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貴志祐介「悪の教典」

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晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。しかし彼は、邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。学校という性善説に基づくシステムに、サイコパスが紛れこんだとき―。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。
(「BOOK」データベースより)

全く脈絡がないような気もしますが。
「人生がときめく片付けの魔法」が読みたい私です。

だって「悪の教典」のTHE・サイコパス大魔王ハスミンが、片付け上手だから…。
 

蓮実聖司、愛称ハスミン。
イケメンかつ頭脳明晰、MBA取得でビジネス・マネジメント能力にも長け、英語教育のみならず生徒指導にも定評あり、人当たりの良さから生徒や他の教諭、その他周囲からも絶大な信頼あり。
格闘技やブレイクダンスも出来ちゃうマルチプレイヤーです。
 

そしてもちろん、お片付けも上手。
幼稚園のいじめっこからはじまり、学校教師、両親、赤点つけた教授、その他もろもろ、邪魔な存在はさっさと片付ける抜群の処理能力。Core i7くらい乗ってます。
現職の高校教師になってからも、セクハラ教師、モンスターペアレント、不良ヤンキー、ヒステリババァなどの邪魔な存在を、場合に応じて事故偽装・脅迫・殺害でバッサバサお片付け。
終いには担任クラスの生徒40名を、目指せレッツ皆殺し☆
 

うーん、と・き・め・く・わぁ~。

ハスミンの「ときめくクラスの人生お片付け」は、出席簿と男女別々の加減算カウンターを持って行われます。あ、猟銃も一緒にね。
男子生徒あるいは女子生徒を殺害する毎に、カウンターの数字がひとつひとつ減数されていく様は、汚部屋をお片付けしていく気持ち良さと同類。
主婦の皆様だったらお分かりよね?大量の洗濯物をたたんで種別毎に分類して積み上げていく気持ち良さ。あれが「悪の経典」では、積み上がるのが死体というだけですわよ。

蓮見は、首に下げていたポケットカウンターを見た。男子18、女子17となっている。
蓼沼は数に入っていなかったので、マイナスのボタンを押して男子から4を引こうとしたが、思い直して、まず男子に1をプラスしてから、あらためて5をマイナスした。
元担任としては、蓼沼将大も、せめて他の生徒と一緒に『卒業』させてやりたいと思ったためだった。

退学後の元生徒も分け隔てなく卒業させてあげる金八魂に、と・き・め・く・わぁ~。
 

加減算カウンターの数字が小さくなるにつれ、読者の心はもうハスミンと一緒。
マラソンランナーを応援する気持ちで、クラス全員殺害コンプリートを目標とします。
途中でハスミンが『これほどエネルギーを消費するなら、バナナか何か持ってくれば良かった』と反省するあたりでは、階段の踊り場あたりに給水スポットと軽食用意のテーブルでも設置したい気分になります。
だってねえ、広い校内の1階から4階まで大車輪。猟銃2丁抱えて走り回ったら、大仕事ですものねえ。
 

「悪の経典」に“お片付け感”を感じる所以は、ハスミンの殺戮が快楽殺人を元としていないところにあるでしょうか。
別に蓮見先生、殺人自体を好きでしている訳じゃないのよ?
彼は別に普通に教師生活して、クラスの美少女とイチャイチャできればそれで良しくらいの小さな幸せで満足していたのに、集団カンニングをしようと目論んだ生徒が茶々入れたせいで男子生徒を殺す羽目になり、男子生徒の携帯を持っていたのをクラスの女子生徒に見つかったせいで女子生徒を殺す羽目になり、その女子生徒と一緒にいる所を目撃されたせいでクラス全員を殺す羽目になり。
ハスミンのちょっとした詰めの甘さが、彼に無駄な労力を強いることにはなりましたが、ピンチはチャンス!ミステイクはリカバリー!の精神で、障害をクリアせんとするハスミンの努力を私は評価したい。クリアの方法が皆殺しってことは、まあ、評価対象外だ。
 

で、ネタバレですいませんが結末を申しますと、ハスミンちょっとだけ失敗しちゃいました。
男子1名、女子1名だけ、生き残っちゃいました。
ハスミンも無念だろうが読者も無念だ。
 

でも、ハスミンにはまだチャンスはある。そのチャンスは小説の最後でも予感されている。
読者の私たちにも、コンプリート達成のカタルシスを味わう未来は残されている。
 

ファイトだハスミン。目指せ皆殺しコンプリート。
最後までお片付けして、私たちをと・き・め・か・せ・て。

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