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谷崎潤一郎「痴人の愛」

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生真面目なサラリーマンの河合譲治は、カフェで見初めた美少女ナオミを自分好みの女性に育て上げ妻にする。成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの回りにはいつしか男友達が群がり、やがて譲治も魅惑的なナオミの肉体に翻弄され、身を滅ぼしていく。大正末期の性的に解放された風潮を背景に描く傑作。
(「BOOK」データベースより)

「文豪ストレイドッグス」というアニメをご存知でしょうか?

太宰治、芥川龍之介といった近代の文豪がキャラクター化され、それぞれの代表作の名前を冠した異能力を用いて戦う探偵ものアクションアニメ、だそうです。

娘がたまに観ております。出てくる文豪がいずれもイケメンってところが、中学生女子の心をきゅんきゅんさせる所以でありましょうか。実物のポートレイトとか見せちゃいけないね。

このアニメに出てくる登場人物(文豪)の“異能力”の名前が面白い。

例えば太宰治は『人間失格』、梶井基次郎は『檸檬爆弾』(爆弾は余計か)

与謝野晶子は『君死にたもうことなかれ』とかね。死なないんじゃ攻撃にならないじゃんw

個人的には森鴎外の『ヰタ・セクスアリス』がどんな能力なのか見てみたいw

さて。それで谷崎潤一郎の能力名は何なのかというと。

「うーんと、ほそゆき?」

娘よ、それ、ささめゆき。

まあ細雪(ささめゆき)は知らなければ読めなくても仕方がないって気も(親馬鹿なんで)しますが、谷崎が『細雪』~?!

なに谷崎ってばそんなシレーッとお上品な能力名つけてるの~?!

谷崎と言えば「痴人の愛」だろう、「痴人の愛」!

「痴人の愛」のあらすじをご承知の向きも多いかとは存じますが、凡庸な電気技師の譲治が、カフェの女給ナオミの色香にほだされボロボロになる、という話です。

ざっくりまとめちゃえばこんな感じで。ナボコフのロリータ日本版みたいな感じで。

「僕の可愛いナオミちゃん、僕はお前を愛しているばかりじゃない。ほんとうを云えばお前を崇拝しているのだよ。お前は僕の宝物だ、僕が自分で見つけ出して研きをかけたダイヤモンドだ。だからお前を美しい女にするためなら、どんなものでも買ってやるよ。僕の月給をみんなお前に上げてもいいが」

き、きもちわりーな。

しかし譲治の献身と愛情むなしく、ナオミはだらしなく知性のかけらもないまま身体だけが成長し、浮気性の女として放蕩を繰り返します。

幻滅し、怒り、二人で暮らしていた家からナオミを追い出したりはしてみるものの、譲治はナオミの魔性の魅力から逃れることはできない。

やがて譲治はナオミに屈服し、仕事も辞め財産も手放して、ナオミの肉体の奴隷として生きていく道を選ぶ。

まあ、小説ならば、これはこれで良し。

マゾヒスティックな嗜好性のある男の願望充足ストーリーだと思えば、まあ、好きな道を行けば良いさ。

しかしーだ。

これ、谷崎潤一郎本人は、「これは私小説である」と言っているんですね。

ナオミにもモデルがいます。それが、谷崎潤一郎の正妻、の妹。

「細君譲渡事件」と呼ばれる事件で、谷崎は、正妻を自分の友人に譲渡し(!)その妹を暴力的な方法で我が物にし(!)わずか15歳の妹を囲い(!)なおかつ、そんな方法で手に入れた妹を“ナオミ”として、放埓で下品でだらしない女として一冊の小説にしているのです。

怒れ!

妹よ、怒れよ!ついでに妻も!

願望充足をフィクションだけにとどめておけば良いものを、実施までしちゃって、なおかつ勝手に小説にまで仕立てておいて、そいでもって相手をこう書きますかぁ~?!

あー腹立つわ。なにこんな奴を文豪扱いしてんのよ今のニッポン。教科書に載せちゃったりしたら教育に悪いよホント。

・・・という話を、娘にしたところです。

娘曰く「何やってんの谷崎」

ほんとにねえ。中学生に言われてるよ谷崎。マジ何やってんの谷崎。

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