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連城三紀彦「飾り火」

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北陸本線で知り合った女は、夫に逃げられたまま新婚旅行中の花嫁だった…。
平凡な家庭と多忙な仕事に縛られていた藤家芳行は、誘惑に負けて女と一夜をともにする。
藤家の妻、美冴は夫の挙動に不審を抱くとともに、息子や娘の変貌にうろたえる。
静かに破壊されてゆく家庭の幸福。美冴は見えざる敵に怯え、その正体を必死に探るのだが―。
舞台・TVドラマともなった愛憎の巨編。
(「BOOK」データベースより)

「飾り火」はTVドラマを先に観て(ドラマは1990年のTBS「誘惑」)それから原作に手を出した作品です。

篠ひろ子が怖かった…。

TVドラマ「誘惑」についても語りだしたら止まらないぜ土曜の夜は天使さ(by横浜銀蝿)という気もしますが、とりあえず今は原作の「飾り火」。

新潮文庫の文庫本では「飾り火」は上下巻の2冊に分かれているのですが、この「上巻」と「下巻」で、主人公・美冴の印象がこれほど違う小説ってのも珍しい。

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歌舞伎では「ぶっかえり」という演出があります。

一瞬で衣装を早変わりすることにより、登場人物が本性をあらわしたり、性格ががらっと変わったりした状況を視覚的に表現するための演出とのこと。

「飾り火」でぶっかえっちゃうのが、主人公の美冴さん。

美冴は、小説の後半“ぶっかえって”それまでの良家の奥様然とした女性像から、夫の不倫相手を罠に陥れる“オンナ”に変貌するのです。

“ぶっかえり”以前でも、美冴は娘の家庭教師と不倫する“女”の側面は持っていましたが、それはあくまでも、良家の奥様の「美徳のよろめき」の範疇を超えてはいません。

だけどそれが友人(と思っていた)の妙子の企み(と思っている)によるもので、自分が妙子の掌で転がされていた(と思っている)と知った(と考えた)時の、美冴“オンナ”への変貌!※この文カッコがしつこいのは終盤でさらなるドンデン返しがあるからです。実は、真のエネミーは妙子じゃない。

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小説の後半、“ぶっかえった”美冴はどんどん綺麗になります。

はじめから着物の似合う風情の上品な美しさはありましたが、やっぱり女は攻撃的になると美しくなるなあ。

前半の、妙子の怪しげな美しさが後半になるとくすんで見えるのは、“ぶっかえり”後の美冴がギラギラと輝いてくるからでしょう。

いや、女って怖いわ。主犯(?)の夫が、なんのかんの言っても添え物扱いだもんね。

と、この本を読むと加賀友禅の着物が欲しくなる私でありました。

誰か買ってください。ギラギラとオンナの欲望が渦巻くわ。

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