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綾辻行人「時計館の殺人」

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鎌倉の外れに建つ謎の館、時計館。角島・十角館の惨劇を知る江南孝明は、オカルト雑誌の“取材班”の一員としてこの館を訪れる。館に棲むという少女の亡霊と接触した交霊会の夜、忽然と姿を消す美貌の霊能者。閉ざされた館内ではそして、恐るべき殺人劇の幕が上がる!
(「BOOK」データベースより)

第45回日本推理作家協会賞受賞作品。

“館シリーズ”といったら、やっぱり、綾辻行人ですよねえ。
異能の建築家・中村青司の建築した『○○館』。常に館の中では連続殺人が起きる。
縁起、わるっ。
センチュリー21では決して扱ってはなりませぬ。
 

さて、綾辻行人の館シリーズはいくつも作品がありますが、その中でもかなり綾辻ファンの中で人気が高い(らしい)のが「時計館の殺人」です。
幻想的なイメージとぺダンチックな香りがプンプンして、アヤツジユキトっぽいわ。っていうか、今読み返すと、若い!古風な舞台設定をわざわざ創ってるところに若さが…(遠い目)褒めてないかな。褒めてないな。
 

未読の方にご説明しますと『時計館』というのは、中村青司という建築家が建築したお屋敷のひとつです。あ、もちろん中村青司自体がフィクションね。少なくともJIA日本建築家協会には所属してないわ。
この中村青司さん、普通の分譲住宅なんて作りません。作るのはヒトクセもフタクセもある、特殊な建築物のみ。理系のガウディ?もしくは趣味人?頑固親父の職人肌?
 

『時計館』も然り。敷地内には新館と旧館とがありますが、新館はともかくとして旧館はイッツア中村青司ワールド。窓もなく半地下で、外界からは全く遮断された作り。中では108個の古時計が時を刻み、だけどカリオストロ城みたいな搭のてっぺんの時計はいつも違う時刻を示す“気まぐれ時計”
その旧館で交霊術をやろうという雑誌の企画があり、9名の人物が館内で3日間を過ごすことになります。
霊を呼ぶために洞窟じみた建物内に閉じこもり、外界と連絡手段を全て絶ち、私物も殆ど持たず専用の黒衣で生活をし。
 

ん~、いかにも、死にそうでしょ?
誰か死にそうでしょ?ハリウッドでも横溝正史でも『オッケー、じゃあ、死んでみようか!』の舞台設定なのワクワク。
もちろん綾辻行人も期待を裏切らないわよワクワク。
 

さらに「時計館の殺人」という小説の中では、『時計館』の旧館での連続殺人だけでなく、もう1本のストーリーが進行していきます。
それが、ふとした事情により『時計館』の新館で同じ3日間を過ごすことになった、“館シリーズ”探偵役の島田潔。あ、このネーミングは占星術殺人事件のリスペクトね。
 

交霊術と、殺人と、身体の不調に苦しめられる、旧館の3日間。
旧館の騒ぎを知るよしもなく、のんびりと過ごす、新館の3日間。
 

旧館と新館の、交錯していたストーリーが、ひとつに収斂するときに、解明される、謎。
果たして『時計館』の真実とは。そもそも、『時計館』が創られた目的とは。

で、まあ、個人的な話をしますと。「時計館の殺人」の謎がなんだかんだは、実のところ、私にはどうだって良い話なんですよ。
それよりも何よりも、私は「時計館の殺人」の作者・綾辻行人さんにお礼を申し上げたいことがあるのです。
 

拝啓 綾辻行人さま

私 さくらは「時計館の殺人」を読んで、ふたつの教訓を得ました。
綾辻行人さんの教えは、いつも、私の心にあるのです。

ひとつは「疲れている時に作った料理は味が濃い」
もうひとつは「カップラーメンを2分30秒で作るとマズい」

「時計館の殺人」の謎を解明する上で非常に重要なポイントであるこのふたつ。
初読から四半世紀を経ても、忘れたことはありません。

カップラーメンを作る度に思い出す。
煮物の味付けをする度に思い出す。
私ほど「時計館の殺人」を実生活に役立てた読者は、ちょっと他にはいないだろうと自負しております。

ありがとう綾辻行人さま。貴方のおかげで私はほんのちょっとだけお料理上手になりました。
元々のレベルが低いとか、そういう事は、気には、しないで。

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