偕成社「偕成社文庫発刊に際して」

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地味に自己満足で続ける各出版社刊行の辞シリーズ。

かつて世界思想社教学社の「『世界思想ゼミナール』について」をご紹介した際、私はこんな風に申し上げました。

多分私が欲しいのは、熱量なんです。

じゃ、刊行の辞に署名が入っていりゃ熱量があるかと言われたら「うーむ」と唸りますが、でも法人とか団体とかの無機質な刊行の辞より、人間の血潮を感じる文章の方がより読者にコミットするような気がいたしませんか?しませんかそうですか。

講談社学術文庫「講談社学術文庫の刊行に当たって」の際にも申し上げましたが、刊行の辞ってジュブナイル文庫・新書には結構あるんですよ。でも署名がないの。それがさくらちゃんは悲しくて。

さて!それがですね。見つけたんですよ私。「はらぺこあおむし」とかの絵本を出してる児童書専門出版社の偕成社さんが出しているジュブナイル向け文庫。

しかも署名入り!しかも紹介文ではなく文庫立ち上げの声明文として!

そう、そうそうそう!
やっぱり刊行の辞はこうでなくっちゃ!

偕成社文庫発刊に際して

今村 廣

文化は人類存在の唯一の証しであり、その根源はわたしたちひとりひとりの心の深奥に発する。本を通しての心の営みが文化を支える重要な柱であるとの認識は、児童出版をもって文化の進展に寄与しようとするわが社出版理念の原点である。
第二次大戦後三十年、わたしたちの生活はいちおうの向上を見た。テレビ、新聞、雑誌等のマスメディアは盛況をきわめ、教育の普及も世界の最先端にある。だが一歩内実に立ちいったとき、わたしたちはそこに真の精神の躍動と豊かな実りの芽を見いだすことかできるであろうか。子どもたちも、テレビ、雑誌、マンガの氾濫と、受験競争との両極にはさまれて、たくましい知的好奇心をのばし豊かな心を育てる人間形成の基本に欠けるところが大きい。わたしたちは読書万能をとなえるものではないが、いまこそ声を大にして、本を通しての知的触発と精神錬磨の重要性を強調したいと思う。
こうした見地からわたしたちは良書を入手しやすい形で常時提供するという出版社本来の義務をはたすため、偕成社文庫の発刊に踏みきった。すなわち戦後発表された日本の児童文学を主体に、ノンフィクション、外国作品にいたるまで現在および将来に読みつがるべき秀作を幅ひろく刊行することを本旨とする。具体的には第一に埋もれた良書の再発掘をふくめて一定水準以上の作品を継続的に供給し、第二に印刷造本の簡素化により低廉な価格の実現をはかろうとするものである。とくに収録作品の質を高くたもつことによって本文庫の声価を維持し読者に適書選択の手がかりを供することも本文庫の大きなねらいである。わたしたちは偕成社文庫を一時的脚光をあびる出版でなく、地味なから永遠に子どもたちとともにある事業として維持推進することをここに誓う。

一九七五年十一月

だよねぇ~。
やっぱり刊行の辞はこうでなくっちゃねえぇ~。

しかし偕成社文庫ができたのは1975年。今からもう46年も前。

だけど「偕成社文庫発刊に際して」に書かれている文章は、2021年の今に置き換えて読んでもまったく状況に変わるところがない。

令和になって「わたしたちの生活はいちおうの向上を見た」

「テレビ、新聞、雑誌等のマスメディアは盛況をきわめ」さらにネットという新しいメディアもある。

「教育の普及も世界の最先端」少なくともオンライン授業とか、最新ツールは存在している。

「子どもたちも、テレビ、雑誌、マンガの氾濫と、受験競争との両極に」「たくましい知的好奇心をのばし豊かな心を育てる人間形成の基本に欠けるところが大きい」のは、子どもだけに限った話じゃない。

この刊行の辞を書いたのは偕成社の前社長 今村廣氏(2008年没)ですが。

今村さん、残念ながら46年経った今でも、世の中はほとんど変わってないみたいです。

「いまこそ声を大にして、本を通しての知的触発と精神錬磨の重要性を強調」を、今一度、今一度お空の上から強調して頂けませんでしょうか。

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レビュアー: さくら
さくら
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