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五十嵐貴久「リカ」

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妻子を愛する42歳の平凡な会社員、本間は、出来心で始めた「出会い系」で「リカ」と名乗る女性と知り合う。しかし彼女は、恐るべき“怪物”だった。長い黒髪を振り乱し、常軌を逸した手段でストーキングをするリカ。その狂気に追いつめられた本間は、意を決し怪物と対決する。単行本未発表の衝撃のエピローグがついた完全版。第2回ホラーサスペンス大賞受賞。
(「BOOK」データベースより)

私がかつてダイビングのネットサークルに所属していた時、オフ会で初めて会った女性の方に

「杉田さんって男性の方だとばかり思ってました」

と、言われたことがあります。

その数年後、今度はmixiのミク友さんに

「おすぎさんって男の人じゃなかったの?!」

と、びっくりされたことがあります。

いずれも、自分としては特にネナベを気取る気もなく、普通の話し言葉でキーボードをポチポチ打っていただけなのですが、どうして男性に間違えられるんだろう?

現在「ほんのむし」において、紹介画像を女顔にしたり主婦だ母だ女性だと、過剰なまでのオンナアピールをしているのは、次こそは男に間違えられまいとする気持ちが作用している面も、多分にある。

かように、パソコン(あるいはスマホ)の向こう側にいる人物を知るのは、難しいものです。

だから、出会い系サイトに手を出す時はご用心。

パソコンの向こう側の相手が、リカみたいな女だったら大変でしょ?

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平凡なサラリーマンの本間貴雄が、好奇心とちょっとしたエロ心から始めたネット出会い系サイト。

いやこいつハマるハマる。キミキミその情熱を、お仕事に向けたらもっと出世するんじゃないかい?と忠告したくなるくらい、本間は出会い系サイトで「いかに女を釣り上げるか」の技をブラッシュアップさせて行きます。

成功と失敗を検証し次に生かすPDCAサイクル。まさに、エロと金は進化の原動力ですね。

とはいえ、それで終わっちゃお話にならない。

出会い系サイトでウッキウキの本間さんが最後に釣り上げちゃったのは、超大型魚。腐臭ただよう怪魚でした。

こんにちわ、はじめまして/
都内の病院に勤めている、看護婦のリカです/
今年の春に彼氏と別れてしまってから、楽しい出会いがありません/
病院と家との往復ばっかりで、ちょっと息がつまりそう/
外で遊んだりするのはあんまり得意じゃなくて、家でまったりするのが好きなわたしですが/
誰かにこんなわたしを変えてほしい、なんて思っています/
よかったら、メールの交換からはじめてみませんか?/内気で、話もうまくないし、こんなことをするのはじめてだから、面白くないかもしれないけど/
でも、待ってます。楽しく続けられるひとがいいなあ/
よろしく、リカ

プリティな「リカ」のプロフィールに、エロ心満載で飛びついた本間さん。

しかしリアルでも思うのですが、どうして男性ってこんな無邪気なんでしょうね?危機意識が低いというか。

男性と女性の力(腕力)の差により優位性を持つのか、本間さんの無防備さ加減には呆れるばかりな気がします。ブログで個人情報タレ流している私に言われたくないって?はい、そうですね。

最初はリカとのメール&電話でウキウキだった本間さんですが、徐々にリカの粘着ぶりに辟易していきます。

連続のメール、溢れかえる留守電の伝言、複数のサイトでの荒らし。

携帯電話を処分して、やれやれこれで縁が切れたと思いきや、ストーカーと化したリカはそんな事では収まらず。

教えていない筈の本名と会社、自宅の住所まで知られ、目の前にあらわれたリカの姿は…。

はい!ここからリカちゃん新たなるステージへ!
単なるストーカーではなく、超常的なモンスターに変貌します!

いきなり運転手が女の顔を見て絶叫した。女のマスクが外れている。
切れ長の二重の瞳。小さな鼻。整った顎のライン。薄い唇。その顔は、ひとつひとつのパーツを見る限り美しいものだった。だが、そこにあるのは美の残骸だった。

望月峯太郎の「座敷女」というホラー漫画があるのですが、そこに出てくるサチコという“座敷女”に、リカの姿は非常に近い。

「座敷女」を知らない人はググって画像検索を。ほら、怖いでしょ?黒髪ストレートの大女というのは、世の男性にとって脅威的なイメージなんでしょうか。

ビジュアルの恐ろしさも、不気味な雰囲気も、通常ではありえないような敏捷さと怪力も、サチコとリカとは共通する点が多々あるのですが、ただひとつリカにあってサチコに無いものというのは、匂い。

リカに近付いた人達が皆口を揃えて言う「臭気」魚の腐ったような、腐った卵に酢を混ぜたような、何とも形容の付け難い匂いが「リカ」の不気味さアップに大きく貢献しています。

本を読みながら、ページの間から立ちのぼるような匂いがして、臭い!臭いよ~!(泣)

モンスターリカちゃんが本間さんをどのように追いつめていくのか、とか、過去の事件、とか、リカを追っていた探偵が、とか、四方八方リカちゃん大奮闘なのですが。

それは本をお読み頂くとして、ここで一つご注意を。
もし「リカ」をこれから読もうとする方がいらっしゃいましたら、購入時には単行本を買わないようにご注意ください。

幻冬舎出版の「リカ」文庫本には、単行本の出版時には描かれていなかったエピローグが追加されているので、買うなら必ず文庫本で。

単行本のラストでも怖さはありますが、文庫版のエピローグは『毒食らわば皿まで』的な、むっちゃ気持ち悪いラストです。

せっかくなんで皿までバリバリ食おーぜ。むっちゃグロいから。文庫で。文庫で是非。

パソコン(あるいはスマホ)で、ちょっとした好奇心とちょっとしたエロ心を満たしてみようかと考えている、無邪気な男性諸君。

出会い系サイトをはじめるんだったら、ご用心。
送られてくるプリティなメッセージは「もしもし、あたしリカちゃん」…かもしれないよ?

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