もうすぐ二十八歳の誕生日を迎える瑞穂が親友からボーイズクラブのカードをもらう。最高の年齢のはずの二十七歳が、セックスはおろかキスさえせずに終わろうとしていた。迷った末クラブに連絡すると…。「娼年」のプレストーリーの表題作を始め、倒錯、童貞、近親など愉悦の世界を美しく描いた八つの物語。
(講談社文庫巻末紹介より)
上記で引用した講談社文庫の巻末紹介文、愉悦の世界の中に「童貞」が含まれているのはどういうことなんでしょう。果たして童貞が愉悦か否か、まずはそこから考えねばならん。
さて。この「初めて彼を買った日」を当ブログで採りあげようとして、表題作『初めて彼を買った日』の元ネタとなる「娼年」「逝年」「爽年」のクラブ・パッション三部作を採りあげていないことに気がつきました。
あれー?どうしてだろう。結構お気に入りなんですが。最後の「爽年」はともかくとして。
となると、サイドストーリー「初めて彼を買った日」からご紹介しちゃっては片手落ちになる可能性あり。先にクラブ・パッション三部作をご紹介すべきでしょうか。
…いや、でも多分しない。多分。
なぜならクラブ・パッション三部作を連投でご紹介すると、Google先生に怒られちゃうかもしれないから。
「娼年」「逝年」「爽年」の舞台であるクラブ・パッションとは、1時間1万円で素敵な男子が女性のお相手をしてくれる(映画も食事も買い物も、もちろんベッドのお相手も)ボーイズクラブです。レンタル彼氏と言いますか、女性版デリヘルみたいなもんかな。
で、話の内容は主人公リョウくんがクラブ・パッションで働きながら(最初はバイト、その後マダムの死去によりクラブ経営も兼ねるプレイングマネージャー)数多の女性と密接かつ親密な交流を図り、女性と快楽の大いなる海に船を漕ぎ出すという話です。
まあ総じて言えばかなりエロみの強い三部作。詳しく内容をご紹介しようとすると、いきおいブログの内容もエロみが強くなり、Google先生から不適切なコンテンツだと指摘される恐れがあります。
と言うわけで、クラブ・パッション三部作はおそらく今後もご紹介することはないでしょう。興味のある方は自分でお読みになって。面白いよ。「爽年」は別として。
「初めて彼を買った日」は表題作である娼年サイドストーリー以外に、7つの短編が収録された短編集です。
1編を除いていずれもエロみが強めの短編。ちなみにエロみが強くない1編『あの静かで特別な夏』はコロナ収束後の世界を描いた掌編です。同じ世界が早くリアルでも訪れますように。
「いってらっしゃいませ」
若い制服の男性が笑顔で扉を支えてくれる。タクシー乗り場に向かった。そこではフロント係も、ドアマンも、タクシー運転手も、もう誰ひとりマスクをしていなかった。もちろん、わたしと芙美奈も。
コロナは去り、世界には新しい夏がきていた。
娼年もそうですが、それ以外でも石田衣良は定期的にセックスを肯定的に描いた短編もしくは長編を執筆して、日本の少子化対策に貢献しています。
「健全にやらしく、もっとセックス」
人と人とがつながる幸せ。どうせつながるならば、より楽しくつながる幸せ。
やることやらないと子供は生まれないからね。前安倍総理もさぞ石田衣良氏には感謝していることでしょう。知らんけど。
英彰はそのまますすんだ。抵抗はあるが、ひどくなめらかな抵抗だった。こうして体液を混ぜあわせ、命の素を女性の身体の奥深くへ送り届けること。ここにはなにひとつ新しいことなどなかった。人間は何千世代もこれを繰り返して生きてきたのだろう。どんな命もこのなめらかな前進と後退から逃れることはできない。
この「初めて彼を買った日」あるいは石田衣良のエロみ強めな小説群を読んだ方が、ああ恋愛っていいなあ、セックスっていいなあとの感想に至り、日本の少子化に少しでも歯止めがかかれば石田衣良も本望でしょうか。とはいえ別に皆が皆ビバセックス状態になる義務はありません。戦争を題材にした小説を読んで戦争しなくても良いのと同じです。
それよりも何よりも、私はこの記事でエロだのセックスだの連発して、またGoogle先生に怒られやしないかと、そっちの方が気がかりです
願わくばGoogle先生が、自然で温かい幸せなセックスを、不適切なコンテンツだと見なしませんように。