記事内に広告が含まれています

恒川光太郎,東雅夫「ゆうれいのまち」

スポンサーリンク
スポンサーリンク

真夜中に、友だちからあそびに行こうと誘われた。家を出ると、丘の向こうに「ゆうれいのまち」がひろがっていた。のぞいていたら、ゆうれいたちが追ってきて…。たすけて!
(岩崎書店内容紹介より)

あれ?怪談えほんシリーズって、ミステリ作家と絵本作家のコラボ企画じゃなかったっけ。
恒川光太郎といえばホラーの人。そして、恒川光太郎の書く小説の主人公は、みんなどっか遠くに旅立っちゃいます。
「ゆうれいのまち」も然り。つまりこの絵本は、子供向け恒川光太郎お試し絵本ということですね。
 

…いたいけな子供を沢木耕太郎的深夜特急に乗せちゃ、駄目っ!

「ねえ これから あそびにいこう/こんばん もりのむこうに/ゆうれいのまちが あらわれるんだ/みにいこうよ」

“ぼく”が夜中に寝ていると、窓を叩く友達の声。
この友達、ロクでもないヤツです。
家を抜け出して夜遊びに誘う不良。自分はちゃんと服を着ているのに、“ぼく”にはパジャマから着替える暇さえ与えない性急さ。
悪いお友達とはお付き合いしちゃいけません!という教育ママ的発言をついしたくなるような、PTA的にはbad friendですね。
ていうか、パジャマ姿で窓から脱出する“ぼく”って裸足なんじゃない?しかし絵を見ると友達までもが裸足。WHY?“ぼく”だけならともかく、何故友人まで裸足?アベベ?
 

丘を越えてどこまでも続く街並みを越えて、二人は『ゆうれいのまち』を目指します。
そっと“かげおどる ひろば”を覗いたら、そこは『ゆうれいのまち』。

つかまえろ つかまえろ

幽霊というより妖怪のような形状の『ゆうれい』に見つかった子供達。
逃げなければ走らなければ捕まってしまう。まって まって おいていかないで

おい友人!
お前ひとりだけグングン逃げてんじゃねー!

 

友人は、遅れる“ぼく”を振り捨ててあっという間に逃げ去ってしまいます。さすが不良友人。自分が助かるためには仲間を切り捨てるのもためらわない冷酷さです。貴様が連れてきた友人なんだからちょっとは面倒見んかい。

そういえば、かつて知人が沖縄の離島にダイビングでサメに襲われかけた時、ダイビングショップのガイドが客(知人含む)を置き去りにして猛スピードで自分だけ浮上していったという話を聞いたことがありました。
サメは威嚇だけで攻撃はせず、ツアー客は全員無事だったらしいのですが、その後ショップの信用度は地に落ちたとか落ちなかったとか。
いやあ、イザって時に人間性って現れるものですね~。
 

“ぼく”は結局ゆうれいに捕まってしまって。
殺されちゃう?いやいや。食べられちゃう?いやいや。
“ぼく”は『ゆうれいのまち』で暮らし始めます。
 

幽霊の学校に行き、幽霊の食べ物を食べ、幽霊の公園で遊び、幽霊の歌を歌い。

やがて ごねんがすぎ、じゅうねんがすぎ、さらにもっと ときがすぎ
ぼくは なにもかもわすれて おとなになった

“ぼく”ーーーーーーー!
子供の頃のパジャマを着たまんまの“ぼく”ーーーーーー!
パジャマの長ズボンが半ズボンになっちゃってるのはまだ良しとしても、腹!腹!腹出てっから!
というより、それだけ大きく成長したら、肩を通すだけで気功師みたいな技が必要だから。
 

“ぼく”が住んでいた元々の世界で、ひとりの子供が消えた事実がどうなったのかは、一切「ゆうれいのまち」には描かれておりません。
誘拐事件になったのか、神隠しにあったのか、全くそれはわからない。
 

だけど、幽霊の町で大人になった“僕”は、そのまま幽霊の町で幸せな人生が送れるのかというと。
 

決してそうではありませぬ。

はるのまよなか
まどが ガタガタと おとを たてた

「みつけた ぼくだよ ここにいたんだね
 ねえあそぼう つぎのまちに いこう」

友人と共に子供に返り旅に出る、無限ループの春の夜の夢。
 

この絵本は、悪いお友達とはお付き合いしちゃいけません!という教育ママ的な教訓を教え諭す為にあるのでしょうか。
いやまさかね。でもほんとマジ、友達えらぼーぜ。ぼく。

タイトルとURLをコピーしました