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アネット・チゾン, タラス・テイラー「おばけのバーバパパ」

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体のかたちを自在に変えられるバーバパパ。独特のぬくもりとユーモア感覚が、今なお新鮮な傑作ロングセラー絵本を大型化。すてきな町並みやバーバパパを大画面上で堪能できます。厚紙絵本。
(「MARC」データベースより)

バーバパパを知らない人はそうそう居ないと思いますが、バーバパパ=大家族のイメージの人も多いのではないでしょうか。
ですが、バーバパパ・ファミリーは、最初から登場してはおりません。
シリーズ第一作目「おばけのバーバパパ」は、バーバパパが生まれたての独身時代の話です。
 

まだパパじゃないのに、どうして“バーバパパ”なんでしょうね?

彼を『おばけ』と定義して良いのかどうかも悩み所です。
バーバパパは、フランソワくんが庭に水を撒いていたら、土中からニョキニョキ生えてきた新種の植物なんですよ。
いや、土中に卵を産み付けられた卵生の生物?母はいずこ?
 

そしてバーバパパ、世間に諸手を挙げて歓迎されて生まれてきた訳じゃありません。
生家のフランソワ宅でも、お父さんに『こんな大きいのはウチじゃ置いておけないよ』と、動物園に売り払われてしまいます。
檻の中で生活するバーバパパ。しかも檻のサイズがバーバパパとほど同じ。広州の水族館のシロクマよりも悲惨な生育環境は、いまだったらFacebookで署名活動が始まりそうな勢い。
 

しかしバーバパパは環境よりも、誰ともコミュニケーションできない孤独の方が辛い模様。
自由に形を変えられる特性を活かし(ほら、硬軟自在のスライムですから)檻から抜け出て他の動物と仲良くなろうと…したのに、動物園の園長から『おまえのようなやつはいらん!』と追い出されてしまいました。
 

行き場をなくしたバーバパパ。
仲間のいない孤独なホームレス。
寂しくてひとり泣いても、なぐさめてくれる人も居ない…。
 

そのとき、町に異変が。
あっちの家では大火事が!こっちの動物園では猛獣が脱走!
バーバパパ、町のピンチを救えるか?!

なーんてアオリを入れてはみるものの、その後の流れは大方の人が予想するとおりです。
バーバパパは大きなスライム状の体を活かして、町の人々を救います。
ありがとうパーバパパ!すごいやバーバパパ!
バーバパパは町のみんなの友達さ!

 

…変わり身、はえ~。
 

それまで邪険にしてきた町民達が、てのひらをかえすようにバーバパパに親切にする姿には、オトナの目からしたら掌返しの腹黒さを感じずにはいられません。
 

生家のフランソワ宅に戻れば家族揃って大歓迎、おとうさんはバーバパパ専用の住宅まで作ってくれています。
おいオヤジさんよ。その金と土地があったなら、こないだは何で出し惜しみしたんだよ。
役に立つから仲良くするとか、有名になったから親切にするとか、人間の小狡さがバーバパパの鼻につかないのでしょうか?
 

しかもフランソワのお父さんが作ったバーバパパのおうちは、動物園の檻のサイズよりもっと小さいの。身動きもとれず腕も入れられない極小住宅には、尚且つのお父さんの吝嗇ぶりが透けて見えます。
切なくないの?!バーバパパ!あなた良いように、人間に利用されているわよ?!
 

多分ですね。この絵本を子供たちに読み聞かせする際の教訓としては『姿かたちが違っていても、みんな仲良しになれるんだよ☆』とか言っておけば格好はつきますが。
ピュアな気持ちでこの本を楽しめないのは、私自身がピュアな気持ちを忘れているからなのか。この絵本は、自らのピュア度を量る試金石か。うーむ、自分自身が腹黒い…。

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