「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師。終業式のホームルームでの告白から、この物語は始まる。「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々に変わる語り手によって、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。
(「BOOK」データベースより)
第6回(2009年) 本屋大賞受賞作。
普通の小説だったら、第一章のラストが全体的な小説のオチになっているところですね。
それが、湊かなえ的にはここからがスタートとしているのがまあでっかいこと。
「告白」は第一章だけ取り出して、ちとつの短編小説として読んでも成立しちゃいますよ。
お時間ない方もしくは長文活字が苦手な向きは第一章だけお読みあそばせ。
いや、いやいやまあまあ、そんな事言わずにもったいないから最後まで読んでよ。
第一章まで読みきっちゃったら、その先が読みたくなるからさ。
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以下ネタバレしますが、第一章の語り手である森口先生が、娘を殺された復讐のために、犯人に摂取させ(ようとした)もの。
エイズで死んだ恋人の血液。
森口先生の計画では、実際のところ対象者がHIVに感染する確立は低いと、森口先生自身も自覚しています。
まあ、森口先生も感染自体が主目的じゃあないって事で、それはそれで良しと。
そこで、話は変わってエイズについて。
最近歌手のプリンスが亡くなり、世代的にドストライクのさくらとしては諸行無常な気持ちな訳ですよ。こないだはデヴィット・ボウイも死んだしね。かなり諸行無常よ。
で、嘘かホントか知らねども、プリンスは亡くなる前にエイズを発症していたとかいないとか。ネットのニュースでそんな話が飛び交っています。
エイズという病気が知られるようになってから30年余、今ではHIVウィルスを抑える薬が開発されて、HIVに感染してもほぼ確実にエイズの発症を抑えることができるらしいですね(と、北海道大学病院のホームページに書いてありました)
“HIV=エイズ=死”というイメージであった昔と比べると隔世の感。
そしてもうひとつ隔世の感。
最近のエイズのイメージって「ホモがかかる病気」ではないんですね!
1980年代、エイズという病気が取り沙汰されはじめた頃は、エイズは別名ゲイキャンサーとも呼ばれていたように、ホモセクシャル・ゲイ・同性愛者の奇病のイメージがありました。
当初に発見されたエイズ患者が、同性愛者の率が多かったという理由なだけなんですけどね。
今では同性愛者であろうと、異性愛者であろうと、取るべき予防策をとらない性行為では全くHIV感染のリスクは同じだと認識されてます。
で、イマドキの若人代表である15歳の我が娘に聞いたら。
HIVとエイズに関する知識は当然知ってはいても、過去に「エイズ=ホモ」のイメージが存在したことについては、全く知りませんでした。
その事実に母はびっくり。そんなイメージがあったことに娘もびっくり。
そりゃぁーそうよねえぇー。保健体育の授業で、そんな話しないもんねえぇー。
プリンス死去のニュースに歳月の重さを感じ、娘との会話でジェネレーションギャップを感じ。
まさか「告白」とエイズで、失われし若さという現実を感じ入る日が来るとは思いもしなかった。
ああ、過ぎ去りし青春の時よ。