さあ来たぞ。この世で最も登場人物に容赦ないジョナサン・キャロルの《月の骨シリーズ》第1作。
あたしはとっても幸せ。この世でいちばんすてきな旦那さまがいるし、おなかには二人の赤ちゃんも。でも最近、変な夢を見はじめた。ロンデュア、これが夢の世界の名前。あたしとあたしの息子のペプシは、五本の月の骨を探すためにその世界に帰ってきたのだ。やがて夢が現実に、そして現実が夢に少しずつ忍びこみはじめたとき…衝撃の傑作。
(「BOOK」データベースより)
上記の内容紹介に騙されちゃあ、いけない。
美人で、素敵な旦那様がいて、可愛い赤ちゃんがいて、素敵な友達がいて、幸せいっぱいの主人公・・・ジョナサン・キャロルが、登場人物をそんな幸せな状況下に置いておくと思いますか?
小説はちょいハーレクインロマンス調で、ロマンチックな流れで心地よく読ませていきます。
カレンの夢の中の話も、普通のファンタジーで「面白いじゃない」くらいな感じ。
読んでいけばいくほど登場人物を応援したくなっていきます。
だって魅力的なんですもの!特に夫のダニー!こんな男を夫として独占しているだけで、カレンは既に犯罪者だ。
特に好きだったのは鋏のコンサートの後。帰り道でダニーが3本の鋏を買って
『うちへ帰ってアンコールといこうよ!』
ね?キュートでしょ?
ジョナサン・キャロルの本は、こういう小さなキラッキラしたエピソードがいくつも書かれているんです。
そうこうしている間に、ついつい読んでる側は感情移入して、ついつい「このまま幸せに終わってくれい」と願ってしまいます。
だ・が。
そうはいかないのがダークファンタジー。最後の最後でちゃぶ台をひっくり返すのがジョナサン・キャロルの技です。
それも読者の一番柔らかい箇所を狙い打ち!「ここだけはそっとしておいて!」と願う読者の心をポキポキ折るのよ。
「月の骨」のラストでジョナサン・キャロルがどうやってポッキー並みに心を折ったのかは、実際に本を読んで下さい。
あぁ、でも読むんだったらね、登場人物に感情移入はしないようにね。
特定の人物の幸せを願わないようにね。
油断して「このまま何事もなく終わるんじゃないか」とか思わないようにね。
多分無理だが。
検討を祈る!