北海道根室半島沖の北太平洋に浮かぶ石油掘削基地で、職員全員が無残な死体となって発見された。救助に向かった陸上自衛官三等陸佐の廻田と、感染症学者の富樫博士らは、政府から被害拡大を阻止するよう命じられた。北海道本島でも同様の事件が起こり、彼らはある法則を見出すが…。未曾有の危機に立ち向かう!壮大なスケールで「未知の恐怖」との闘いを描くパニック・スリラー。2013年第11回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
この小説、虫ギライなウチの娘が読んだら、発狂するな。
「生存者ゼロ」は、前半と後半で、大きく印象が異なります。
前半は未知の病原体によるパンデミックの恐怖と、その対策に翻弄される人々が中心。
中心人物となる自衛隊員の廻田と、感染症学者の富樫。それぞれ、自分の過失によって人を死なせた過去を持ち、心の傷が未だ癒えずにおります。
特に富樫博士。過去の傷を忘れるためにコカインに手を出し、コカインの中毒症状によってどんどんマッドなサイエンティストと化していきます。マッドもマッド。もうこれエクソシストの世界、悪魔憑きだから。
最初に根室半島沖の石油掘削プラットフォーム、そして北海道の中標津で発見された未知の感染症というのは、致死率100%。感染後は潜伏期間も何もなく、極悪な細菌によって一気に皮膚や内臓まで爛れて死亡します。
治癒した者は、ゼロ。生存者も、ゼロ。
死体から採取した細菌は、これまで見たこともない特殊な形状をしたもの。
でも、その細菌は、それ自体では人体に害を及ぼすような性質ではない。
何故、感染者は未知の、無害な細菌によって無残な死体に成り果てたのか?
謎が深まる中、さらに被害は拡大し、紋別から北見、足寄、帯広に至る道東で8万人もの市民が被害にあう。
北海道中を襲うパニック。孤立する日本。迷走する政府。
忍び寄るパンデミックの危機。
…ってー!
唐突に物語は急展開し、未知の感染症の正体が明らかになるのですか。
パンデミックって、って、なにこれパンデミックじゃなくって、それなの?!
「生存者ゼロ」の文庫本解説で香山二三郎さんが、この小説後半の急展開を 岸和田だんじり祭の「やりまわし」も顔負けと評しております。上手いこと言うもんだなあコラムニストって。
その通り、まさかまさかのひっくり返りっぷりです。よもやストーリーの前半で、この正体に気付いた人はおらんめえ。
そして“未知の感染症”の原因が判明すると同時に、物語は一気呵成にパニックサスペンス物として、怒涛のごとく進んでいくのであります。
いや後半になると突然B級映画感がハンパないんだがw
これを映画で言うなら「スクワーム」か「黒い絨毯」か。私のイメージ上では「アタック・オブ・ザ・キラートマト」なんだけど分かって頂けますでしょうか。
未読の人にネタバレするのは本意じゃないので“未知の感染症”の正体については言わぬが花…って、殆ど書いてるようなもんだけどね。ほんのむし を読んだ己が不運を恨んで。
言わぬが花、なので以下は私のひとりごと。
虫といえば、いつも思い出す話がありまして。
我が娘がまだちっこかった時に、旦那のおばあちゃん(つまり娘の曾祖母)の家に遊びに行ったんですよ。
おばあちゃんの家の玄関には花壇がありまして。
娘が花壇のお花を覗き込んでいたところ
「おかーさーん、ダンゴムシ~♪」
見ると花壇のすみっこ、葉っぱのカゲに大量のダンゴムシがうじゃうじゃと!
OHHHHHHH!
当時はまだ虫キライではなかった娘は、ビビって固まる母をよそに曽祖母にも声をかける。
「おばーちゃーん、ダンゴムシ~♪」
おばあちゃん慌てず騒がず
「ああ、いっぱいいんだよな~」
と素手で大量のダンゴムシをブチブチと!
NOHHHHHHHHHHHHHHH!
生存者ゼロの世界で生き残る人間がいるとするならば、それはウチのおばーちゃんだ。