマ模様の布を巻いて。
いざ、クジラ岬へ!
寒 そ う だ。
キリンさんのペンギン仮装の絵柄をお見せしたいのは山々ですが、これはちょっと、読んでない人にはお見せできないなあ!
いかだに乗って海の向こうから現れたキリン(ペンギン仮装)の姿は、かなりシュールです。
大きさ的にも、結構なホラーなんじゃないかと。
だれかがいいました。
「まさか……」
ほかのだれかもいいます。
「……ちっともにてない。」
また、ほかのだれかが……。はくしゅでむかえるはずだったのに、みんなちんもくしてしまいました。
さてそれから、どうなったかって?
児童書なのでね、基本ハッピーエンドですよ。
そしてね、これを読んでね、“文通”って楽しいな、と思う訳です。
メールでもなく、SNSでもなく、アナロギーなお手紙の文通。
個人情報保護の関係で、今じゃ少女マンガ雑誌でも、おそらく文通コーナーは廃止されているんでしょうけどね。
あれはあれで、ちょっとワクワクしたよなあ、と、かつての自分を懐かしく思い出しました。
小学生のお子さんがいるお父さんお母さんは、子供に読ませながら、ついでに読んでみそ。
小学生の子供がいなくても、機会があったら読んでみそ。
例えきっかけが『作者が美人』だったとしても、予想以上に面白くてびっくりするかもしれない。
本には、いろいろな出会い方があるものです。